異世界
鈍く痛む頭。
めまぐるしく回る視界。
ゆっくりと、痛みが引き始めて視界も開け始める。
顔を上げると見慣れない町の路地裏に寝転がっていた。
「ここはいったい‥‥‥‥」
生臭い匂いが鼻腔をくすぐり嫌な顔を浮かべながらゆっくりと足を進める。
奥に進むほどに暗いどんよりとした雰囲気が立ち込め始めまさに、悪さをするならもってこいの様な空気。
壁伝いについてる手をみて上を見上げればなにかのお店らしき屋根が見える。
「なんだよここ? さっきまで自室にいたはずだぞ」
まるで理解できない現象。
夢でも見てるのかと疑う。
痛みはあるので夢ではないことは確かだろう。
「くそっ」
つい口癖になってる叱責が口から漏れ出て近くにあった木箱を蹴り飛ばす。
その一蹴だけであっけなく木箱は粉砕する。
「あん?」
思わず驚きながら自分の足を見た。
「――ってなんだこの格好!?」
足先は何かのプレートアーマーで覆われており胸元部分も確認すれば同様の着飾っていた。
「『KNIGHTOFSEVEN』の服装まんまじゃねえか」
自分が操作するキャラの恰好に酷似した服装だった。
黒を基調とした漆黒のプレートアーマー装備。
ヘルメット部分はないのゲーム同様。
「まるで理解できない‥‥なんでゲームと同じ格好してんだよ」
腕部分を再度確認する。
変わらないまるで同じ確信づけるほどに。
「――やめなさい! ―――誰と心得て」
「うっせぇぞ!」
「いやぁ!」
奥の方から女性の悲鳴と男の怒声が聞こえ優騎はいぶかしんだ。
「なんだ?」
奥へ奥へ進んで奥広間に出てくる。
店の従業員がたむろするような個所だtったがあまり使われていないのか小汚い印象をだすように辺りには生ごみが捨てられてたり動物の死骸があったりとひどいにおいをさらに充満させていた。
その場所で、きれいな金髪にやせ細ったからだだがしっかりと出るとこ出たモデルの様なグラマーボディーに整った美貌を兼ね備えたまさに美女がそこにいた。
その美女の恰好のドレスはびりびりにやぶけ3人組の男がげひた笑みを浮かべながら取り囲んでいた。
「おい、あんたら何してんだ?」
思わず声をかけてしまう。
優騎はいつもならこんなの見過ごす男だった。
しかし、とりあえず今は誰でもいいから話をかけて落ち着きたい気分だった。
「なんだてめぇ?」
「じゃまするってのかぁ?」
「邪魔? いやいや、ただの通りすがりさ。なぁ、あんたらここがどこだか知ってるか? なんか気づいたらこんな場所にいてさ」
男たち3人がかわいそうな奴を見る目で睨みながら言う。
「酔ってんのかお前?」
「ここがどこって『ローズ大国』じゃねえか」
「狂ってんなぁこいつ」
3人組の男は無視を決め込んで女の方に手を伸ばした。
女は叫んだ。
「ちょっと、そこのあなた見てないで助けなさいよ!」
「助けてもいいが俺に何のメリットもないだろ?」
「なんですって! この私がおっしゃっていますのよ! 助けるべきでしょ!」
「はぁ? あんたが誰か知らねえっての」
「なっ、なっ-!」
男たちは女の体を触りだしドレスをすべてはぎ取った。
女の眼には涙が浮かび上がり男たちに必死に抵抗をし落ちていた鉄パイプを手に取って攻撃を仕掛けるが軽々と男たちにかわされる。
転がって痛む足を抑えながらうずくまる姿を見て優騎は気分が悪くなり嘆息しながら彼女の前に出た。
「ケンカってしたことないんだけどなぁ。殴られるのって痛いだろうしな」
「なにごちゃごちゃ抜かしてんだ! どかねえか!」
「あんたらこそこんなことして犯罪だぞ? わかってんのか?」
「ああん? 犯罪?」
3人組の男がそう言ったときに続けて3人組は大笑いを始めた。
「ははは、ひぃ、ひぃ、あんま笑わすなよ? 今時犯罪なんて‥‥警備隊の目から見られてなきゃ犯罪にはならねぇンだよ」
「警備隊?」
なぜ、警察ではないのかという疑問を持ちながら男の振るった拳が危機迫る。
(あれ? 見える?)
