グランド王国内部戦争 前編
レッドカーペットが敷かれ、いくつもの装飾に囲まれた大広間。
大広間の入口には聖騎士がたっている。
そこはまさに王室の間という言葉にふさわしい場所。
ひとつの椅子に座り渋面をつくった顔で王座に肘をかけ退屈げにそのてに顎を乗せてる銀髪の40すぎの男は目の前でかしづく騎士の報告に苛立つまま聞き入った。
「報告いたします。現在、南側よりローズ大国騎士と我が国の軍団が衝突。こちらが劣勢の状況であります。内部ではローズ大国の騎士が潜入してると思われ現在捜索に当たっております」
「対策はしておるのだろうな?」
「はっ、現在南側での騎士団を増員させております。侵入者に関しましては収監塔で目撃されたと有り兵士は数百人そちらに回し捜索中です」
「さっさと見つけんか! 我が国の秘密が露見したら大惨事だぞ!」
「も、申し訳ありません!」
一人の騎士が退散すると更に新たな騎士が王室の間に現れる。
「グランド王子殿下、アルツランド皇国の皇女様がお目見えになりました。援軍を連れてきたとのことです」
「なんと! して、皇女はどちらだ?」
「ここよ」
グランド王国王子――アルヒルド・グランドの隣にひらりと妖艶な真っ黒なドレスにモノクルメガネをかけた白い肌に不気味なくらいな妖艶さを醸し出す美貌を持った美女が現れた。
アルツランド皇国の皇女――
「これはこれはミシェル・アルツランド皇女様、お目見え感謝致します」
「ふふっ、主も苦労していますわね。たかだか、ローズ大国風情に」
「っ!」
悔しさに顔を歪ませ彼女を睨みつけたが彼女の威圧に押し負け直ぐに萎縮した。
「言いましたわよね。ローズ大国に最初責め負けるようならば支援はいたしませんことよ」
「なっ!」
「一応は援軍を連れてはいますがその援軍も主を潰すかもしれませんわね」
アルヒルドはミシェル皇女に恐怖と絶望の瞳をむけ、懇願した。
「たのむ、皇女様力をおかしいただきたい! わしらではどうすることもできん! 相手は大国じゃ! 我が国に侵入もしてきておる!」
「援軍は致しません。ただの見学ですわ。どちらかがピンチになった時に刈り取らせていただくだけですわ」
「ど、同盟を結んだではないか!」
「同盟? ああ、あれですわね。グランド国に費用の提供と作物の提供をする代わりに主らはこちらのいうことを聞く。その一環として世界制覇政治を開始することを了承した」
「そうだ! その世界制覇政治において、わしらグランド王国とは敵対しないということではないのか! 主らに協力するためにわしらはローズ大国を攻めた!」
「ええ、上手くやり組んでくれましたわ。でも、あの時、力を与えましたわよ。それを上手く扱えればローズ大国など容易いですわよ。なのに、ここまで切羽詰っている。 私たちは一応協力はいたしましたわ。これ以上の援助などありえませんわ。十分な支援を行ってこれ以上支援白などとおこがましい」
アルヒルドの顔に怒りが現れ、ミシェルの首に手を掛けようとした。
その手に手裏剣のようなものが刺さりグランド王国の聖騎士が咄嗟に動こうとしたが動けなかった。
なぜなら、聖騎士らはなにかの魔法で縫い止められていた。
聖騎士の後方にその魔法使用者がいた。
アルヒルドの頭上から黒づくめに覆われた人物が下りてくる。
その両方がアルツランド側の聖騎士だった。
「ぐぅ……」
「歯向かうなら、今すぐここで主を殺せるんですわよ。私は同盟の際にいましたわよ。たしかに協力を結ぶが互いに対等な立場であろうと。それは力量も同じでありますわ。今その対等な力関係はなくなりつつありますわ。主らには絶望いたしておりますわ」
「……自分らでローズを殺せということか。こちらが失敗すればキサマらが寝首を狩るか」
「ええ、ワタクシはここで待機しておりますわ。そして、戦争の結果、主の首が飛ぶか、あちらの王女の首が飛ぶかですわ」
まさに中立を気取ったような言い回しだがアルツランド皇国は中立出などない。
まさに全世界の敵対国に等しかった。
アルヒルドは王国の情勢が追い詰められすぎて選択を誤ったことを今になって理解した。
アルツランド皇国は決して結ぶべき同盟ではなかった。
過去の経緯を知っていたからこそ、そんあ国からの支援はありがたく思えたしこの先の未来世界の皇女になる彼女に従えるのならばと考えた。
しかも、力もいただけたしローズ大国くらい容易く倒せると思えたが見誤った。
結果はまずくあり、同盟国にまで寝首をかられる立場にある。
「くっ、絶対勝つ。直ぐに騎士を全軍回せ! ローズ大国側へ!」
しかし、その指示を送ったあとにまたピンチが降りかかる。
もうひとりの偵察兵がやってきた。
「今度は何事だ!」
「き、北側からも敵国の兵団が来ています!」
「な、なんじゃと!」
アルヒルドは頭を抱え、虚ろな表情を浮かべる。
「さぁ、どういたしますの?」
「わしも今すぐでる。馬の準備を急げ」
アルツランド皇国の皇女が薄気味悪く笑みを浮かべる。
グランド王国の偵察兵は困惑し、縛られていた聖騎士も拘束から解放されてすぐに困惑の表情で王子に問い詰めた。
