14:ミナとの再会
治療院の前に立つと、いつものように小さな看板が風に揺れている。
その横に、少し古びた木製の扉が開いていて、中からは香薬の匂いが漏れてきた。
少し考えた後、俺は足を踏み入れる。
昨日も来たが、今度はミナの様子を見に来た。
治療師に言われた通り、寝かされているはずのベッドの上で、ミナはまだ意識を取り戻したばかりのようだった。
薄く光るランプの灯りが、彼女の顔を照らしている。
目を開けた瞬間、少し驚いたように瞳が大きく見開かれる。
「……あれ?」
眠気がまだ残っているのか、はっきりしない声で呟く。
「掃除夫さん」
その言葉を聞いて、俺は少し息を吐き、足元で無意識に力を抜いた。
「まだ寝てていいんだぞ。動かないほうがいい」
「でも……」
ミナは小さく首を振り、目の前にいる俺を見上げる。
そして、少し恥ずかしそうに小さく笑った。
「また、ダンジョン行くんですか?」
その問いに、少し考えてから、俺は軽く肩をすくめて言った。
「行かなきゃ、給金が出ないからな」
ミナは何も言わずに、少し黙っていた。
それから、しばらくして、ぽつりと呟くように言った。
「……私も、まだやめられません」
その言葉の奥に、何か複雑な思いが隠れているように感じた。
彼女の目の奥には、少しだけ疲れた色が浮かんでいる。
その瞬間、俺はなんとなく、その理由が見えてきた気がした。
家族のため、仕送りのため――
大体そんな理由だろう。
ただのポーターとして、命を削っているわけじゃない。彼女にも、守るべきものがある。
「家族、大事だもんな」
俺は小さく呟くと、ミナは無言で頷いた。
「……まあ、無理せずに」
何を言おうとしているのか、自分でも分からなくなった。
だが、ミナが少しだけ笑って、頷いたので、それで十分だと思った。
「今は、まず治療を受けなきゃな」
ベッドのそばでそう言いながら、俺は静かに目を落とした。
ミナがゆっくりと目を閉じると、心地よい静けさが部屋を包んだ。
彼女の手が、ベッドの上で少しだけ動いた。
俺はその手に触れることなく、ただ静かに部屋を後にした。




