中節 異世界に飛ばされた真相 改稿版
荒ぶる人々が剣を手にし、どこぞの山脈で争いあっていた。
記憶にもないその光景に優騎は困惑とともに虜になっていく。
(一体何だ?)
自分はその戦場の只中にいる一人の男にでもなっていた。
その男が手に持つ剣は柄しかない。
たんなる、ゴミでしかないそんなものを掲げていた。
(こいつ馬鹿か)
目の前に押し来る敵の軍勢を前にしても男は逃げはしない。
(おい、待てばかっ!)
やられるのがオチに見えた。
しかし、やられてはいなかった。
倒れたのは相手側だった。
男が腕を振るうたびに軍勢はなぎ倒されていく。
日差しに反射して薄く見えた。
柄にはしっかりと刀身があった。
ロングブレード形状の剣である。
その刀身はよく見ないとわからないほどに透明である。
なによりも、その剣の柄には見覚えがあった。
(この剣まさか‥‥)
まさに優騎が使ってる剣と同じもの。
次第に戦場は終戦を迎え始め、優騎の意識となってる男の目の前に一人の大きな男が現れる。
白銀と赤のラインの入った甲冑を身にまとい、右手に大きな斧を構えていた。
斧の彩色は金色で装飾にも金メッキが施されている。
神々しくも輝かしい。
斧の男は肩身を揺らし笑いながら宣言をした。
「相まみえること嬉しく思うぞ。流浪の聖騎士さん。だが、我とこの『聖剣』「アドール」は決して貴殿にヤラレはせんぞ!」
斧の男の堂々たる宣言にその背後にいた部下らしきものたちの指揮を向上させた。
景色は暗転する。
夕焼け空に照らされる山脈の戦場は血の海だった。
倒れた騎士の亡骸が山となり山脈を覆い尽くしている。
「さぁ、ころすがいいぞ」
斧の男は優騎の意識のある男へ向け囁いた。
(おいおい、なにするきだよ!)
男は悠然と無言で剣を振りおろした。
斧の男から血が吹き出て光のあった瞳が段々と薄れていく。
死亡した。
男が持っていた一つの斧、それに向け再度男は剣を重ねた。
何か共鳴したように光を散らす。
次第に斧は男の持つ透明の剣の刀身に吸収された。
徐々に刀身に金色の色が移り出していった。
――――また暗転する。
極寒のどこかの山。
どこぞの山賊だとひとめでわかる衣服を着た軍勢と今度は争っていた。
たった一人で。
山賊の男が持つのは『アイスグラシエル』だ。
山賊は『アイスグラシエル』を愛おしそうに舌なめずり。
「げへへっ、旅行中の王族から頂いたこの『聖剣』で貴様の首も取れるってもんよなぁ『聖剣喰い』」
妙な単語がここで出てくる。
最初の男は流浪の聖騎士といったが山賊はちがった。
『聖剣喰い』。それがこの男の呼ばれ名なのか。
一切男は何も言わずタダ例の金メッキに光るロングブレードをかざす。
「そうか。聖騎士を脱退してからあの戦いを経験しその名が付いたのか。ふっ、ふさわしい呼び名だな『レミアス』」
誰かに呼びかける男。
一体それが誰に呼びかけたものなんかはわからないが山賊との戦いは一瞬で決着がついた。
一方的な殺戮でしかなかった。
最後にまた最初の男と同じに殺し、刀身にアイスグラシエルが吸い込まれていく。
刀身は氷色に変わって――
景色が変わっていく――
戦場の光景がなんどもなんども同じように流れていく中で気づいた。
(これは俺の使ってる剣の記憶か?)
そうまさにファンタジー小説で在り来りなような感じだったが間違いなくそうとしか言えない。
そして、どこでも出てくるのは後ひとつある。
(この剣は『聖剣』を吸収するのか)
気付いた時だった。
ある戦闘の場面が出てきた。
ひとり、どすぐろい闇としか言えないようなものを体から放出した妖艶なドレスを着た美女が大鎌を振りかざし、男の腹部を貫いた。
(ぐがぁああああああああ!)
