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グランド王国潜入 前編

4日連続掲載致します。

 山道を多くの騎馬隊が登っていく。

 その光景をすれ違う旅商人のぎょっとした眼差しが痛く感じられる。

 こちらはでも真面目な進軍を行っていた。

 目的地はグランド王国。

 グランド王国に先立って向かっていた部隊の騎士団が全員壊滅的な打撃を受け囚われてるという話になってるようだ。

 その知らせをリリアはサクヤの放った伝書のグリフォンから知らせを受けこちらに救援を求めるために自ら出向いたようだった。

 しかし、救援を求めるためだけに出向いただけではなかった。

 前方でバイル村の騒動の結果を伝え終えたアリシアの話を聞いたリリアは数秒間の沈黙のあとに「そうでしたのね」と言い始めた。

「申し訳ありませんわ。私もミスを犯しました。あなたがた騎士団をバイル村に行かせたあとにここ最近の領土内で起こる騒動を今一度調べてみたところ密入国者の痕跡が見つかりましたわ。それで、もしやと思いたりグランド王国の痕跡を見つけましたの」

「では、グランド王国はもともと我が国へ戦争を仕掛けていたんですか?王女殿下」

「そうですわ」

 会話に聞き耳を立て、優騎は自分が戦争の発端ではないことに一抹の安心を抱いた。

 結果としてアイスグラシエルのあの騒動によって自分が起こしたことでグランド王国と対立関係になったのではなくもともとグランド王国はどうやらローズ大国に戦争を仕掛けてきていたようだった。

「でも、なぜでしょう?」

「聞いた話ですとグランド王国にある国が同盟交渉が始まりだと思われますわ。その時期から我が国の領土に密入国してきてますわ。いえ、我が国だけにならず他国もですわね」

「ある国ですか? 一体どこですか?」

「アルツランド皇国ですわ」

「っ! なぜ、アルツランド皇国のような大国家が王国なんかに同盟を?」

「知りませんわ。けど、グランド王国は近年食糧問題や政治費用の問題で悩まされていましたわ。隣国とは仲が悪く争ってもいましたわ」

「隣国といえば我が国と同盟国に当たるサーツバルム大国ですか」

「ええ、そうですわ。ですが、あの国も近年は領土がモンスターによって襲撃を受け減っているそうですわ。作物も軽減気味で我が国に援助を申請していましたわ」

 国内政治の話を延々と語り合うふたりを見て優騎はここが異世界であるという実感をしみじみ痛感した。

『主、いま彼女たちの会話をお聞きになりましたか?』

「うぉ!」

「ん? どうしたんですか? キジョウユウキ」

「あ、いや」

 突然、頭に響いてきたレミアスの声に驚き馬から転げ落ちそうになる。

 その素っ頓狂な声を上げたためにみんなの視線は集中するわアリシアの訝しんだ視線が突き刺さる。

「へ、平気です。ちょっと、馬から滑り落ちかけただけだ。あははは」

「……クリュルッハ隊長、彼をしっかりと監視してください」

「……了解」

 アリシアの命令を受けとなりへクリュルッハが後退してきた。

 その際に優騎は自分の剣の鞘に反射した彼女の姿を見た。

 そこにはステータス表示がぼやけて見えた。

 わずかに上部だけ――

 クリュルッハ・エーベルッツ HolyKnight Lv.55

 攻撃 2350

 防御 2500

 対魔法 2110

 対物 2500

 体力 1500

 それを見て感嘆の吐息を漏らした。

「すっげ。おれよかよっぽどつええわ」

「……なにか?」

「あ、いやこっちの話」

 独り言を喋るたびに疑われる視線を向けられ固く口を閉ざす。

『我が主、先ほど王女殿下の話を聞きましたよね?』

 まだ聞こえてくるレミアスの声に極力驚かず首だけ落とし頷く。

『アルツランド皇国は昔、我が最後退治した呪刻の聖剣の使い手がいました国です』

「は?」

「……ん?」

「あ、いや。あははは」

 頭の中でどういうことだ? と感慨に思うとレミアスとは意思疎通できる腕あった。

 すぐに返答が来た。

『昔、あなたの先代、つまりはわれが先代使い手は呪刻の剣を倒すべく最後の戦争アルツランド皇国当時はアルツランド王国であったかと戦った。そもそも仙台の使い手はその国の騎士であった』

