バルハ遺跡 前編 改稿版
2部構成です
かっこう付けた言い方をして馬を借りて目的のバルハ遺跡まで来た。
「ここが」
「そうでっせ。ここがバルハ遺跡だよ。ユウキの兄ちゃん」
村人の一人、優騎を冷やかしてたあのドウゾウと言われていた人物が案内人に指名されここバルハ遺跡までやってきた。
他にもドウゾウに付き従い、2、3人動向をしていた。
その一人には村長の娘のイーシアもいた。
「で、どないするんさね」
「とりあえず、彼女の妹を見つけてそのあと目的のブツを回収するって感じだな」
「それでいいのさね?」
「人でなしにはなりたくないからな、サクヤも問題なくつき従うみたいだしな」
傍らのサクヤの反応を伺うようにみてから彼女も問題なしという肯定の表情で頷く。
恩義を感じてる優騎は順番を的確に述べたことにサクヤの了承をもらって、遺跡に足を踏み入れた。
遺跡内部は、鍾乳洞のようであり、鉱山の内部というようなトンネル雰囲気もあった。
壁には鋼鉄の黒い鉄板パネルが敷き詰められてたり、場所によっては岩盤で敷き詰められた壁という構造でもあった。
この暗がりのためにドウゾウが松明を手に先導していく形となっている。
「ん?」
優騎は足を止めた。
足音が複数、奥の方からわずかに聞こえた気がした。
「どうしたさね?」
同行者が優騎が立ち止まったことで訝しみ視線を集中して浴びせてくる。
「今、足音が聞こえなかったか?」
「ああ、確実に聞こえたな。数は5人だな」
「わしは聞こえんかったさね」
エゲムに続いてリッソルト村メンバーは首を振って聞こえなかったという感じだった。サクヤと優騎のみに聞こえたというのがちょっと不安な要素ではあったがそれは戦闘力の意味合いにつながるのか。
(にしたっておかしい)
絶対に聞こえたはずなのにという確信があるのにそのエゲムやリッソルト村勢の否定が否めず、優騎は先頭で進行してるドウゾウに並び剣に手をかけた。続くようにサクヤも同じように並び剣に手を添える。
「おいおい、ユウキの兄ちゃんに聖騎士の姉ちゃん、警戒しすぎだぜ。それにそんな剣でモンスターを倒せるのかユウキの兄ちゃん?」
「いや、モンスターじゃない」
サクヤが即座にドウゾウの意見を一蹴する。
優騎は見た。
奥から飛来してくる物体を。
「みなしゃがめ!」
サクヤの鼓舞する声に一斉にその場にいる者たちが頭を下げた。
ゲームによって身につけた空間把握の能力が役に立ったと優騎は感じる。
投擲物をサクヤが剣で叩き落とす。
「矢?」
弓矢の矢尻を叩きおったらしく、足元に矢が落ちていた。
「おいおい、俺ら以外にも侵入者がいたのかよ。ここはだちいりきんじだぜ」
しゃがれた声が聞こえ、がちゃがちゃと金属をこすって揺らす音が近づいて来る。次第に奥にほんわかと揺れる光が来る。
光の正体は現れた数人の男が手に持つ松明の火。
顔が傷だらけで鋼鉄の鎧を全身装備した甲冑の男。
顔が傷だらけとわかるのは頭部の鎧のみ装着されていないからだ。
「盗賊ネ」
イーシアが短刀を引き抜き構えた。
それにつづけてドウゾウと他二名の部族も引き抜く。
エゲムは戦闘不向きなので後退していく。
実際、優騎もこの世界に来て妙な戦闘感覚が芽生えただけの戦闘初心者。
でも、戦えないことはない。
仲間にはもう一人戦闘経験者のサクヤがいる。心強い仲間がいれば安心できる。
だが、サクヤの表情が芳しくなかった。
「彼らは盗賊ではない、聖騎士だ」
サクヤはそうイーシアの言葉の間違いを指摘するようにして毒づくようにそう吐き捨てた。
「は?」
優騎は思わずゲーム脳で目の前の敵と戦う準備万端の態勢でいたのが一気になえてく感覚に襲われていく。
「おいおいこりゃおどろいだ。ローズ大国の聖騎士がいらっしゃる」
徐々に優騎らがいる場所も彼らの松明の火で照らされ出し視界が開け始めた。
もともと一つの区画のみしか照らされていなかったこちら側の松明がぐわっと力を増したかのように明かりの範囲を引き延ばされた。
それもこの場には松明が密集したのだから当たり前だろう。
「おいらは『グランド国』騎士団が一人ブランド・バッセさまだ、そっちはなにもんだ」
ご丁寧に自己紹介をしてくれた。
その背後に数人の男がまだ控えている。
数は圧倒的にあちらが有利。
騎士というのもあながち嘘ではないようす。
この数は正しく団体だ。
しかも、甲冑につけ何かの紋章は国の紋章だろう。
「グランド国!? なんで、超一流の貴族国家がこんな辺境の遺跡に用があるんさね」
エゲムが優騎には驚く要素がわからないがかなり驚いていた。
大してサクヤは「やはりかっ」と苦い思いをしたかのように顔をひきつらせている。
「教えらんないな。俺たちは今からちょうど帰るところなんだ。例のブツも回収できたしな。それに妙な拾いもんもしたし。さっきはおどろいたぜ。マジでこんなベッピンさんは貴族様に売りつければいい金儲けになる」
集団の騎士団は全員男だったが一人だけ女性がいた。
それも捕虜という感じで首輪をつけられた、傷だらけの褐色肌の美少女。
「サシャ!」
イーシアが飛び出した。
その行動に虚をつかれた優騎は動けず、彼女をみすみす行かせてしまった。
(まずいっ!)
