きまぐれ覇王2話
自分達が周りに恐怖を抱かせる悪党なのは自覚している、しかしこの目の前の少女はまったく怯えず、邪魔すれば殺すとなんの気負いもなく平然と言い放った。
「・・・・・・おいおいおい、怖ぇ事いうもんじゃねえよ、大人しく言う事聞いてりゃ優しk」
パン!と空気を一杯に詰め込んだ袋が破れたような音が響いた後、少女に話しかけてた男が唐突に倒れた、少女の両手にはいつの間にか鉄っぽい何かが一つずつ握られており、その一つの先っぽからは煙が一筋立ち上っていた。
「てめえ!」「なにしやがった!?」「ざけんな!」
数人の男が非常事態を感じ少女を押さえつけようと行動したが、パンパンパン!
ドサドサドサと仲良く額の中央に穴を開けて倒れていった。
ヤバイ!この状況を悪党の頭であるスキンヘッドは思った、何が恐ろしいかというと未知の武器も恐ろしいが・・・仲間を殺す時の容赦のなさが人とは思えない、まるで血を吸いにきた蚊を叩き潰すような、ただ邪魔だから殺すという害虫に対する行動の様に感じたのだ。
「すいませんでした!もう邪魔しません!勘弁してください!!」
真っ青になりながら頭を地面に打ちつけるように土下座!
このスキンヘッド、頭の回転は中々悪くは無かった、すぐに助かる為の行動をとる。
残った者達も死の恐怖を感じたのか、次々と土下座で命乞いをしはじめた。
「邪魔しなきゃ殺しはしねえよ」
なんとか助かったかと思って土下座しながら少女の顔を見上げてみた、見なければ良かったと後悔した。
彼女は初めて感情を見せた、堪えきれないような笑いをなんとか抑えてる感じだ。
「なんだ?もしかして喧嘩を売っても降参したら無傷で見逃してもらえるとほんの僅かでも考えていたのか?」
パパパパパパパパパパパパパパン!!
「がぁぁぁぁ!」「ぎゃああああ!」
土下座していた全員の手足から血が噴出した。
血の匂いの漂う壮絶な地を立ち去る際にスキンヘッドの頭を踏みにじりながら笑った。
「少し愉快だったぞ、褒めてやる」
そう言い残して去っていった。
治療を終えた後の悪党共から取調べを行った後、悪党共は旅人を襲った罪で牢屋送りになった。
「しかしとんでもないのがこの街に来たみたいだな、隊長どうします?」
発見者の黒髪が取調べを始め偶々、暇を持て余していた隊長が同席していた。
「まず現状ではその少女に罪は無い、自分の身を守る為の正当防衛だからな。・・・だがもしその少女が貴族相手でも同じ行動をするとなると非常に不味いな。」
どこの街にでもいるものだ、平民相手だと全て自分の思い通りにならないと気がすまない偉そうな貴族というのは。
「とりあえず出来る事といえば、見回り連中に黒い服に雷模様の目立つ少女がいたら事情を聞くという名目で兵舎に呼ぶように言っておくしかないな。」
少女、輝夜は商人ギルドに行こうと歩いていたのだがその途中にあった、宿屋を兼ねた酒場{マタタビの木}からの食欲のそそる良い匂いに惹かれて食事を取る為に入店した。
「いらっしゃ~い。」
明るい声で女将さんが歓迎してくれた、カグヤは気になった事を聞いてみた。
「店名がマタタビの木というのは猫の獣人であるあんたが関係しているのか?」
「そうだよ、私もだけど一緒にこの宿やってる料理人の旦那も猫獣人でマタタビが好きだからそうしたんだ、悪くないだろ?」
「確かに悪くないな、気に入った、この街に来たばかりでまだ住む場所がないんだ、定住しようと思ってるから家を買うつもりなんだがそれまでの間、部屋が空いてるなら頼みたい。」
「そりゃ嬉しいね~、この宿の自慢は旦那の料理と防音さ、期待してくれていいよ。」
「ああ、その料理の匂いに惹かれてきた、期待してる」
「旦那は料理大会で賞を取ったこともあるんだ、うちの自慢なんだよ。」
「ところで代金の方なんだがこれでいいか?」
ドン!と金の延べ棒を受付台の上に置いた。
「は!?・・・・・・・・・・・・・うわ、本物だよこれ・・・・」
虫眼鏡みたいなのを取り出したかと思うとそれで金の延べ棒を覗き、呆然と呟いた、どうやら鑑定スキルが付いたマジックアイテムらしい。
「これで何日いける?足らなければ追加するが?」
「いやいやいやいや、これ一本で何日でもっていうか、高価すぎて受け取れない、宿の代金で支払うような代物じゃないよこれは!?」
少しパニック状態になっているみたいだ、相場がわからないので適当に換金できそうな品物を作って出しただけなのだが少し失敗したようだ。
「どうかしたのか?」
奥から黒い猫の獣人が現れた、ちなみに女将さんは白い猫の獣人だ。
「ああ、あんた金払いの良い上客が来たんだけど、凄すぎてどうしたらいいのかわからないのよ。」
「よくわからんが代金を払ってくれると言うなら貰っておけ、その分食事のグレードを上げてやる」
「いや、その程度でどうにかなるレベルじゃ~」
話し込み始めた2人を見て気づいた。
「おい、黒猫のオッサン、あんた左腕どうかしたのか?」
「・・・なんでわかるんだ?・・・昔、酔っ払った貴族をぶっ飛ばしたら左腕を切り飛ばされたんだよ、治療院でなんとか繋げたが以前ほど動かなくなったな」
「賞を取った事のある料理人という事で死罪だけは免れたんだよ、命だけでも助かって本当に良かったよ。」
「・・・・・・ふん、きまぐれだ、腕を出せ」
「???・・・・こうか?」
「完全復元」
黒猫の腕をつかんでそう呟いた。
「オッサン、恩を感じるなら俺をこの宿に泊まらせるように嫁さん説得して俺に美味い飯を食わせろ」
「???・・おおお!?指が曲がる!?自由に動く、これは治ったのか?いや治してくれたのか!」
「嘘!?治療院でも絶対に治せないって言われてたのになんで!?」
「めんどくせえ説明はパスだ、泊めてくれるのか駄目なのかどっちだ?」
「・・・いくらでも泊ってくれ、食事も出来るだけの物を出そう、そして代金はいらん、ここだけはゆずれん!」
「・・・まあ泊めてくれるなら文句はねえよ」
「ありがとう、本当にありがとう!これなら技術を使う料理大会にまた参加できるよ!あんた、また料理大会優勝狙って頑張ろうよ!」
「まあ感動するなり抱き合うなりは後にして、先に部屋の鍵をくれ、それから飯ができたら部屋まで持ってきてくれ」
「はいよ!うちで一番おすすめの部屋だ、美味しい料理を運ぶから待ってておくれ。」
鍵を受け取って部屋に入る、それほど大きいとは思わないが香木の良い香りのする良質の部屋だ。
これなら家を手に入れるまで居てもいいなと思えた。
それから少しして焼き魚定食、甘辛い食が進む料理が届いた、ここらに海は無いが現地で食べる魚料理より美味いかもしれない上等な味だった。
さて時間はすぎ、もうすぐ夜か、酒場はどんな感じなのだろうか?
興味が湧いたので酒とつまみでも食いにいくかと階段を下りていった。
夜の酒場、何か面白い事が起こるかもしれない、楽しみだ。




