きまぐれ覇王4話
パチッ!
まだ日が昇る前の、午前4時にカグヤの目が覚めた。
「うむ、目が覚めたものは仕方が無い、なにをしようか?」
・・・思案中・・・・
そういえば煩い奴の事を忘れてたな、泣き喚く前に呼んでおくか・・・
両方の掌を揃えて呟く。
「神威」
一瞬部屋が輝いた後には掌に白銀の子犬が乗っていた。
「かぐやん!遅すぎんで!街にはとっくについてたはずやろ!わいの事、完全に忘れてたやろ!」
確かに街に着いたら呼んでやると言ったのを完璧に忘れていた、だがしかし
「黙れ、シバクゾ」
「冗談やがな~、かぐやんがわいの事忘れるわけないやん?わいたちマブダチやん?」
完全な逆切れだがカムイは賢いので生き残る答えの正解を出した。
「って周りえらい暗いな、まだ夜ちゃうん?」
「外がどうだろうが関係ない、俺は好きな時に動くんだよ、とりあえず飯でも食うか」
「かぐやん!わい、わいな!ナクドマルドのハンバーガーセットが食べたい!お願い!」
カムイはカグヤが好きな物を出せるのを知ってるので全力でお願いする。
「・・・・・黒猫のオッサン料理人にハンバーガー食わせてみるのも良いかも知れんな」
階段を降り、ずかずかと誰も居ない調理場に侵入する。
「ふん、一応料理人というだけはあるか、衛生には気を使ってるみたいだな」
掃除が行き届いた清潔感のある調理場に満足しているカグヤである。
「創造」
調理場のど真ん中、大きなテーブルにカグヤがイメージしたハンバーガーセットを100個出現させた。
柔らかいパンにビーフ100%パテ、レタスにチーズの組み合わせのオーソドックスなハンバーガーに塩が効いてるフライドポテト、ジューシーなチキンナゲットに心が暖かくなるようなコーンポタージュ、そして香りが最高のホットコーヒーだ。
ちなみにカグヤの出した料理は不思議な能力が付加されている為出来立て状態から劣化する事はない。
「やっふ~!かぐやん!食べて良い?食べて良い?」
カムイのしっぽが凄い勢いで左右に振れている。
「好きにしろ」
カムイは許可が下りた瞬間、念力で器用に料理を口に運び始めた、凄まじい勢いで。
「うまうまうまうま!かぐやんと一緒に居たらこれがあるから離れられへん」
瞬く間に10セットがカムイの腹に収まった、食べ終わったと思ったらゴロンと転がり幸せそうな顔してダレている。
しばらくすると調理場に黒猫のオッサン料理人が現れた。
「なんだこれは?それにその子犬は一体?」
「あ、ここの旦那はんでっか?わいはカムイ!かぐやんの相棒や、宜しゅう頼んます」
「ペットだ」
カグヤのツッコミが入る。
「ああ・・・えっと俺はここの主人兼料理人のレンドだ、よろしく頼む」
律儀に挨拶を返す黒猫のオッサン料理人のレンド、そういや名前聞いてなかったなと思うカグヤであった。
「ところでこれは一体?もちろん、あんたなら調理場を好きに使ってくれて構わないんだが・・・良い匂いがするな」
「ああ、こいつがハンバーガーが食いたいと煩いんでな、ついでにお前らの分も出しておいた、出した分は全部好きに使え」
「ハンバーガー?聞かない料理だな、ここらは米料理が主食でパン料理はあまり流行ってないからな」
「説明するのはめんどくせえ、食って理解しろ」
「・・・これは美味いな!うちでもパン料理をメニューに入れたくなるぞ、揚げた芋は細く切って塩を振っただけでこれほど美味くなるとは・・・料理はやはり奥が深いな」
「旦那はん、こっちのチキンナゲットとコーンポタージュも試して~な」
「これは鶏肉か、食いやすくて美味い、このスープも最高だ!」
どうやらハンバーガーセットはレンに良い刺激を与えたようだ、そのうち美味いパン料理が出てくるかもしれない。
「おはよ~、なんか手伝う事あるかい?」
女将さんが調理場に現れた、どうやら朝食の手伝いに来たようだ。
「いや、今日はカグヤの嬢ちゃんが用意してくれた、凄く美味い、ちょっと自信無くしそうだ」
「レンドの作る魚料理は大した物だ、俺が認めてやる」
「ありがとう、しかしこの料理の味を知るとお世辞をいわれてるような気もしてくる」
「旦那はん、かぐやんは絶対にお世辞なんぞ言わへんで!かぐやんの為に心を込めて作った最高とも言える料理を苦手な野菜が入ってたと言うだけで死ぬほど不味い!と投げ捨てるような外道やで!」
「死ぬか?」
「いつも優しいかぐやん、最高~!」
置いてきぼりな女将さんが呆然としている。
「えっとそんなに美味しいのかい?それとその子犬ちゃんは?」
「あ、女将はんでっか?わいはカムイ、かぐやんの親友や!宜しゅう頼んます」
「ペットだ」
再びカグヤのツッコミが入る。
「面白いワンちゃんだね~、あたしゃシーラってんだ、よろしくしとくれ」
「まぁまずはかぐやんが出した料理の味見どうでっか?気に入ると思いまっせ」
「・・こりゃ美味いね~、レンドが自信無くすのもわかる気がするわ」
「ふん、じゃあ毎日食べるとすればどちらがいい?」
「・・・それはやっぱりレンドの料理だねぇ」
「だろう、今のレンドは新しい料理の味に驚いているだけだ、レンドの料理は負けちゃいねえよ」
「そういってもらえると自信がつくな、シーラもありがとう」
「あんた・・・」
「夫婦仲は良好のようでんな」
「みてられん、飯も食ったし少し出かけるか、カムイ行くぞ」
「あいよ~、ライドオーン!」
カグヤの頭に張り付く子犬、一見帽子を被ってる様に見えなくも無い。
扉を開けて外に出ると気持ちの良い朝の空気が体を包んだ。
「ふむ?気分が良いな、いまなら誰かの願い事を叶えてやってもいいかもしれん」
「え!?マジで?う~んう~ん、それじゃ可愛い女の子をd」
「嘘だ」
「うそ~ん」
気の向くまま歩いていく、カグヤがカムイとの会話を楽しんでいるのは秘密である。
その後、宿屋{またたびの木}ではカグヤを優しく起こして一緒に朝食を食べて仲良くなろうとしてたエスカがカグヤが出かけたのを知って落ち込んでいた。
「カグヤさ~ん、私ペットじゃなかったんですか?忘れてませんか~?」
当然忘れていた。