痛みが共有されるように激痛が優騎に走った。
(なんだこの痛み‥‥)
美女は男に微笑みを向け囁く。
「今まで仕えてきましたこと感謝致しますよ。ナイト」
止めに美女は横薙ぎに腹を割いて剣の刀身へ鎌を噛み合せたと同時に剣が閃光。
剣から悲鳴のようなものが優騎には聞こえた。
光はラインとなって空へ。それらがどこかへ飛び散っていく。まるで流れ星のように。
王道ファンタジーのような光景だった。
景色は次第に黒く塗りつぶされていき、次第に自分の体がその空間に現れ始めていく。
気づくと全裸だった。
「な、なんだこれ!」
自分の姿に素っ頓狂な声を上げてはずがしがる。
周りには誰もいないがハズい。
『見てくれましたか我が主』
ビクリ。体がその声に敏感に反応を示し硬直したようにゆっくりと顔を声のした背後へ振り返る。
そこには白いシルクドレスを着た美女がいた。
年齢は20くらい。
ちょうど同い年くらいだと優騎は見た。
そのドレスを着た彼女の顔立ちはまさにそんじょそこらの一般女子とはかけ離れすぎてる美貌。
ドレスも胸元を開いた感じで妖艶でありお嬢様って感じがにあっていた。
「君は一体?」
『申し遅れました我が主。私はあなたの剣『吸収する剣――レミアス』です』
「『吸収する剣』? その前に今、剣といったか?」
あまりの超展開にくわえ中二病的現象であたまがついていけていなかった。
普段は妄想はしたりするような光景がまさに目の前で繰り広げられていた。
『はい、そうです。我が主にとっては大変信じられないことでしょうが私は剣です。とある儀式によりその身をこの剣に封じられし霊魂であるのが私レミアスです』
「とある儀式?」
『はい、異世界をつなぐ上において強力な力を回収するために』
「っ!? なにっ!?」
『私は異世界結合のために作られた道具でしかありません。本来私は異世界同士をつなぐための儀式の道具になる予定でした。力を回収し、その力を儀式に当てるための』
「まてまてっ! ますますわかんねえよ! ここは俺のいる世界とはやはり別なのか?」
『そうです、我が主。あなたの世界「地球」とは別の世界。ここは主様の中で認知される言語で言えば「異世界」です。主様はこの世界において選ばれたのです。私の使用者に』
色々と重要な要点が抜けてる気がするが何よりも確信が行く。
まるで、『KNIGHTOFSEVENS』と酷似してるがそうではないような世界。
その正体は誰かが作ったまがい物の世界ではなく、れっきとした別世界。
では、なぜ呼ばれたのか。
「俺がここに呼ばれたのはなんで? 君は知ってるのか?」
『それは来るべき暗黒時代を止めるために主様はこの世界の神に呼ばれたのです』
「暗黒時代? 神?」
『そうです。先ほど見せたあの映像もその暗黒時代の過去の歴史です』
「あれが‥‥」
見たい映像を思い返す。
どこでも戦争があった。
どこでも戦い死んでいく人々。
『そして、今回『暗黒時代』の引き金とまたなるのは『聖剣』です。その驚異の力を身につけてしまった『聖剣使い』が力で周りを服従させ戦争に溺れていっています。また『暗黒時代』が再来し、神は恐れ、より高度な戦闘知識のあるモノを呼びました。それがあなたです』
「いや待てよ! その神がどこぞの誰だか知んないがな勝手すぎるし馬鹿か! 俺は単なるニートなゲーマーだ! 戦闘知識なんてねえし、それこそ軍人とか選べよっ。どうして俺なんだよ!」
『それは神が仕掛けた道具であなたは勝ったからです』
「は?」
『我が主が行っていたあの奇怪な道具『KNIGHTOFSEVENS』は神がこの世界を変えてくれる選定者を選ぶ道具でした』