優騎の視界には男の拳がスローに迫るように映り込み軽くスウェーさせ、相手にカウンター気味に拳をくらわす。
男が派手に吹き飛んだ。
腐った生ごみ袋の山に息を静め沈んだ親玉の姿を二人組の男は見て唖然。
「な、な」
「兄貴にてめぇなにしやがんだ!」
「ちょっと待てって!」
男の蹴りは容赦なく放たれたがこれもまた時の流れがゆっくりと移りこみ足をつかんで金手に容赦なく拳を入れた。
「ぐぉお」
男はうずくまって泡を吹いて白目をむく。
「な、なんだよおまえぇえええ!」
最後の男の拳も同様に見えるために優騎は容赦なく後ろの彼女の手を引いてその場から逃れた。
男はそのまま前のめりになりながらバランスを崩し地面を転がった。
「うぐぐ」
「なんだこれは一体?」
自分自身の両手の五指を握ったり開いたりとしながら確かめる。
変わったような様子はない体にいぶかしむ。
ふと背後を振り返る。
そこには自分の姿が映り込んだ。
鏡には顔や体はいつもの姿で映ってるが服装は至って違う姿が映っていた。
『『KNIGHTOFSEVEN』』の自分の操作プレイヤーの恰好。それから――
「うそだろ‥‥」
自分の目を疑う光景が映る。
頭上に映り込む「ユウキ」なる名称文字とパラメーター。
ユウキ Holy Knight Lv.1
攻撃 10
防御 10
対魔法 10
対物 10
体力 10
器用さ 20
速さ 10
才能 20000
スキル 天武の才能
才能だけが特化した不思議なパラメーター表示が鏡に映り込んでるのが現実感がなく茫然。
その間に容赦なく男が起き上がり拳を振りかざしてくる。
優騎は拳を見切って素早い蹴りを放って男を蹴り飛ばす。
男はまだ意識があり起き上がりそうだ。
女をひきつれて駆け出し優騎は聞いた。
「なぁ、あんた俺の名前がわかるか!」
「はぁ? 見ず知らずの下等な一介騎士の名などワタクシがわかるわけありませんでしょう! ワタクシとあなたは初めて会ったのですわよ!」
このことから優騎は女にはあのパラメーターが見えていないことを悟る。
しかも、自分の頭上を今見てもパラメーターは見えない。
「なんだこれ? まさか、鏡でしか見えないって言うのか?」
「先ほどから何一人でおっしゃっていますの?」
「あ、いや」
「こらぁ待ちやがれええ! 兄貴たちの敵とってやるぅう!」
街中に出るのは危険だと悟り優騎は男の方に向かいあう形でたった。
そして、男へ向かい駆け出す。
「なっ!」
男もまさかの行動に仰天する。
優騎は容赦なく突撃の拳を男の腹へとめり込ませた。
吐血をしながら吹き飛んだ男は木箱を粉砕し倒れ伏した。
「やりすぎたか?」
背後からにじり寄ってくる足音が聞こえ優騎は振り返った。
「あなた何者ですの?」
「あん? 人に名前を聞くより先に自分から名乗れよ」
優騎は憤慨した気分で女に聞いてしまう。
女もまた憤慨した気分で態度を示し足を容赦なく踏みつけた。
「なんという口のきき方ですの! ワタクシはここ『ローズ大国』第1王女リリア・ローズですわよ!」
「いってぇな! なにしやがんだこのくそ女! つーか、王女だぁあ? 冗談を言うんじゃねえ頭いかれてんのか」
「おかしいのはあなたですわ!
先ほどからまるでゲームの様な話ばかりや体験を疑似体験してる。
「あなたお名前は?」
「軌条優騎」
つい平然と名乗ってしまう流れになったが優騎はすぐに頭を振った。
「そうじゃない! あんたここがどこか知ってるか?」
「何を言ってますのあなた? ここは『ローズ大国』ですわよ」
「そのさっきからいう『ローズ大国』ってどこの国の名だよ? 世界にそんな国名ないだろ?」
「なっ! あなた何たる暴言をおっしゃいますの!」
助けた恩師に対する暴行。
あちこち蹴るや殴るの暴行を受けながらも優騎は至って平気。
逆に彼女が手足を抑えうずくまる。
「おい、だいじょうぶか?」
「この屈辱忘れませんわ」
「いやいや、自分で行ったことだろ‥‥まぁ、いいや。本当にここはどこか教えろって。『ローズ大国』とか電波発言はいいからさ」
「でんぱぁ? 何ですのそれ?」
「はぁ?」
こっちのほうが反応に困るような返しをされる。
困惑気味になりながらいると――
「あなたどこに住んでいらっしゃいますの?」
「あ、俺は東京だが‥‥」
「とうきょう? どこですのそれ?」
「はぁあ? いやいや、日本の東京だよ」
「??」
まるで知らないような様子に自分の今いる場所に更なる不安がよぎった。
ゲームのような体験。彼女の言う国の名前。ゲーム世界のような路地道である。これはある種の小説やアニメ、物語の王道的展開のような挙動を思い浮かべる。
「まさか‥‥な」
街中に駆け出す。
優騎は固まった。
あたりは人が往来する街道。
いろんな店が軒を連ねている。
西洋チックな町並みとそして左側の上空に目線を移す。
「な、なんじゃあありゃぁあああ!」
そこには大きくそびえ立つ城があった。
そして、背後から彼女が一言告げる。
「あなたにはこのワタクシを助けたお礼を申し上げたいと思いますわ。一度城へおいでなさいな」
「あ、あはは」
優騎は自覚した。
ここは自分の知らない世界だと――そう、異世界なのだと。