 衝撃的。

 つまりは自国に殺されたという話であるのか。

『そうなります。最後は哀れな形でした』

 もと使い手に対してひどいいいようだ。

『アルツランド皇国がまた今回関わってるとすれば呪刻の剣はまたその国にあります』

 その根拠は一体どこから来るのだかはわからないが優騎自身もそう思った。

 優騎もそう確信を持っていた。

「――はぁー」

「……どうした大きなため息……ついて?」

「あ、いや。戦争っていつもこんな感じなのかなぁーってさ」

「……戦争は時に厳しい。……さっきの戦闘を経験したならわかるだろう」

 クリュルッハにそう囁かれ優騎は思い出した。

 彼女の弟たるムスフが殺された惨劇を。

「わるい。嫌なこと思い出させたな」

「……気にするな。……戦争なら仕方がない……弟も覚悟をしていた。……だが、言っておく……私は貴様を許しはしない……私の下で存分にコキを使う。弟のためにもな」

「へいへい」

 一方的な八つ当たりに等しい彼女の発言だったが彼女が恨むのも仕方がないだろう。

 彼女の弟をうち負かし精神的に彼を追い込んでしまったと言える主犯格。

 その結果、ムスフは活躍を見出そうとあのキリンへ無謀な行動へ勤しんだのかもしれない。

『我が主、気に病む必要はないでしょう。あの彼は力量的にキリンにはステータスが足りてませんでした。やられるのは目に見えてました』

 レミアスの死者を敬うことを知らない口ぶりにすこしカチンときて優騎は剣を叩いた。

「どうした?」

「いや、ちょっとイラついただけだ」

「……?」

 レミアスがしばらく大人しく口を開くこともなくグランド王国が見えてきたところでリリア王女が言葉をかけた。

「第5聖騎士隊は先に兵士を200ほど付け偵察を行ってください。他騎士団は私と別ルートから進行をし攻撃を仕掛けますわ」

 現在、前方に二つの分かれ道があった。

 登ってく坂道と下り坂。

 下り坂に行けばすぐにグランド王国であるが登り坂はどうやら遠回りする道のようだった。

 そこから迂回してグランド王国の南側から攻めに行くようす。

 優騎ら第5聖騎士隊はそのまま真正面から向かい慎重に身を隠し偵察を行えという命令である。

「では、進軍を開始」

 クリュルッハを筆頭で、僅かな兵で偵察隊が進軍する。


 ******


 道中で馬を下ろし、優騎ら偵察部隊は岩陰から遠方に見えるグランド王国を見ていた。

 岩陰というか、崖の上である。

 グランド王国は王国というよりは城塞に近い様相をした国である。

 周りを大きな塀が取り囲み、その中にいくつもの民家や店が軒並みを揃えてる。

 といっても岩崖の下はもうグランド王国領土に踏み入る形である。

 クリュルッハは魔法を使用中で手をメガネの形のように輪を作って城の方を確かめていた。

 その城もローズ大国の王城なみにで大きく優騎は某有名な海外アニメのお城を思い出させた。

「ハロー、グランド王国だよってか」

「……何か言いましたか? キジョウユウキ?」

「あ、いや。なんも」

「そうですか。では、任せます」

「任せる?」

 突然進んだ会話に小首をかしげてるとクリュルッハが数名を名指ししていく。

 名指しされたのは優騎を入れて10人。

「……あなたがた……10人……潜入偵察隊です……旅人を装い……グランド王国内へ潜入……囚われた我が国の騎士……居場所を探してきて……ください」

「what!?」

 おもわず英語になってしまうほどに声が裏返った。

「……それは何語ですかキジョウユウキ? 意味のわからないことを言っていないで任せましたよ」

「おいおい、俺は新人だぞ? そんな新人に潜入調査だァ? ふざけるなよ! 自殺しに行けってか!」

「……私……現在上司です……これは決定事項です」

「――っ!」

 逆らえばこの場で殺されるのがわかってるように他の騎士たちはそそくさとグランド王国へ向かうようにその場所から離れていく。

 というのも魔法を使い崖下へ――

「……国家反逆罪……なりたいのですか?」

「こんだけで反逆罪って……しゃーねえか」

 諦め切った表情で優騎は崖下から降りず踵を返すようにさっき来た道を戻っていく。

 首筋にひんやりと当たる鉄の感触。

「……任務を放棄するんですか?」

「ちげえよ。俺は魔法を使えない。だから、来た道を戻って遠回りして向かう」

「はい? ……先ほど……戦闘……十分魔法使用……していましたよね?」

 もう、暗い世界のもとで月明かりに照らされる二人の表情。

 片方は困り果て、片方は殺気立った鋭い鷹のような瞳を輝かせた表情。

 その様子を見つめて緊張感を抱くほかの偵察隊。

「説明すれば俺は魔法を使ってたんじゃない。この剣の力さ」

「……伝説の英雄の剣ですか」

「そんな異名があんのか。まあ、そういうこと。こいつのおかげってわけ。こrされんのは嫌だし俺にはこの世界でやることがある今は死ぬ気はねえよ。そのクソな任務もちゃんと受けるよ。国家反逆罪にはなりたくねえしな」

