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リッソルト村 前編 改稿版 

 リリア・ローズ、ローズ大国第一王女は騎馬隊の大軍勢を引き連れ、山道を上っていた。

 それはある男を探すための行動だった。

「まったくもってこんな事態になるとは予想外でしたわね」

「あのようなやからもう見捨てましょう。王女殿下の手を煩わせる輩など聖騎士にふさわしくありません」

「アリシア、それは私に対して侮辱ですの? 彼を選んだのはわたくしですのよ。私の決定はなにがあっても覆りはしませんわ。何度も言ってますでしょう? いい加減聞き分けなさい」

「‥‥‥‥」

 アリシア・ミューテシア、ローズ大国第1聖騎士団の団長たる彼女の忠言を一切聞かず彼女は進行を止めなかった。

 ここに来る前の伝聞でもそうだったが彼女の中では彼を手に入れたいよッ優が深すぎる。

 アリシアにはまるでわからなかった。

 彼は確かになにか素質は見いだせる要素はあるかもしれないがでも、彼並みの素質を持った人材ならいくらでもいる。

 なのに、なぜ王女がここまで彼に固執するのか。

(まさか、恋を抱いてるのですかっ!? 王女殿下にかぎってはありえませんね。何を考えてるのでしょうか)

「それに、サクヤも連れ戻しに行かなくてはなりませんわ」

「そ、それは‥‥」

 キジョウユウキ、彼がいなくなったと同時にいなくなった国の主要戦力たる騎士、第2聖騎士団団長、サクヤ・イカヤ。今回のもう1つの目的としては彼女を連れ戻すことだがアリシアはこの規模の出向にはやはり異議を唱える。

「ですが、このような数で行く意味はありません! どうか、今一度引き戻してください! 王女殿下がいなくなったローズ大国はどうなるかわかったものではありません!」

「だったら、あなただけ戻ってローズ大国を任せますわ」

「なっ! それでは王女殿下は誰が守るのですか!」

「第5聖騎士団に任せますわ。それに、第2聖騎士団もここにはいますわ。あとですわね、城には第4聖騎士団がいるから安心しなさい」

「第4など私ども聖騎士団の中では予備軍勢勢力に変りはありません! 何をおっしゃるんですか!」

「聞きわけがないのは好きませんわ」

 アリシアは思考の中で自問自答を繰り返してると不意に視線の先で黒い人影の集団が倒れてるのが見えた。

「あれは‥‥」

「王女殿下お下がりください。盗賊です」

 アリシアは王女よりも先頭に馬を出させる。

 王女の馬が嘶き、後退する。

 アリシアは馬を徐々に進行させお付きの聖騎士二人従えて行動をする。

 ひどい有様だった。

 返り討ちにでもあったのだろう。

 男たちの体は切り裂かれており、うめき声をあげながら各種切り裂かれた箇所を抑えている。

 あたりは血が飛び散っていて血の海さながら。

 特に重傷者だろう両腕がない男はうめき声どころか、妬みの言葉を吐いていた。

「殺してやる殺してやる殺してやる‥‥」

 アリシアはまだ喋れるその重傷者の男に剣を向ける。

 盗賊に憐れみの目など必要はない。

「おい、貴様この辺で漆黒の衣装を身にまとった病弱そうな男を見なかったか?」

 男が明らかに反応を示して顔を上げた。

「なんだ、てめぇ‥‥あの糞‥‥仲間か‥‥俺‥‥腕切り落としたやつの」

 この男の腕を切り落としたのはどうやら彼で間違いないことがわかった。

 それには流石に仰天はした。

 なぜなら、試験ではまるでこの軍隊の盗賊を一人で相手にできる力量など皆無だった。

(気に食わないですね。実力を隠していたんですか。王女殿下が気にかけサクヤがあれほど必死な理由ですか。実にウザったいです)

 男のそばに降り立ち、その胸ぐらをつかみ上げる。

 良く見るとその斬り裂き方はサクヤの物にも似ていた。

「女も一緒だったのか?」

「‥‥女か‥‥‥ぐふ‥‥誰が教えるか」

「どこへ行ったか吐いてください」

「けっ、だれが‥‥」

 そのときだった。

 男の背を剣が突き立った。

「あぎゃぁあああ」

 男が絶叫をあげる。

 アリシアが刺したわけではない。

 刺したのはアリシアのそばにいた白馬に乗った冷酷な瞳を持つ美女。

「王女殿下、下がっていてくださいと」

「時間がかかりすぎですわ。さぁ、吐きなさい。死ぬか吐くかどちらか選びなさい」

「このまま‥‥まっすぐ‥‥隣村に向かった! だから‥‥だから‥‥ころさないでくれええ」

「そうですの。ご苦労様」

「ちょっ! やくそ――」

 剣を背から抜き払ったと思えば今度は男の首を切り払った。

 余りにもあっけなかった男の最後。

 血が噴出し、リリアの白馬に血が掛かる。

「この駄馬、避けることもしませんの! もう、いりませんわ」

 飛び降りて今度は血にまみれた馬の首を切り落とした。

 これがこのリリア王女だ。

 冷酷無慈悲、唯我独尊。

 自分の考え通りにいかないものは全ていらない。

 時に慈悲を見せることはあるがそんなのごくわずか。

(これで、何頭目の馬が殺されたのでしょうか)

