第六話 俺、猫と共に歩む
一人と一匹はゲームショップに向かって歩いていた。
「にゃーにゃにゃにゃーん」
一匹—―猫は一人—―カリの頭の上に乗ってご機嫌の様だった。
カリの頭は現在、床屋に行って無い為に鳥の巣の様な状態になっていた。
それが猫にとっては気持ちが良かったのだろう。
「ふーふふふん」
カリも猫が……モフモフ感いっぱいの猫が頭の上に乗っていて気持ち良さそうだった。
カリが道を歩いていると一人のお婆さんが打ち水をしていた。
「あら、カリ君。今日は朝が早いのねぇ。あらら、頭の上に居るのは猫ちゃんじゃないの‼可愛いわねぇ」
カリはコクッと頷いた。
「御老体。朝には気を付けなされよ。先ほどゴミ捨て場で寝る学生を見た。この頃の世の中の情勢が乱れつつある」
「へぇ、じゃぁ隣の川渕さんにも伝えておかないと」
カリはお婆さんに一瞥すると、また歩き出した。
するとお婆さんがカリを呼び止めた。
「お待ちなさい。カリ君、これ頭の上の猫ちゃんに」
お婆さんがカリに煮干しをくれた。
「気を付けて行ってくるだよ」
「うむ。御配慮に感謝する。御老体も体には気を付けなされ」
カリは頭の上の猫に煮干しを受け渡した。
「にゅ?にゃっにゃぁー」
猫は煮干しをすぐさま齧りだした。
大好物だったのかもしれないな。
「では、これにて」
カリはまた歩き出した。
猫は煮干しをポロポロ溢しながら喰らい付いていた。
ゲームショップまでもう少しの道のり。
「猫よ。美味しいのか?それ」
カリが猫に問うと猫は喰うてみよと言わんばかりに煮干しを差し出して来た。
カリはその煮干しを見回し、服の裾で少し拭うと口に放り込んだ。
パリパリとした噛み応えのある触感と味わい深い和の心地よさ、それから口の中に広がる懐かしい故郷の味……その味は一言で例えると、そこでカリは口に出した。
「うむ。珍味だな」
「にゃー」
気が向いたらまた投稿します。