 などと言いながら優騎はそのままクリュルッハから離れていこうとした。

 だが、彼女は――

「待ちなさい。あなたに私も動向します」

「はぁ?」

 さすがにこれにはその場の騎士団や兵士も驚いた。

「おいおい、この後の指揮は誰がとんだよ? あんたがいなきゃダメじゃねえか」

「大丈夫です。アルス任せました」

「た、隊長!? さすがにボクは副隊長ではありますがこんな大役こまります。潜入の同行ならこの僕が――」

「……いいえ……私が向かいます……彼には怪しい面もあります……弟を倒したその力量……近くで見てみたいです」

 優騎はおもわず呆れてしまう。

 普通に独断的行動だった。

 指揮官に有るまじき行為である。

「……彼を監督官として……みてること……重要でしょう……他国のスパイの可能性……あります」

 彼女の考えはわからないでもない。

 ここ最近ひょっこり王女に気に入られて入隊した新人。

 履歴は皆無で怪しさ十分の男。

 とくに団長たるアリシアに嫌われてる男となれば監督する義務感に心が揺さぶられるのも無理はない。

 優騎はそれでも別に任務を放棄することもないのに無駄なあがきだなぁーと思っていた。

 放棄することはなくとも独自な行動を取ろうという気はあったがぎゃくにそれができなくなることがあると考え少々焦る。

「疑ってるのはわかるが指揮官があとの指揮を他人へ任せんのはどうなんだ? それこそ王女様おこんじゃねえのか?」

「いいえ、王女殿下も話せば理解してくれます」

「――ったくよぉ。まあいいさ」

 これ以上言えば疑いはますばかりである。

 彼女が付き人になるのは少々否めないが優騎は承諾をする。

「……私と一緒にこのまま魔法……崖下へ行きます」

「あ?」

 次の瞬間だった。彼女が手を振るうと体が無重力空間にさらされたように宙へ浮き上がりそのままクリュルッハは崖に足をかけ降下した。

「ぐぉおおおおおおおおおおお」

 優騎はクリュルッハという引力に引き寄せられ降下していった。


 *******


「ムチャクチャいてえぞこのやろう」

「……知りません」

 出血した鼻を押さえローブに身を包み身を隠しながら優騎とクリュルッハは夜の暗がりのグランド王国内を歩いた。

 ローズ大国とに似通ってるが違うところは西部劇風と中性のローマ時代風をミックスした景観の町であることである。

 あちこちには人相の悪い連中がうろついてこちらの寝首をいつでも書こうとするような目つきだ。

「いやな感じだなおい」

「無駄口いいです」

「へいへい」

 優騎は街中を歩きつつクリュルッハのあとを付いていく。

 王城の手前で彼女がストップし門番の騎士を見つめる。

「……入口はあそこだけ?」

 クリュルハが疑問を呈してそう口にしたが優騎はどうにもとっかかりを感じる。

「そんなはずはねえだろうな。通常、ああいう王城ってのは隠し通路や裏道なんか2、3はあるってお決まりだぜ」

「はい?」

「しゃーねえ。ゲーム脳で行きますか」

 そう言ってクリュルッハのことを無視して踵を返し街を歩きつつある店を探す。

「……ちょっ……勝手な行動は禁ずる」

「いいから、こいって! ここがよさげだな」

「……酒場? ……あなたこんなところで……今は任務中!」

 堂々と入店した途端にギロリと強面おっさんの異様な視線が集中した。

「あ、はは」

 視線を合わせ内容にバーテンのカウンターの椅子に腰を下ろしクリュルッハも渋々腰を下ろした。

「……あなた……どうする気ですか?」

「いいから、まかせろって」

 カウンターの大柄なほほに傷のある軍人のような出で立ちのマスターがこちらへ近づき「注文は?」と聞いてくる。

「おすすめを一つ、彼女にも」

「…………」

 マスターはそのまま後ろへ振り向いて注文の品の準備を始めた。

 すると、クリュルッハの隣にむさくるしい男が数人近づいた。