「き、危険すぎます! 今すぐお考え直しを」
「いいや、出るぞ。あやつも呼んでおけ」
「まさか、彼女をお使いになるのですか! 今彼女は先ほどローズ大国の侵入兵にやられ床に伏せっておられますが……」
「かまわん、叩き起こせ。あやつなら、数分で傷等回復するだろう」
「たしかにそうですが、今すごく機嫌が悪いのでしっかりと指示に従うかどうか」
アルヒルドは聖騎士の門反発する態度にいらだちが爆発し怒鳴り散らした。
「いいから、北側に数名、わしと一緒に回る! 内部はあの女に任せる! いいな!」
「ハッ!」
聖騎士がすぐにグランド王国の「秘蔵の彼女」を起こしに行った。
彼女がやられたことは事前に伝えられていたがアルヒルドにとってもはや彼女くらいしか切り札がない。
背後ではもう、アルツランド皇国の皇女に騎士がもういなかった。
魔法で消えたのだろう。
「魔女め」
アルヒルドは王座を出てすぐに援軍に出向した。
******
収監塔の拷問部屋から脱出してから数時間は立っていた。
朝日が王城の小窓から差し込んでいる。
サクヤたちは王城の内部のある空き部屋に来ていた。
うまく、身を隠しながらの移動によてここまで来てこれたのだ。
その空き部屋はいわゆる武器庫でもあった。
囚人から押収した武器の山がコレクションのように山積みになっていた。
「……ここまで……戦闘せず……済んで良かった」
「ああ、だが、気を抜くな。敵はいつどこから襲って来るかもわからん」
ちなみにここまで戦闘をしていないのも外部の騒動が要因であろうことは想像できていた。
サクヤはだが、そのことは決して口には出さず目的を達することのみに集中する。
助けはもう来ている。
王女の手を煩わすことを極力減らす。
「皆の者、武器は手にしたか?」
収監室から脱出した騎士たち全員がサクヤの言葉にうなづく。
収監から脱出した騎士は少ない。
なぜならば、ひどい拷問で死んだ騎士も多く、なによりもサクヤたち先行軍は囚われる際の抵抗によって多くの犠牲を出していた。
ここから内部戦争を仕掛けるかずにしては少ない人数だったが今ならこの数でも問題なくやれるが緊張はしていた。
「今から我々潜入騎士は一気に内部から畳み掛けるぞ。外部では王女殿下が騎士団をつれ戦っておられる。我々も負けてはいられんからな。では、ここから出てすぐに王城内で暴れる。覚悟はいいな」
全員が首を縦に振って返事を行い、サクヤが「ローズ大国に勝利あれ!」と叫び武器庫から飛び出た。
その恫喝の一声にグランド王国の王城内部にいた騎士が数名気付く。
「敵国の侵入者だ! 抜刀しろー!」
すぐに敵国との衝突を行う。
内部戦争が勃発した。
*****
――その間、クリュルッハ・エーベルハッツ第5聖騎士隊長は背中で眠った優騎を背負い王城内の廊下で起こる内部戦争から撤退するように消えていく。
それはサクヤの指示である。
数分前、サクヤは武器庫に来る前クリュルッハだけに耳打ちで命令していた。
「私はこれから内部から戦争を仕掛けるつもりでいる」
「……え……正気ですか?」
「正気だ。確かに数は少ないが外部から王女殿下が挟み撃ちをかけるように攻撃を仕掛けてる今なら好奇といえるからな。このわずか数名の騎士ならば抵抗は容易い」
「ですが……無謀では?」
「無謀なのは承知だろう。でも、眠った彼をもって移動させるためにもて木の注意を引きつける必要がある。武器庫まで今も移動してるが敵に今見つかってもおかしくない状況だ。どちらにしても内部で戦うことは目に見えてるなら奇襲をかける形でこちらから仕掛けたほうがいい」
「…………」
「そこで、私の提案がある。内部戦争する際は君が彼を運んで先に王女殿下の下まで行け」
「なっ……私……ですか? ……それは行けません」
「行くんだ。力量ならば君よりも私のほうがある。意味はスピードタイプの騎士だ。隠密行動なら君の方が上だろう」
「ですが……」
「たのむ」
――――クリュルッハはあの時の光景を思い浮かべながら背後の戦闘音を聞きつつ外へ脱出する。
外というのもコテージのようなカフェテラスである。
カフェテラスだと判断できる要因は唯一ある白い屋根付きの中にあるカフェデスクとチェアである。
カフェテラスを見回して出入り口へのルートを探す。
「……たしかこのあたり……」
地図の記憶にはカフェテラスから外の町、王城内敷地外にでるための道の入口があると書いてあった。
しかし、見当たらずに困惑し焦りが顔に出始めた。
その時、殺気が肌を伝い優騎を放り投げ、殺気の軌道へ剣を引き抜いた。
金属音が響き、何かを弾いたことを理解した。
だが、鈍い痛みが大腿部を襲い体ががくっと力が抜け始め肺から何かがこみ上げ血が口からこぼれ落ちる。
「え」
視界がぐらついて剣を地につきたて自分の状態を見た。
大腿部に短剣がつきたっている。
「ひひっ、私のどくのぉあじはいかがですかぁ」
「……あなたは……私が殺したはず……なんで生きて……」
「またおあいできてぇこうえいよぉー、かわいいもるもっとちゃぁん」
背後には拷問部屋にいた例の病弱な彼女が短剣の刃を舐めながら立ちはだかっていた。




