中節 騎馬隊のリッソルト村乱入 改稿版
ローズ大国騎馬隊は、ローズ大国王女、リリア・ローズを先頭にし、守るような形で彼女に付き従いある村の地点までやってくる。
ローズ王女の命令でユウキを連れ戻すために足取りを追いついたのがこの村――リッソルト村だった。
「さあ、吐け! ここに彼は来ましたねっ!」
リッソルト村の村長、ムゲンの首筋にキラリと光る剣の刀身を突きつけアリシアは威嚇をした。
村の連中は突然の騎馬隊の押し寄せに怯えきって母屋のような家の中に身を隠していた。
――ムゲンはユウキが王族から逃げてるものだと考えた。
ユウキの雰囲気や行っていたことから推測をして結論づき思わずこう言う。
「男などきとらん。この村には長いこと客人はきとらん。大国の騎士様には悪いがお引き取り願ってもらおう。皆が怯えきっとるんじゃけ」
アリシアは村長の表情を伺い、目を細める。
明らかにおかしいと感じる。
彼の足取りは確かにここで途絶えている。
「嘘をつくとためになりませんよ。この村を焼き払われたいのですか?」
「っ! 本当じゃ。騎士のような男などらんわい」
「騎士? 私は名と性別を述べただけですがどうして彼の身なりをご存知なんでしょうか?」
アリシアの刀身が徐々に首筋へ食い込み始めていく。
「アリシア、そこをどいて下さる?」
馬から降り立ったリリアがアリシアの下まで歩み寄り村長の首根っこを掴み上げて腹を蹴り上げる。
「ぐふっ!」
これには村人全員が興ざめをした。
「私は気が短いんですの。彼の居場所を喋らないのなら村人を皆殺しですわよ」
さすがのこれにはアリシアも心を痛めたが一介の騎士が王女に口ごたえなどあってはならない。
しかし――
「王女殿下、話を挟むようで悪いですがその……村長は本当に知らないのでは? ですから過剰な殺生はやめるべきではないかと思いますが」
それは思わぬところからの発言だった。一人の女か男かわからぬ容姿をした小顔で銀髪の人物。性別は女性であり第5聖騎士隊隊長という聖騎士の中では一番下っ端の隊長である、クリュルッハ・エーベルハッツは平然と老人を庇う優しい美女のごとく王女に異論を唱えた。
「クリュルッハ、あなたは私の考えに異論する気ですの?」
「異論ではないです。これは答えです。もしかしたら、私の部下であるキジョウ・ユウキは行き先を伝えてはいないのではないかという推測にすぎません。彼のような男がそうやすやすとあったばかりの老人に自らの行き先を明かすと思いますでしょうか? たぶん、立ち寄って宿を借りた程度で行き先だけは伝えず去ったというふうに考えるべきではないのですか?」
騎士たち一同は怖いもの知らずだと受け取った。
リリア・ローズは国の民に関しては冷酷ではないがそれ以外の市民や身内の騎士から臣下に至るまで冷酷であるというのは騎士たち中では周知の事実。
その冷酷なリリア王女殿下へ異論は死を意味するも同義だった。
「クリュルッハ、あなたの考え確かにまかり通りますわね。どうにも彼は自分を語りたがらないような性格も兼ね備えてましたし」
リリアのその言葉はユウキは一生懸命伝えていた出身地を誤解してごまかしてると捉えたものであった。
むろん、この場にいる全員もそう考えていた。
クリュルッハの言葉を元に王女は馬に乗って「たしか近くに遺跡がありましたわ。ここから先の足取りは多分そちらですわね。行きますわよ」と進軍のアイズを促した。
じっとりとした汗ばむ拳を握っていたことに気づいたアリシアはその拳を解いてクリュルッハをみた。
彼女は一番この部隊の中で弱い。そして、逃亡者たる彼も弱くあり弱きものは弱きものを理解する。だからこそ自分に当てはめ熟知してる考えたのだろう。
それだからこそ、彼女の発言が大きく効いたのだろう。
「うまくいったか」
一息を付きながら王女の後に付いてく彼女を見てアリシアは少し悔しい思いをした。
王女の近衛聖騎士として王女の蛮行も忠告したり教えを諭したりするのは自分の役目だったはずが彼女に取られてしまったのだ。
悔しくて仕方ない。
「くっ! 私は未熟ですね」
馬に乗り、そのまま遺跡へと向かいだした。
その後ろ姿をムゲンはユウキを心配する面持ちで見送った。
「なあ、姉貴……なにかんがえてるんふぁ?」
「別に何も」
クリュルッハの背後からはユウキと戦った経歴を持つ男ムスフが質問してくる。
彼女はその『弟』の言葉に対してそっけなくあしらう。
「少々心配なだけ。あの男は私が懲らしめるまで死なれちゃっ困るだけ」
だが、その心配は杞憂でしかないことを彼女らが知ったのはのちの話であるがそれはまた別のおはなし。




