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ユウキの逃避行 

「っ‥‥ここは?」

 額を抑え、体の痛みに呻く。

 優騎は周りを見渡す。

 そこは王城に設けられた自分の部屋だ。

「試合は‥‥」

 先刻の光景が頭をよぎった。

 あの王女に口八丁で乗せられ、試合に臨んだ。

 結果的に身の程を知らされる戦いだった。

 あの奇妙な力がまた出ればとか考えはやはり甘い考えでしかなかったと言える。

「くそっ‥‥」

 ここで眠ってるというと負けたに違いはない。

 なら、早急にここを立ち去らねばならない。

「どこへ行く? 路頭に迷うしかないか‥‥」

 天井を仰ぎ見た。

 昔懐かしいあの日常が思い起こされた。

 ロクでもなかった人生にロクでもない退屈な日常。

 今の状態はそんな日常から随分かけ離れたものだろう。

 良いか悪いかで言えば退屈な日常を演じるよりは良い環境と言えた。

 しかし、優騎はそれでも今だけはあの日常に戻りたいと考える。

「単なるまぐれか‥‥最強のちからかなんかあるのかとか‥‥夢見すぎたな‥‥」

 ベットから抜け出て机の上に便箋を見つける。

「なんだ?」

 便箋の宛名名義は「キジョウユウキ」。

「俺あて? あ、そういうことね」

 中身は読まないでもわかりきったことだった。

 ここから立ち去れとのことの通達であろう。

 ならば、早々に荷物をまとめるとしようと決意をする。

 衣服はさきほどと変わらない布地の衣服の上にプロテクトアーマースーツ姿だ。

「出て行ってどうすっかな」

 悩みながらユウキは部屋を出ていった。


 *****


 王城を出ることは容易かった。

 王城に入った際のルートは記憶していたのでその道を使えば外へ出ることは用意。

 門番に当初はなにか言われるかと思えば――

「警備ですね。ご苦労様です」

 と言葉を投げかけられたのみ。

 疑問が湧いたが気にせず街を見て回り続けていた。

 作物のお店や、食べ物の店、鍛冶屋、本屋などなど。

 数々の店が軒を連ねまるで、ゲーム世界そのもの。

『NIGHTOFSEVENS』を想起させた。

「まじ、あのゲーム通りなら俺は最強なんだけどな。この装備じゃあ最強と行かねえし文無しだし」

 ドッと疲れと同時にため息が漏れた。

「そういえば、聖騎士がいるってことは外は危険地帯ってことになるのか」

 そう考え、ユウキは町中にある一つの武器屋に目が止まる。

 なかには一人ガタイが大きく無精ひげを生やした険悪な40すぎくらいだろうかの男の店員がいた。

 頭にかぶったバンダナが目深かになって目を鋭くさせることで寡黙さをあらわさせている。

「いらっしゃい」

 店員の男は優騎の姿を見て鼻で笑いながら顎に手を月じっと観察する。

 視線を気にせず店内に数々ある武器を眺めていく。

 壁から棚にまで武器ずくし。

 剣、銃、弓、刀、槍、手甲などとマニアックな武器まで取り揃えてあった。

 痛みのひどい武器もなかにはあって棚のラベルに使用済み武器と書いてある。

 中古の品ということはわかる。

「ん?」

 一つの武器に目が行く。

 店員のカウンター脇に置いてあったゴミ箱の中に乱雑に置かれた錆び付いた古い二つの剣。

 鞘から少し刀身を覗かせてみたが別に使い勝手は悪くなさそうだ。

「店主、これ無料って書いてあるけどもらっていいのか?」

「ああん、そうだ。それ見てわかんねえのか。そんなどこともしれねえ剣つかえたもんじゃねえしもって来た奴も使えねえとか抜かしやがってウチに無理やり買い取らせやがったんだ」

「へぇー。でも試しに使った奴はいただろう?」

「はあ? こんな武器ひと目で使えねえってわかんだろう。錆び付いて刀身もすぐ折れちまう。誰も使おうとか買おうなんか思っちゃわねえぞ」

 優騎はみょうにその剣に惹かれた。

 無料ということもそうだが剣に力を感じ取った。

「これもらっていくぞ」

「あん? 別にかまわねえがそんな剣でいいのかよ」

「文無しなんで無料がいいわ」

「文無しだァ? この世の中職業に就いてない人間は街にこねえぞ」

「いや、事実だけど‥‥そうだ、店長なんか簡単に大金稼ぐいい方法あるか?」

 日常でも普段にそんな方法はありはしなかった。

 どんなことでも大金を稼ぐには苦労をする。

「そんなもんあるわきゃねえだろ。バカいってねえその武器でいいならでさっさと出て行きな」

 優騎は愛想の悪いど店主に毒づきながら店を出てしばし呆然と突っ立つ。

 とりあえず腰にもともと付いていたホルスターに鞘を通し装着。

「さてと、金を稼ぐ方法を探すっかな」

 まずは金が要るのは確かだった。

 食べ物を買うにも居住を構えるにしてもだ。

「あ、待て客人」

 店の前で立ち止まっていたら武器屋の出入口扉が開きさっきの店主が顔を出した。

「ここからすこし歩いたところに金と引き換えに依頼を出してる集会所がある。

 まあ、傭兵連中がやる仕事だが腕に自信があるならそこへ行くといいさ。安易に大金は手に入る」

 傭兵という言葉に王女を助けた時の光景が記憶から掘り起こされた。

 あの時は倒せた傭兵。そういった連中が引き受ける仕事の場。

 悪の巣窟だろう場所が想像つく。

 でも、金が手に入るのならば――

(でも、腕に自信はねえな)

 それ以外に方法は見当たらない。

「わかったいってみるよ。サンキュー」

「さんきゅ?」

 武器屋の店主に礼を言いながら集会所へ向かった。


3部作予定。

次の話は――ユウキの逃避行 中編



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