きまぐれ覇王5話
宿屋をでるともう朝日が昇っていた。
「かぐやん、まずは街の中央の市場にいかへん?活気があって人の気配も多いから美味しい物が色々あるかもしれへんで?」
「カムイは食い物ばっかだな」
「だって育ち盛りの獣やもんってそういや、かぐやんはこの国の通貨とかしらへんよな?1Gから100万Gまでの硬貨があるんや、銅、鉄、銀、金、白金、ミスリルの6種類の素材で作られててな、一般的に使われてるのは金貨までやな、買い物に必要やからちゃんと作っといてな」
「今作った、アイテムボックスの中に入れておいたから支払いはカムイがやれ」
「子犬に支払いさせんのかい、まぁいつものこっちゃけどな~」
てくてくと歩き続けていると様々な屋台が立ち並ぶ結構な大きさの広場に出た、中央には井戸があり多くの者達が水を汲んでいる。
カグヤの姿に目を奪われる者たちは多い、派手な衣装の上に頭には犬がへばりついているのだ。
「かぐやん、目立ってるな~服装変えたら?」
「俺は俺の好きな物を着る、文句があるなら塵も残さず完全消滅してやるぞ?」
「かぐやん、無茶苦茶可愛く見えんで~、さすがやな!服装のセンスが常人とは違うわ~!」
生命の危機に敏感な子犬であった。
「そこの綺麗なお嬢さん、美味しくて新鮮な果物はいかがですか?」
何故かシスター姿で屋台をしてる女性が声をかけてきた。
「ふむ?りんごか、少し喉が渇いたし貰おうか」
「なあなあお姉さん、なんでシスターが屋台で働いてるんや?」
頭の上のカムイが器用に支払いをしながら尋ねる。
「言葉を・・・もしかして子犬さんは神獣さんですか?あの・・・もし良ければお話を・・・お力をお貸し願えないでしょうか?」
「えらく突然だな、何かあるのか?」
「はい、実は孤児院を経営しているのですが子供たちが森に果物を取りに行った際、骨を折る重傷を負ってしまいまして、今は薬草でなんとか熱や痛みを和らげてる状態なのですが・・・お医者様に見ていただきたいのですが治療費が無く、困っています、神獣様には治癒の力があると聞きました、どうか見ていただけないでしょうか?」
「なんでやのん?この国は結構善政をしてて孤児院とかにも助成金だしてるってきいてるで?」
「国から援助のお金は出していただけているみたいなのですが・・・領主様の所で計算に時間がかかるという事で未だ孤児院には届いていないのです・・・」
「弱者への施しを奪う典型的な悪徳貴族だな、どこにでもいるクズってやつだ」
「かぐやん、ムカつくで!ぶっ飛ばしにいこうや!!」
「気がむかんからパスだ、それよりクソガキの治療にいくならさっさと行け、俺はもう少しこの辺りを散策する」
「・・・・いつも通りのかぐやんやなぁ・・・姉ちゃん、はよ子供の所にいくで!すぐに治したるさかい」
そういってシスターの肩に飛び乗る。
「神獣様!ありがとうございます。それでは案内させていただきます。」
シスターは隣の屋台の人に自分の屋台の事を頼み、シスターとカムイは孤児院へと向かった。
「なぁオッサン、ここの領主ってのはそんなにひでえのか?」
「ああ、大きな声じゃ言えねえが領主もその嫁も子も最悪だ!その癖、悪知恵と悪事を隠すことだけは上手いんだ!どうにかならねえもんかと街の連中は皆、思ってるよ」
「ふん、そんな奴に領主をまかせるって事はこの国の上は馬鹿が多いって事か」
カムイとシスターは街の隅の協会に着いた。
「ここか~・・・えらいボロボロやな、これ地震でも来たら一発アウトなんちゃうん?」
「なんとか自分達で出来る限りの補修をしているのですが中々上手くいかなくて・・・それより子供をお願いします」
「まかせとき!かぐやん程やないけど、わいもそれなりに治癒は出来るで」
子供部屋には布に包まって苦しそうにしてる少年とそれを心配そうに案じている十数人の子供たちがいた。
「心配なんは解るけど皆ちょっとどいてんか、今治すさかい、シスターはこの子の服脱がしてくれや」
「子犬がしゃべった?シスター何これ?」
「後でね、今はジョンを治してもらうのが先よ、ジョン、痛むかもしれないけど我慢して服を脱がすわよ」
怪我をした少年、ジョンは右腕と左足が折れていて服を脱ぐだけでも激痛に苦しんだ。
「これなら治せる、いくで」
ぺろぺろぺろぺろと折れてる場所をカムイが舐めまくると痛みが消え、骨折してた部分は正常な状態に戻った。
「これでもう大丈夫やろ、体力の消耗までは治せんけど怪我は治ったから時間がたてば回復するはずや」
「本当にありがとうございました」「ジョンを助けてくれてありがと~」「しっぽ引っ張っていい?」
口々にお礼?を言われてカムイはとても気分が良くなった。
この協会兼孤児院は近所の者がおしゃべりをするのにちょうど良い場所として使われていた、熱心にお祈りをする信者は極稀だ。
その場に怪我が治ったジョンや子供達、シスターとカムイが現れて心配してくれた皆に感謝の言葉を述べた。
「ジョンの事心配してくださってありがとうございます、この神獣様のお力でジョンを治していただけました。」
「お~ジョン、治ったのか、良かったな」「神獣って本当に実在したんだ!?始めてみたよ」「肩こりが酷いんだ私も治してもらえないかい?」「ちょっと風邪引いたみたいなんだけど助けてくれない?」
「あ~、わいが出来るのは怪我の治療だけや、病気や疲労回復は無理、それに舐める必要があるで、獣に体中舐められるなんて嫌やろ?」
わいわいがやがやと盛り上がってる最中、片隅で日中から酒を飲んでる顔を赤らめた男が呟いた。
「神獣か・・・・・」