 死亡した白馬を見下ろし、また資金が無駄に飛んでくことを神官が悔やむだろうと思いながらアリシアは部隊に残りの盗賊の始末を命じた。

 聴こえてくる絶叫に王女殿下はまるで動揺はしない。

「アリシア、あなたの後ろに乗せてくださる。私の馬は死んでしまいましたわ」

「‥‥はい」

 まるで自分が殺したのではないような言い方で王女殿下の申し出を一介の聖騎士たるアリシアに断る権利はない。

「アリシア聖騎士団長、始末完了しました」

「わかりました。それでは、進軍を開始します」

 王女殿下を後ろに乗せ、盗賊の始末を終えたローズ大国の騎馬隊の軍勢は隣町――リッソルト村に進軍をした。


 ******


 隣町のリッソルト村という場所は平凡な農村だった。

 あたり一面に畑が広がって、まばらに母屋がみえたり、一戸建ての木造の住居が見えた。

「ちょいまつさね」

 エゲムは隣町に到着してそうそう、荷台と優騎を置き去りにして一軒の家の中に入っていく。

 村の中心にポツーンと取り残されたものだからきまずい。

 周りの人々が険悪な目線でこちらを監視してる様子だ。

 サクヤの方をうかがうとサクヤは慣れた様子でにこやかに子供へ手を振っている。

 子供たちはそんなサクヤに無邪気に集まりジャレつきだすさまを眺める。

(ちっ、居心地わるいな)

 子供がひとり近寄ってくる。

「なあなあ、兄ちゃんって冒険者それとも聖騎士?」

 優騎はガキが嫌いである。

 無言で無視を決めてると剣へ手を伸ばし始め―――

「さわんじゃねえ。怪我すんぞ」

「うわすげえ、やっぱこれ本物なんか?」

「本物だけどサビついた剣だよ」

 先の戦闘によって刃こぼれした刀身を鞘から少しちらつかせ子供相手に威圧させる。

 近づかせんがためだったがぎゃくに好奇心を煽ってしまった。

「おおっ! すげえっ」

 あちこちから子供が軍勢で近寄ってきた。

 優騎は冷や汗を垂らしながら片方の口角が思わず釣り上がる。

「剣を振ってみてよ!」

「私にも見せて見せて」

「あ、ぼくにも!」

 無邪気な言葉の急襲攻撃。

 イライラと貧乏ゆすりを始めながらまだなのかとエゲムの入ってった家を見据える。

(くそっー、まだっぽいなこのガキどもどうやってあしらうか)

 こういうちまちまして無邪気に人様の気持ちを考えず近づいてくるからガキは嫌いだった。

「お前ら俺は――」

「みせもんじゃねえ」と言おうとしたところでエゲムが一人の60すぎくらいの藁のような衣装を身にまとった(民族衣装っぽい)老人を引き連れて戻ってきた。

「おう、ユウキ殿、サクヤ殿、子供たちと仲良くなってたみたいで」

「‥‥‥‥」

 何も言えずため息をついてすっと老人に視線を向けた。

「ああ、こちらは――」

「リッソルト村、村長のムゲンと申すもんじゃ。ユウキどの、サクヤどのリッソルト村に歓迎するわい」

 なるほどというその姿に納得する。

 民族衣装のような格好と頭についた王冠のようなものはこの長の印だった。

 なにより、エゲムがわざわざ会いに行ったのも納得だった。

 この場に居座る交渉しにでも行ったのだろう。

「まずはわしの孫が宿舎まで案内させようかいのぉ」

 すると、リッソルト村のムゲン村長の孫らしき、緑色の双眸に端正な顔立ちと綺麗な体付きをした黒髪の褐色系美少女が村長の家から出てくる。

 おもわず見とれてしまうほどの美人。

 しかも、衣装も民族衣装のビキニ系バージョン。

「イーシアいいます。ヨロシク」

 カタコトな口調でイーシアが挨拶をしてくれる。

「では、イーシアあとは頼んだぞ」

 こくりと彼女がうなづき、ユウキたちを少し離れたひとつの母屋に案内してくれた。

 中は藁が敷かれた絨毯。

 まさに民族の住居。

「ここ使う。二人の住まいヨ」

「たすかるさね。では、つかわせていただくさね」

 優騎、サクヤもありがとうという意思表示で頭を下げる。

 すると、イーシアが一瞬こちらに何か言いたそうな目線を感じ取った。

「なにか?」

「な、なんでもナイヨ」

「ん?」

 イーシアは話題を唐突に変えてくる。

「夜歓迎会アルヨ。だから、楽しみにしてオクネ」

 そういいながら彼女は去っていった。

「きがあるんじゃないさね?」

「まさか」

 優騎はしばらく彼女の去っていた方向をじっと見据えていた。


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