「ひゅー、こりゃぁ男かと思えば女のベッピンさんだ。俺たち王国騎士団なんだぜ。一緒にこのあとどうよ? 気持ちよくしてやんぜ」

 笑い声がどっと上がり、気味の悪いものを見るように目つきを鋭くするクリュルッハ。

「お客さん。お待ち」

 注文の品が置かれたと思ったら横あいからにゅっと伸びた大柄な腕がその品を飲み干す。

「かぁーうめぇーぜ。おまえら旅人は俺らみたいな王族騎士団に奉仕をしないとなぁ。だからよぉ、兄さんてめぇの彼女は俺らがいただくぜぇ」

 優騎は軽く聞き流しながらマスターの方に視線を向ける。

「マスター、俺ら王城に入りたいんだがどうやったら入れるかわかるかい?」

「おい、聞いてんのか!」

 グラスが叩きつけられるように目の前に戻され、背後に居る大柄なひげおやじがこちらをニラむ。

 クリュルッハの胸へ手を伸ばし触ろうとするこの国の騎士団一行。

「おい、クズオヤジども。その女に触るとやけどするから注意しろ」

 一度いってみたかったぜーという興奮に浸りながら優騎はドヤ顔で呟いた。

「あん?」

「お客さん、騒動はゴメンです」

「ああ、大丈夫大丈夫」

 返事の後に派手な音が響く。

 ひとりの男が腕から血を流し倒れておりクリュルッハがたって剣を突きつけた。

「……グランド王国の騎士団……破廉恥極まりないです」

「て、てめぇ! 女の分際でぇ」

 倒れた男が携えた剣を引き抜ききりにかかったがクリュルッハは見事受け止め横っ腹を蹴り吹き飛ばした。

 きっとそしてこちらを睨み返す。

「……あなたはここにこのような輩がいるの……理解していたからこそ……ここに来た?………こいつらから情報を聞き出そうというわけ……?」

 その質問には大きな間違いがあったが実際騎士団がいるとは大いには思わなかった。

「あ、いや。実際はそいつら騎士団がいることは想定外。実際はこういう場合ってたいてい店主に聞こうかなぁーと」

 店主の方を見ると店主は首を振って応える。

「私は何も知らん。暴れるんなら帰ってくれんか」

「こっちは暴れるつもりはないんだけど相手さんがねぇ」

「いいから帰ってくれんか」

「少しも情報ないんかなぁー?」

「…………」

 その無言はあると見たが次の瞬間優騎の前を短剣が掠める。

 そのままマスターの肩へ刺さった。

「ぐぅう」

「おい! おまえ」

 短剣を放った騎士団の男もまさかの現象に動揺し怒鳴り散らす。

「てめぇが避けっからだ!」

「俺は避けた覚えはねえ! てめぇのコントロールの悪さのせいだろうが!」

 といってもどちらにしても避けてたのは違いない。

 だが、今のはコントロールの悪さだった。

「くそったれ! 野郎どもこいつらをやっちまうぞ!」

 集まりだす酒場にいた騎士ども。

「……穏便……済ませられないじゃない……ですか」

「いや、しゃーないねぇーこりゃぁー」

「……あなたのせいですよ?」

「実際、あんたが暴れなきゃ何事もなかったんだぜ」

「……私に無抵抗……このようなやからに……胸を触らせろというん……ですか?」

「いや、そうは言ってねぇ」

 優騎はクリュルッハの容姿を見て乾いた笑いとともに一言性別を確定する発言をした。

 クリュルッハにとってそれは身体的特徴を馬鹿にされたのと同じでクリュルッハの表情は次第に曇りだす。

「ゲスです……やはり、あなたは殺すべきでしょう」

「おいおい、その決断は今しちゃダメだぜ」 

「なぁーに仲間割れしてんだこらぁ!」

 ひとりの男が突っかかてきたがひょいっと二人してよけ、カウンター席に顔面を直撃しまず一人目の男は沈黙した。

「くそがぁあああ!」

 二人目を皮切りに大勢の男が押し寄せ酒場の暴動が始まった。

20日分は終了です。

21日分もまた午後掲載します。

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