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第1章 第7話:塔の真実とシナリオの終わり

知識の継承者の役割

カイトたちは、ゼオンの追跡を振り切り、ワープゲートの先に広がっていた第二の試練の塔の前で息を整えていた。周囲はすでに、次の隔離世界である**『忘却の森』**の濃密な魔力に覆われ始めている。

ルークは、起動したばかりの封印から採取した魔力コードを解析しながら、興奮を隠せない。


「信じられない。カイトさん、あなたが起動した封印には、開発者の**『最終メッセージ』が込められていました。この封印は、世界の崩壊を食い止める**だけでなく、次のフェーズへ進むための準備でもあったんです」


「最終メッセージ?」アリアが尋ねる。


ルークは解析結果を読み上げる。「『真の救世主は、意志を持つ先住民たち。我らの知識は、彼らを導く灯火に過ぎない。知識に支配されず、意志に従い、世界を再構築せよ』……と」


カイトは立ち尽くした。彼がこれまでの自信の根拠としていた**「知識」が、開発者自身によって「灯火に過ぎない」と断言されたのだ。彼はただのプレイヤーではなく、開発者が残した「世界の未来へのマニュアル」を携える『知識の継承者』**として選ばれたに過ぎなかった。


「つまり、俺が持っているのは、『世界の完璧な攻略本』なんかじゃない。この世界をゲームのシナリオ通りにクリアするためじゃなく、世界の崩壊を防ぎ、意志を持つ先住民たちの手に未来を託すための、**『手順書』**だったんだ……」


カイトは、自分の役割が**「世界の主人公」ではなく、「世界の技術顧問」のような立場であることを悟った。彼の旅の目的は、「ゲームをクリアすること」から、「意志ある存在の未来を担保すること」**へと、根本的に変わった。


ゼオンの憎悪とカイトの共感

ルークの解析はさらに続いた。

「そして、このメッセージには、ゼオン様の行動に関する示唆も含まれていました。開発者は、ゼオン様が持つ**『破壊の裏コード』が、世界の『強制リセット』**に必要だと知っていた。だから、あなたとゼオン様、対極の二つの鍵を、この世界に転移させたんです」


アリアが眉をひそめた。「彼を**『道具』**として利用したということ?」


「ゼオンは、その事実に気づいていた。だからこそ、彼は世界を憎み、修復ではなく**『強制ログアウト』に固執した。彼にとって、『救世主』である俺の存在は、開発者に『利用されたくない』**という、彼の切実な願いの邪魔でしかなかったんだ」


カイトの心に、初めてゼオンへの共感が芽生えた。ゼオンの行動は、単なる悪意や破壊衝動ではない。それは、**「ゲームのデータ」としてではなく、「人間」**として、家族の元へ帰りたいと願う、絶望的なまでの意志だったのだ。


「俺は、彼と同じ『現実』を知っている。彼を止めなければならない。だが、彼の**『現実への帰還』という願いも、『データ』**として終わらせてはいけない」


カイトは、知識と感情が混じり合った、複雑な決意を固めた。


旅立ちの覚悟

カイトは、ギルドから同行していた護衛の冒険者たちに、次の塔への入り口の魔力座標を伝え、都市への帰還を指示した。


カイト:「この先に広がる**『忘却の森』は、世界の『歴史』が隔離された世界だ。ここからは、俺の『未来の知識』**だけでは通用しない、過去の真実が俺たちの行く手を阻むだろう」


ルーク:「承知しました。私も、カイトさんの知識と、この世界の法則の**『矛盾点』を突き合わせ、未知のバグに対応します。もう私は、誰かに役割を与えられるNPCではありません。自らの意志で、この世界を救う賢者**です」

アリアは、カイトの肩に手を置いた。「私は、あなたが**『灯火』として示す道を信じる。そして、その灯火が消えそうになった時は、『意志』の炎であなたを護る。私たちは、あなたの『設計図』の通りには動かない。私たちは、この世界を護るための『現実の戦力』**よ」


アリアの言葉は、カイトにとって最も確かな力となった。彼が持つレベル1の貧弱な肉体と、冷たい知識を、仲間たちの熱い意志が覆い、世界を救う**『現実の希望』**へと変えていく。


カイトは、胸元に下げた**『知識の継承者』**の称号を握りしめ、前を見据えた。


「俺たちの旅の目的は、『世界の秩序の再構築』だ。そして、ゼオンの絶望を、**『世界の終わり』ではなく、『新しい現実の始まり』**に変えること。行くぞ。次の隔離世界、忘却の森へ!」


カイトたちの姿は、第二の試練の塔のワープゲートへと吸い込まれていった。背後には、彼らが起動させた第一の封印の静かな輝きだけが残った。

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