王城内の人々
『聖騎士』になることを命令され、しぶしぶ就任した優騎はアリシアに王城内にある与えられた自分の部屋へ案内を受けていた。
部屋の内装はおんぼろベットとクローゼットに机や本棚が壁に設置されてある。
洋間風内装。
「ここがおまえの部屋です! くれぐれも無粋な真似をするな。明日明朝7時お前の紹介を他の『聖騎士』に行うから寝坊をするなよ」
「へいへい」
「くっ、なぜこのような奴を姫様は‥‥」
そう言いながら怒りをにじませながらずかずかとその場から去っていく。
廊下をすれ違った一人のメイドは仰天しながら逃げるようにこちらへ向かってくる。
「あのー、今日から『聖騎士』に就任なされたユウキ様ですか?」
「ん? ああ」
かわいらしい蒼い瞳と金色のひとみを持つオッドアイのナイスバディーなロングな赤髪美少女。
恰好は頭にカチューシャをした白いエプロンドレスを身にまとう姿まさにメイドの恰好。
思わず見とれた美しい姿をしたメイドに息をのむ。
「――ます、あのーユウキ様? お聞きですか?」
「はい?」
見とれていたために聞き逃してしまう。
あまりにもここまできれいな人を優騎は人生で一度も見たことがない。
確かに先ほどまで案内してくれたアリシアやこの国のあの非道な王女様もきれいではったがこのメイドはまた別格の美しさがあった。
メイドなのかと疑うほどに。
「ですから、本日よりユウキさまにお仕えするメイドのユークリア・ミューテシアと申します。はぁー、ちゃんと聞いてください」
「わるい」
「本当に悪いと思ってるのなら3度目は言わないですからしっかり聞いてください。明朝7時にユウキ様はアリシア第1聖騎士長のもとで聖騎士らと面会をいたします。そのあとはアリシア第1聖騎士長より聖騎士の訓練や習わしを覚えていただきます」
「おう、そうなのか。わかったけど、今何時だ? 腹へってよぉー」
「今は午後6時でございます。夕食でしたらお持ちしますのでもう少々お待ちください」
「お、そうか」
「‥‥‥‥はぁー、まるで礼儀知らずなんですね」
「はぁ?」
「いえ、なんでもございません。では、私はこれで」
メイドことユークリシアは一礼して部屋の扉を閉めて去っていった。
たった、一人この物置部屋だったらしき場所に取り残された優騎。
とりあえずとばかりにベットへダイブした。
行き場のない自分はこれからどうなるのかと考えて矢先に『聖騎士』就任。
無職の男『聖騎士』に異世界でなりました。
「どこぞのラノベのタイトルだっての」
天井を見上げながら過去を振り返る。
職についてた頃はろくな人生を送らなかった。
女とも縁はなく年齢=彼女いない歴。
社畜人生街道だったあるときに売れないまま首を切られひきこもり人生を歩み出す。
人生にあきあきしてネットビジネスでこつこつ稼ぎながらオンラインゲームをやりこむ人生でまさかの奇想天外に巻き込まれ現在。
「くはは、まさにアニメや漫画の話かよ」
実際そうだった。
自分のいる場所は『ゲームの世界』に酷似した『異世界』。
「『KNIGHTOFSEVEN』にはローズ大国はない。ゲームに酷似した場所ではあってもそんな国名の場所なかったし『KNIGHTOFSEVEN』の世界ではないというのは明白だな。しかし、それならあの鏡で見たステータス表示やこのゲームの酷似した格好には説明がつかない。わけわかんねえよなぁ」
考えるだけ無駄なあがきに思える。
「情報を集めるにしたってあの王女様の手前そんな行動はできるはずもねえし『聖騎士』とか勝手に決められるし、なんかあの女騎士には嫌われてるっぽいし‥‥めんどくせえ」
愚痴をぼやいてると扉がノックされる。
扉まで歩みを寄せ開くとさっきのメイドとは別のメイドがいた。
かわいらしくカールした水色の髪。小柄な体についた豊満な脂肪の塊が優騎の目線をくぎ付けにした。
彼女が引く台座に乗った料理よりも。
「お待たせしましたユウキ様」
「お、おう。さっきのメイドは?」
「ああ、ユークリアですかー。あの子、今別の用事をしていて‥‥あっと、申し遅れました―。あたしここのメイドをしていますユリア・ミッシェルといいますー。よろしくおねがいいたします―」
「お、おう。料理サンキュー」
「はい。食事が終わりましたら廊下に台座をお出ししておいてください。後ほどメイドが回収いたします―」
「へーい」
「では」
そう言ってロリ巨乳美女ッ子のユリアは部屋から消える。
また一人の殺風景な空間。
優騎は今まで一人でいた生活がながかったはずなのに落ちつかなかった。
「なんだこの感じ」
かぶりを振ってプレートアーマーを脱ぎ捨て去る。
そのまま料理に手をつけ食事を始めた。
ビーフシチューとサラダにご飯とパン。
ビーフシチューはお肉と野菜がいい具合に煮立っており、肉は肉汁があふれ野菜も柔らかく食べやすかった。
サラダも新鮮なキャベツやキュウリにトマトといった盛り付けでしゃきしゃきとしたおいしい触感。
パンもふっくらとしており柔らかいフランスパン。
