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決意

 外廊を歩き、湯上り下体を冷めぬように急ぎ、メイド用の宿舎にもどるように歩いていたユークリアは目ざとくユウキを見かけた。

 ユークリアの主人となった彼だが、ユークリアには不服でしかない。

 だが、王女の命令であるのでそれにはしたがうほかない。

 姉の部下である彼を無碍にもできない。

 そのユウキが何やらきょろきょろと廊下を歩いて不審人物さながらの挙動不審だった。

「な、なにしてるんですか?」

 呆れるように一息ついて声をかけた。

 背後から声をかけると彼はびくっと跳ね上がった。

 彼がいたのは書庫の部屋の前だ。

「ここは王女様の許可ないと入れないところですがわかっていないんですか?」

「あ、やっぱ、そういう感じなんか。面倒だな」

「めんどう?」

「あ、いや。こっちの話だ」

 ユウキが頭皮を掻きむしって書庫の扉を見上げる。

 彼が知性を探求するような性格でないことはユークリアは最初の第一印象で見抜いていた。

 だからこそ、何か怪しいと思った。

「なぜ、このような場所で立ち往生を?」

「あ、え、そのぉー、調べものがあってよぉ、最初は書庫の場所わからなくってメイド探してたんだけど歩いてるうちに見つけちまったからどうしようかなぁって悩んでたってかんじかなぁ」

「は、はぁ?」

 まったくよくわからない。

 返答にすらなってるようでなっていないような回答だった。

「書庫に入ってみたいんですか? こんな時間に?」

「ん? おう。やっぱ、夜こそが思考の活動時間じゃないか」

 おもわず、ユークリアは半目になって、睥睨し大仰に息を吐いた。

 入るにしてももう寝てしまった王女を起こして許可をもらってくるしかない。

 だが、たかがこの男のためにそこまでリスクを負う必要はない。

 ユークリアは考えた。

「馬鹿ですね。書庫に入るにしても今日は無理です。王女はもう寝てますし許可をもらえません。それに許可をもらうにはあなたがちゃんと功績を残さないとダメです」

「功績?」

 実際はそんなものはいらない。

 書庫は全員の所有が可能となっているし王女に頼み込めば功績などなくっても簡単に使用ができる。

 ただ、この時間に使おうというバカは今までいなかっただけである。

 時間帯は夜1時だ。

 本当にユークリアは呆れる気持ちでいっぱいだった。

「どんなだよ?」

「たとえば、あなたが騎士活動として頑張って功績を残せばいいんじゃないですか?」

 適当な事を言って彼のことを鑑みる。

 どうせ、無理な感じで諦めた気持ちで強行突破するようなことを考えた。

 だけど、反応は違った。

「んじゃあ、しゃーないか。わかった。騎士で功績を残せばいいんだな。どうせ、近いうちに任務があるし功績を残すとするか」

「え?」

「ん? なんだよ」

「あ、いえ、強行突破でも図るものだと」

「はぁ? 俺だってそこまでバカじゃない。不躾な行動は取らない」

 いままでさんざん王女に不躾な行動をとってた男が言うことかとユークリアは心底思った。

「じゃ、俺はもどるわ」

 そのまま、彼は背を向け、ユークリアの前から立ち去った。

 残されたユークリアはおもわず、いらだちとともにポケットに入ってる鍵の束を取り出し書庫を開ける。

「まったく、私たちメイドは常に書庫の使用が降りてるんですけどね」

 そう、結局のところメイドには特権が有りユークリアやほかのメイドに頼み込めば使えたはずだったがユークリアはあえて言わなかった。

 それは彼への苦労をさせたいというちょっとした意地悪。

「まあ、まともにこれで活動すればいいんですけど。ユウキ様は扱いやすいです」

 ちょっとした嫌な笑みを浮かべながら書庫の扉をとじるのだった。


 ******


 優騎は部屋に戻って剣を壁に立てかけた。

「レミアス。聞いてただろう」

 しばし、おいてから剣が発光し人の形を成す。

「はい。ですが本当にあのような功績がいると思うのですかわが主」

「いるいらないにしてもどちらにしろ戦争に出てその聖剣とやらに遭遇したほうがはええだろう。考えるとこの聖騎士になってる立場は使えるのかもな。いろいろと町を巡回する特権がもらえるし戦争に立ち会うこともしばしあるみたいだ」

「歴代の者もそうでした我が主」

「歴代の物って言うとお前の元使用者か」

「はい」

「ふーん」

 優騎は物思いにふけりながら考える。

 聖騎士ほんの数時間前までは聖騎士なんてめんどくさいしやりたくはないと思ったが変えるためには聖剣『呪刻の剣』を壊さなければならない上に他の聖剣と遭遇しなくてはならない状況。

 なによりも、その聖剣は戦いあるところに導かれる。

 聖騎士という役職はまさにそんなんだ。

 高貴と言える。

 さらに、先ほどの功績の話が拍車をかけるように優騎は意欲が次第に湧いてきた。

「しゃーねえか。元の世界に帰るためにも聖騎士っていう立場は使えるのかもしれねえ。王女にあれこれ従うのは面倒だがあすの戦争でうまくやれば王女の信用性も上がるってもんか」

 そう思うやいなや優騎はレミアスのほうに向いて――

「レミアス、おまえの力って一体どれくらいあるか教えてくれ。明日の戦闘で役立てたい」

 優騎は決意を胸に抱いてそう口にした。

 レミアスが目を瞬き、口元をほころばせながら会釈をした。

「我が主了解です。お教え致しましょう。私の能力を」

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