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第1章 第8話:知識の準備と第一界への突入

都市への帰還と不穏な噂

古竜バルギオンの迷宮での激戦から数日後、カイト、アリア、ルークの三人は、都市エルドニアのギルド本部に戻っていた。カイトが起動した封印のおかげで、世界の魔力ノイズは一時的に鎮静化し、都市には微かな安堵感が広がっていた。


ギルドマスターのロレンツォは、カイトの報告を受け、その知識の正確さに頭を下げた。


「君の知識は、この世界の法則を根底から覆すものだった。我々は、この世界が本当に**『崩壊寸前のデータ』であることを受け入れざるを得ない。ギルドは全力を挙げて、君たちの『修復』**作業を支援しよう」


しかし、ロレンツォは険しい表情で、一つの不穏な情報を伝えた。


「ただし、ドミニオンの動きが活発化している。特に、『元NPC』だった者たちが、自発的にドミニオンに加わっているという噂が立っている。彼らは皆、過去にプレイヤーに酷使され、この世界に深い絶望を抱いている者たちだ」


カイトは、ゼオンが言及したカインの言葉を思い出した。彼らにとって、カイトの**「修復」は、「呪いの永続化」に他ならない。ゼオンの「現実への帰還」という切実な願いは、絶望した元NPCたちにとっては、唯一の「解放」**に見えているのだ。


「ゼオンは、俺の**『知識』に対抗するために、彼らの『絶望』を利用している」カイトは静かに分析した。「俺たちの旅は、世界の『秩序』と、彼らの『解放』**という、二つの正義の衝突になる」


知識の再定義とルークの贈り物

カイトは、ギルドの支援を受けて次の旅の準備を進めた。彼の知識は、次の目的地である**『忘却の森』が、「歴史のデータ」**を隔離した場所であることを示していた。

ルークは、自身の研究室で、カイトの貧弱なレベル1の身体を補うための新たなデバイスを完成させた。


「カイトさん、これが完成品です。私の**『知力A』ならば世界のデータコアにアクセスできるほどの膨大な処理能力を持っています。貴方のレベル1の身体では、その処理能力に見合うだけの魔力**を生成できません」


ルークが差し出したのは、銀色のルーン文字が刻まれた小型のブレスレットだった。


「これは、あなたの脳内の知識データを、周囲の魔力と強制的にリンクさせ、一時的にあなたのMPを増幅させるデバイスです。これで、あなたはレベル1でありながら、高レベルのルーン魔法を行使できる」


カイトは、そのデバイスを装着し、ルークの知性に感謝した。

「ありがとう、ルーク。これで、俺は最低限の**『戦力』を得た。だが、俺はもう、この知識を『世界のシナリオ』**として使うことはしない」


カイトは、自らの知識を再定義した。


「俺の知識は、『未来の予測』ではない。世界の崩壊を防ぐための『過去の経験則』だ。俺が頼るべきは、この知識の『完璧さ』ではなく、『意志を持つ仲間たち』だ。この知識を灯火として使い、仲間たちの意志が選ぶ道を照らす」


アリアの信頼と旅立ちの決意

旅立ちの直前、アリアはカイトを呼び出した。


「カイト。あなたが**『知識の継承者』だとしても、私たちが『データ』**だったとしても、私はあなたを信じる」


アリアは、カイトの顔を見て言った。「あのゼオンの言葉を聞いたでしょう? 彼は**『現実への帰還』という、あなたと同じ目的を抱いている。もし、あなたがその目的のために『データ通り』**に冷酷な選択を迫られたら、どうするの?」


カイトは、迷宮での葛藤を思い出した。ゼオンの憎しみと、カインの絶望。


「俺は、知識に従って**『最善の選択肢』を選ぶ。だが、その選択が、君たち意志を持つ者の『未来』を否定するなら、俺は知識を捨てる**。この世界を、ゲームの結末にはさせない。俺は、**『現実の未来』**を創る」


アリアは、満足したように笑った。「それでいい。私は、あなたの剣だ。あなたが知識を捨てた時、その意志を護るために、私が剣を振るう」


カイト、アリア、ルーク。知識、意志、知恵の三位一体となったパーティは、第二の試練の塔の前へと集結した。塔のワープゲートは、すでに起動している。その先は、第一界『忘却の森』。濃密な魔力と、カイトの知識にはない未知のバグが待ち受ける、世界の深淵だ。


カイトは、レベル1の身体を奮い立たせ、ルークのブレスレットが放つ微かな魔力の輝きを頼りに、ワープゲートを見つめた。


「行くぞ、みんな。ここから、俺たちの**『世界修復』の旅が始まる。この世界の『過去の真実』**が、俺たちの知識を試すだろう」


三人は、世界の法則が大きく歪む**『忘却の森』**へと、深く踏み込んでいった。

【第1章:始まりの知識と二つの鍵 完】

【第2章:忘却の森と意志の覚醒へ続く】

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