伸ばした腕は空をさき、イーシアは目の前で騎士に切りつけられそうになっている。
「やめろぉぉぉおお!」
頭痛が走った。
視界がまた例のごとくスローになっていく。
目の前で騎士の男、ブランドの剣はイーシアに迫っている。
優騎は足を踏みこみ、ブランドの剣を引き抜いた剣で食い止めイーシアを抱き飛び退いた。
視界はもどって、ブランドの剣は地面を叩くだけだった。
「っ!?」
ブランドが目を大きく見開き、優騎を見据えた。
だが、ブランドの背後からの攻撃の注意がなく、その攻撃が射し迫った。
しまったと思い目をつぶる。
矢に射抜かれると思われた体に痛みはなく目を開ければサクヤが悠然と立ちこちらの身を守ってくれていた。
「なにをしだ男? それに、貴様も聖騎士とでその力量ふづうの聖騎士じゃないな」
そんなブランドの言葉を無視し優騎は胸に抱いたイーシアに声をかける。
「大丈夫?」
「え? え?」
イーシアも――いや、この場にいる全員がブランドと同じ目をしていた。
確実にイーシアが切られたように見えるはずだったが彼女は助かっていた。
それもかなり遠距離にいたはずの男が抱き上げて助けに入っている。
「ユウキ殿はやはり面白い」
ただ、サクヤだけは薄く笑みを浮かべ優騎のそばに立ち堂々たる宣告をする。
「女を容赦なく傷つけるのがグランド王国の騎士のする行いとは下劣極まりないな」
土埃を払いながらサクヤは相手を威嚇する。
続けて、優騎も便乗するようにして牙をむいた。
「イーシアの妹を返せ。俺はその子を救出するよう依頼されてんだ」
「そんなごだぁどうでもいいんだ! 男さっきを何をしだ! 答えろ!」
「それこそどうでもいい話だ。彼女を解放しろと言ってるんだ」
鋒を向け、構える。
「ちっ! まあいいさ。てめぇらが何もんだろうがなぁそんなボロっちい剣でぇおいらの剣を食い止めるっでぇがァ。なめるんでねぇ。女だってこの数じゃたちうちでぎっこねぇはずだぁ」
「たかが、5人で威張るな」
「ぐぐっ」
ブランドの部下が心配そうに「ボス、なにかやつらはやばいですよ。傭兵みたいですが普通の傭兵とは違うような‥‥それに、聖騎士の方はかなりのツワモノですよ。付け加えると、男の方は傭兵なはずなのになぜか騎士みたいな格好もしてますよね?」と忠告するように話かけていた。
「うっざい。だまっでるんだ。そこの二人名はなんでいうだ?」
イーシアを下がらせ優騎は一度言ってみたかったセリフを吐いた。
「軌条優騎。最強のゲーマーだよ」
「私は貴様らのような下劣な輩ない名乗る名前などない:
「キジョウユウキ? ゲーマー? わけわからんことを述べた上に女はな眼腐りやがっでんなぁ! おまえらぶきをぬげぇ!」
敵とみなされた。
それもそのはず。彼らは自分らの捕獲材料を奪われようとしてるんだ。
しかし、こちらもその捕獲材料を取り戻さねばならない。
材料、いな彼女を。
「てめぇにはこのさっき捕獲した宝剣『アイスグラシエル』で相手をしてやるだァ」
男は腰の鞘から、優騎の目的だった剣を引き抜いた。
そう、あの剣――ロングブレード型の鋼のような刀身と水色メッキの柄に握り部分の装飾をほこされたアイスグラシエル。
「あれが?」
おもわず、一言声が漏れた。
(なんだ? あれが宝剣? いやいや、宝剣にしてはちゃっちすぎないか?)