「は、はぁっ!?」
衝撃的すぎて魚のように口を開閉し、頭をかきむしった。
「いやいや、どんな神様やねん!」
おもわず関西弁でツッコミを彼女に入れてしまう。
『ですが、事実です。あれは高度な神の能力により作られた選定の道具』
たしかに、あのオンラインゲームには不思議なことがあった。
運営会社が無名であることやサーバーなどのものもどこから繋げてるのかなど。
まあ、在り来りなオンラインゲーム過ぎて人気は廃れ始めサービス停止になったと思っていたのだけど――
「いや、まてよ。まさか、あのサービス停止はあれは何か関係があるのか?」
『そうです。あれはいわば神が仕掛けた選定終了の合図です。実際、あの道具にて大会を開始した直後からメンバーの選定を行いました。周りに感づかれず上手く選定をやり込むために表向きは普通のゲームとして行われていましたが』
「そういやぁ、大会が終わってからだったな突然ゲームのアカウントメンバーが減ったのも」
『あれは大会においてランクがより下になったものは神が自ら通信断絶していっていたのです』
「ひどっ!」
おもわずそうは言わずにはいられない。
この『KNIGHTOFSEVENS』の秘密を知ったが優騎はだからといって世界の救う騎士になろうとかは思わない。
なぜなる必要があるのか。
この世界の神の勝手に付き合う義理はなかった。
「選定で選ばれたかなんだか知らねえが俺は帰りてえんだ! その神様にうちに帰せって言え!」
この剣は優騎に従順だと思い命令をしてみたが帰ってきた答えは絶望に落とされる答え。
『それは無理です我が主』
「なに?」
『私は神により選定者の剣になるように仰せつかった剣です。ですが、だからといって神の居場所は常日頃からはしっておりません』
「なら帰りはどうすればいいんだよ!」
『この世界を救ってください。そうすれば帰れます。神はこの世界が救われたと知った時に現れます』
「つくづく身勝手な神様がっ! くそったれ!」
すげえ腹が立ちぶん殴りたい衝動に駆られる。
「世界を救うだと? どうやって? なにかあの映像みたいに聖剣を壊してったり戦争に勝ったりでもすればいいってか。そんなの冗談じゃないぞ」
『でも、それしかこの世界を救う他ありません』
「馬鹿言うな。ニートでタダのゲーマーだぞ俺は」
『ですから、選定者には神の恩恵たるステータスの目に身体向上の加護、時空観測移動とそして私が付いているのです』
今までのあの異常な力は全てこの世界の神様による恩恵だと言われると納得がいき次第に笑いまで込上がってきた。
「糞な神様が。暗黒時代だがなんだか知らねえがそれを乗り切れば帰れるんだな元の世界に?」
『可能です、我が主』
優騎はがむしゃらに感情が揺れ動いた。
もはや、決断をして勇者にでもなるしかなさそうだ。
いまはそうしよう。
(もし、手っ取り早く帰れる方法が見つかればやめりゃぁいいさ)
そう。
そうするんだ。
「わかったよ。で、手始めにどうすればいいんだ?」
『我が主、今私はあなたのおかげでこうして会話を出来たのはなぜかわかりますか?』
「は?」
『今まで私が喋れなかったのは力が不足していたからです。ですが主が『アイスグラシエル』を与えたことで私は喋れて力を一部取り戻しました』
言ってることは理解ができなかった。
けど、これはわかった。
「お前を使えばいいってわけか。まあ、それはいいが確か俺『アイスグラシエル』を手に入れようと奮闘しててかつあの怪物のせいで逃げ場失ったんだよな」
『アイスグラシエルについてはすみませんが逃げ場なら確保できます』
「なに?」
『私にお任せを。我が主』




