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「聞いたよ、びとー。」

 夜になって塔へ行くと、顔を見るなり光輝が言った。

「僕の次の犠牲者に内定したんだってね。」

「…誰から聞いた?」

 びとーが問うと、光輝は苦笑いした。

「沖田さん本人から。」

「…何のお話ですか?」

 風の精霊に問われて、光輝が答える。

「だから見合いだよ。」

「「「見合い?!」」」

 風と雷と水の三精霊の声が重なる。その後、雷の精が遠慮なく爆笑した。

風の精も笑いを堪えている。

 そんな精霊達の反応が益々気に障るらしく、びとーは片手で一升瓶を持ち上げ、

ラッパ呑みした。そして怒鳴る。

「あンのクソオヤジーっ!何、トチ狂ってやがるーっ!」

 酒に強いびとーだが、ビジュアル的には単なる酒乱である。

 光輝が更に苦笑いを深くして続けた。

「僕は、次は玲さんに行くと思ってたんだけどね。

歳は一番下でも仕事に就いてるし、身寄りも無いってことで、

沖田さんが気を回しそうな気がしてね。」

 実は玲を引き入れるに当たって、檸檬に協力して貰い、

沖田には桃が誘拐されそうになった際、身を挺して逃がしてくれた恩人だと話してある。それで、怪我をした身寄りの無い玲に居場所と職を提供することにした、と。

 玲自身も頷いた。

「正直に言って、私もそう思っていました。」

「そうだよなぁ。俺もびとーも定職に就いてないから、

普通なら沖田さんもそんな話は持ってこないだろうと思うよなぁ。」

 瑞輝も首を捻る。

「まさか、びとーに仕事をあてがった上でお見合いをさせるなんていう搦め手で来るとは、考えてもみなかったぜ。」

 頷きながら、玲も口を開く。

「ですが、一応年齢は一番年上ということになっておりますし、

前理事長の息子ということにもなっている訳ですから、

校長も、何としてでもびとーさんを先に、と考えたのでしょう。」

「余計なお世話だーっ!」

 一升瓶片手に益々いきり立つびとー。

重ねて言うが、ビジュアル的には完全なる酔っぱらいである。

ちなみに持っているのは『手取川』だったりする。

補足すれば、同じ『手取川』がもう一本あり、日本酒を好む壮が、

取られないよう死守していた。

 そんなびとーを水の精が嗤った。

「そんなに心配しなくて大丈夫よ。あんたの嫁になりたいなんていう娘はいないから。」

「どういう意味だーっ!」

 脳内爆発中の炎の精は、嫁は来ないと言われると、それもまた気に入らないらしい。

「で、どうする?」

 光輝がみんなを見回した。

「どう考えても、びとーが人間の女性と見合い結婚するなんて、

無理があると思うんだけど。」

「ああ。まず無理だな。」

 頷く瑞輝。

「大体、桃ちゃん付きの精霊な訳だろ?恋愛ならともかく、見合いで嫁さん貰っても、

その嫁さんより桃ちゃんの方がずっと側にいるってのも不自然だし、

かといって、精霊だと理解して貰った上で、というのもおかしい話だ。

その時点で一生仮面夫婦でいることを承知させるってことになるからな。」

「なら俺は桃と婚約することにするっ!それなら文句ねぇだろっ!」

 喚くびとーに、その場にいた全員が呆れた表情になる。

「あのね、びとー。桃ちゃんを恋愛対象だと公言したら、

もうその時点で変質者扱いになると思うよ?」

「このロリコン野郎が!って事になるのは間違いねぇよな。」

「下手したら、学校内出入り禁止になりかねません。」

 男三人に言われて、ガックリと肩を落とすびとー。

「じゃあ、どうしろって言うんだよ?」

 玲が銀縁眼鏡を中指で押し上げながら言った。

「仕事もしない、見合いも嫌だ、というのでは、

沖田校長も納得しては下さらないでしょう。

ですからとりあえず、沖田校長の言う通り、仕事はした方が良いのではないでしょうか?もし、桃ちゃんから離れられない事態が起きたら、

その時は私と光輝さんとで、何か仕事を依頼したという形を取ることにして。

お見合いについては、今すぐに話を持ってくることは無いと思いますし、

いずれ話が出ても、光輝さんのような難しい相手でさえなければ、

断ってしまえば良いことです。」

「大丈夫だってば。断るより前に断られるから。」

 また嗤う水の精にびとーは憮然としている。

 渋い顔をして沈黙する瑞輝に、光輝が問い掛けた。

「どうした、瑞輝?」

「いや。びとーまで職を得たということになると、

益々俺に対する風当たりが強くなりそうだな、と思ってさ。」

「無職だしね。」

「瑞輝さんにも同じ手でこられるかもしれませんよ。

今の内に覚悟を決めておいた方がよろしいかもしれません。」

 玲にまで言われて、瑞輝はガリガリと頭を掻いた。



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