ご飯も今まで食べたこともないような触感の米粒だった。
「うますぎだろ」
今まで食べてきた料理の中で最高級といえる味だった。
――――しばらくして、食事も終えるとさすがに眠くなってくる。
「風呂に入りたいな」
そう思いたち、台座を外に出すついでに王城内を探索することにする。
「一人メイドを捕まえて聞いてみればいいか」
廊下を突き進んでみるが果てしなく長い廊下。
「くそっ! どんだけでかいんだよこの城は!」
あきれ果ててると外の裏庭と繋がる廊下で立ち止まる。
きれいな星空が照らす裏庭の一角。
きれいな芝生の上で剣を振り回すきれいな美女がいた。
透き通るような黒髪、とぎすまされたような黒のひとみ。
きれいな体つき。
美の化身とはまさにこのことだろうか。
彼女の握った武器は一太刀の刀。
日本刀だった。恰好も日本の鎧武者のような格好でありこの西洋の雰囲気から逸脱した存在。
彼女の剣技に見とれてると彼女がこちらの視線に気づいた。
「なんだ貴様? 見ない顔だ」
「あ、いやわるい。みてちゃだめだったか?」
「いや、それはかまわんが何者だ貴様?」
「ああ、俺は軌条優騎ってんだ。今日ここになんかわからんが騎士に任命されたもんだ」
「ああ、そうか。貴様か。姫様に認められて新人にもかかわらず『聖騎士』で最初に任命を受けた異例の人物は」
なにが異例なのかはさっぱりだが彼女がこちらに意味深な興味を持ったのがわかる。
「我はサクヤ・イカヤという」
サクヤと名乗った黒髪の美女は刀の切っ先を指し向けた。
「どうだ? 一本手合わせしてみないか異例の新人よ」
「は、はぁ!?」
おもわず、衝撃を受けた。
なにそれ?
そういうながれなのかよ。
「なんだ今は無理なのか?」
「あ、いやー。俺剣技とかやったことねえし」
「なに? ならばなぜ『聖騎士』に任命される?」
「だから、それはたまたまで――」
そう言った途端サクヤは接近していた。
振り下ろした刀を見切って優騎はどうにか回避した。
「今の不意の一撃を避けたか。まぁ、見どころはあるようだな」
「て、てめぇ突然何しやがんだ!」
「我もそう心が広いわけでもない。突然きた新人ごときが『聖騎士』任命を受けたとあっては名折れなのだ。手合わせを無理にでも願おうか」
「は、はぁあ! おまえどこのアニメキャラだよ!!」
「あにめ? 意味のわからんことをいうな貴様」
「それはおまえだ――っとあぶね!」
横切りに刀が来る。
体をひねって回避したはいいがプレートアーマー未装備の黒のシャツにわずかな切れ込みが出来る。
「ちょいたんまちょいたんま! こっちは丸腰だ! 卑怯だ!」
振りかざした手を止めて剣を降ろし、腰に差していた一つの剣をサクヤは手渡す。
「三日月覇刀、有名な刀匠が人生をとして作りし一本だ」
これで手合わせしろというのはすぐに手渡されて理解する。
しかし、優騎は人生で一度も剣を扱ったことなどあるはずもない。
あの日の明るかった時間帯に姫様を助けた時に動けたことも偶然にしか過ぎない。
「どうした? かまえたらどうだ?」
優騎はこのままやられるのも癪だった。
わけもわからないまま感覚でさやから刀を抜いて構える。
「ほうー見たこともない構えだ」
そりゃぁそうだ。
がむしゃらだからな。
「行くぞ!」
気迫をまき散らし接近するサクヤの動き。
それに合わせてとりあえず後退を試みた。
ひと振りの横の一閃。刀で受け止めて上段から振りかぶる。
思わず振り下ろす寸前で手が止まった。
当ててしまえば相手を傷つけるという心の乱れ。
「容赦は無用!」
情けをかけた覚えはない。
サクヤはそんなこちらの気持などしらずに連続してふりかざす。
左右から交互に来る技に優騎はどうにか剣を噛みあわせ防御する。
自分で自分の動きに驚く。
「我の剣をこの短時間でそこまで使いこなすとはなっ!」
次の瞬間、大ぶりに構えた彼女を見て優騎はまずいと判断した。
「これで終わりだ!」
振りかぶられる刀。
体の中で何かがはじける。すると、その軌道がゆっくりと見える。
あの非道な姫様を助けた時の状態に似ていた。
目で軌道を見切ってスウェーで避け、足を素早く動かし彼女の背後に回り彼女の首筋へ刀をあてがった。
寸止めにする。
サクヤは負けたとばかりに刀を落とし両手を上げた。
「今の動き見事だったユウキ。姫様が認めたわけか」
何も答えられず優騎はただ鞘を拾い上げ刀を鞘に戻し彼女へ返した。
「どうした勝者が浮かない顔をして」
「ああ、いや、自分がわからなくって」
「どういう意味だそれ?」
「ああ、いや。つかれてるのかな。そうだ、あんた風呂の場所知らないか?」
「風呂? 風呂ならそこの廊下をまっすぐと2、3部屋を越えたあたりの角を左に曲った先だ」
「ああ、そうかサンキュー」
優騎はそういいながらそそくさとその場から離れた。
その後姿をサクヤは胸を抑えながら見ていた。
高揚する体。
早まる鼓動。
「キジョウユウキか。面白い男だ」