だが、ブランドの顔は悠然とドヤ顔で剣を掲げている。
明らかにほんものなのだろうか。
妙な違和感を覚えながら優騎は踏み込む。
「先手必勝だ!」
わからないまでも、先手で攻撃を優騎が打ち込む。
その間にサクヤが後方から接近する他4人の相手を一人で立ち回る剣戟を披露する。
優騎は横薙ぎに剣を振るいアイスグラシエル? に幾度も打ち込むもブランドが悠然と防衛し喜々とする。
「錆び付いた剣でどうにかなるわきゃァねえだろぉ!」
ピシリとヒビが入る。
ブランドがアイスグラシエル? を大きく振るい、優騎を横殴りに吹き飛ばした。
壁に叩きつけられ痛みで身動きがとれない。
「ユウキっ!」
「よそ見はいけませんねぇ」
サクヤも追いつめられるように両方向からグランド王国騎士勢の攻撃を浴びるがうまくこちらは優勢に立ちまわり剣を交差しあう。
優騎が吹き飛ばされたことで手空きになったブランドへドウゾウが後に続けるように向かい牙をむいて襲いかかった。
短刀ではやはり長剣に叶うはずもなく逆に殴り飛ばされた。
「あはは、よえぇな。さっきのはまぐれか?」
ブランドに続けてグランド国の騎士全員がサクヤと交戦中にかかわらず笑いを上げる。
「お?」
イーシアが立ち上がって短刀を振り上げたがその腕を容赦なく掴まれる。
「ひゅー、いい上玉じゃねえが姉さんもいいねぇ」
げひた笑いがこだまする。
壁に叩きつけられたことがない優騎は痛みでまだ起き上がれない。
(くそっ! 動けえ!)
歯を食いしばって立とうとした直後――
矢が大腿部に刺さった。
グランド国の騎士の一人、サクヤと戦っていないイーシアの妹を捕縛し背負ってる一人が矢を放ち優騎の足を射抜いた。
「ぐがぁあああ!」
「あはは! よーくやった。では、この子も持ちか――」
「させないさね!」
ブランドがイーシアを背負い逃走しようとした通路の先にエゲムが立ちはだかった。
ブランドは気が滅入らされたように瞳が鋭く険悪な雰囲気を漂わせていく。
「おい、どけよじいさん。丸腰でおいらたちをとめられるとおもってんじゃねえだろな?」
「いたいけな少女を乱暴に捕縛していくのがグランド王国の騎士のすることさね? 貴族はそこまで落ちぶれたのさね?」
ブランドは背後に居る部下と目線を合わせ瞬きをして笑い声を上げた。
「おいらたちは雇われ騎士であって貴族なわきゃァねえだ。おいらたちは金がもらえるならなんだってするダァ。この上玉たちは手土産なだけだぁ。こいつらを売りつけて金を儲けるんだァ。だから貴族とか関係ねえだ」
「それでも、騎士のすることさ――」
「だからうるせえって言ってんだよ!」
「よ、よせえええ!」
エゲムに容赦なく振り下ろされた剣と飛び散る血。
そして、イーシアの叫び声。
サクヤも悲痛に喉をひきつるような声にもならない叫びをあげた。
優騎は絶望に打ちひしがれた。
「くそぉおおおおお!」
この時ばかりはゲームであってほしいと願った。
夢であってほしいと願った。
そうすれば最強で強いフル装備であったのではないかと感じる。
でも、現実はそうじゃない。
ボロっちい装備で1からで、わからない異世界に飛ばされて――
這いずってエゲムのそばに歩み寄った。
優しかったあのエゲムの表情は瞳孔が開き、白く濁った目で虚空を見ていた。
死んでいた。
即死だった。
「やろうどもぉ。女をしとめたらさっさとごい。コイツにももう要はねえだ」
ブランドらは横を通り抜け自国に帰ろうと洞窟の出口へ向かっていった。
「よくもよくもぉお!」
力を踏ん張って立ち上がり去っていこうとするブランドの背へ飛びかかる。
だが、射撃専門の例のイーシアの妹を背負った騎士の矢を腹部に受け、地べたに這いつくばるはめになる。
「おうおう、おもしろいだぁ。やっぱし本気出してねえだ。でも、もう相手する気起きねえだ」
「ぐぞぉおお!」
あの日々が蘇る。
落ちぶれたろくでもない日常。
(結局俺は最底辺やろうかよ‥‥)
悔しくって涙がこぼれ落ちた。
――ドクン。
心臓が脈打つような感覚が突然剣から感じた。
剣を見る。刀身が刃こぼれしていかにも錆びたダメな剣。
しかし、よく見てみた。
剣は二重構造になっていた。
サビの下に綺麗な赤の刀身が見える。
(これって――)
ブランドが部下に優騎の抹殺命令を下し、剣が振り下ろされた直後例の頭痛が起きた。
サクヤも妙な空気を感じ優騎の方を向く。
「ユウキ、その力は何を――」
「剣よ足場を砕けえええ!」
優騎は最後の賭けに出た。
バランスを調整するために相手の意表を突くための行動だった。
剣を足場に叩きつけたとたん膨大な火炎の渦が巻き起こり足場が崩壊した。
同時にその場の者たちの悲鳴が巻き起こった。
優騎の力が第2段階目解放です。
その力とは一体――
次回は俺TUEEE回です。




