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 翌日。早速、沖田校長が理事長室にやってきた。

「光輝。由美子はどうだ?」

「はぁ。良い方だとは思いますけど…。」

 言葉を濁す光輝に、沖田は少し笑った。

「まぁ、確かに一時間や二時間、会って話したところで、よくは判らないだろうな。

だったら、今度デートにでも誘ってみたらどうだ?間宮君もそう思うだろう?」

 そう言われて、玲も否定しにくく

「確かに女性の方から男性にデートを申し込むのは、かなり勇気がいるかと…。」

とあやふやに答える。

「ですが僕は、殆ど自宅と学校の往復で、女性を連れて行くような場所は知りませんし…。」

 光輝が言うと、沖田も首を捻った。

「確かにな。間宮君はどう思う?」

 また話を振られた玲は、少し考えて言った。

「この学校に来て頂いたら如何です?」

「「学校?」」

 光輝も、そして沖田も驚いた。

「光輝さんにとっては職場になりますが、

光輝さんの奥様になられる方にとっても無縁でいられる場所ではありませんし、

見て頂いて損は無いと思うのですが。」

「おぅ!それもそうだ!」

 乗り気になる沖田。

「光輝が学校を見に来ないかと言っていたと由美子に言っておく。

都合も確かめてくるからな。」

 嬉しそうに沖田は理事長室を後にした。

「…玲さん…。」

 尋ねるような咎めるような光輝の視線に、玲は左手の中指で銀縁眼鏡を押し上げた。

「光輝さん。学校に連れてくるということは、二人きりにならずに済むということです。相手の女性の方がどんな方なのか私には判りませんが、

強引に結婚を望んでくるような方だったとしても、

他人がいる場所ではそれを口にしないでしょう。」

「強引に、というタイプではなかったけれど、

確かに二人きりで長時間一緒にいるのは気が重いな。」

 光輝は頷いた。

「それに、学校を見せることで、光輝さん本人だけではなく、

この学校にも関わるという面を見せて躊躇させるという意味もあります。

非道いことだと判っていて敢えて言わせて頂きますが、

障害を持つ子供達に免疫の無い人にとっては、この学校は大変なところに見える筈です。もし結婚して、この学校の仕事も手伝わなければならなくなったら、

ということを女性に考えさせるのも、無駄では無いと思います。」

 確かに障害を持つ者への偏見は、皆、無いように見せかけているだけで、

根の深いものがある。簡単には拭えないのが現実だ。

「たったあれだけの時間で、よくそこまで考えられたね。やっぱり凄いな、玲さんは。」

 感心する光輝に、何故か玲本人ではなく、

玲のスーツの胸ポケットから顔を出した雷の精が自慢気に言った。

「そうだろ?!凄いんだぜ、玲は!!」



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