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スピンオフ:ドミニオン - 絶望の法則(第三章:裏コードの誕生)


第七節:絶対的な保護の論理

世界がドミニオンによって破壊の論理に支配され始めても、ゼオンの愛の対象はただ一つ、娘のリズだった。彼はリズの安全を護るために、「絶対的な保護の論理」に基づいたセキュリティコードを構築した。


「リズ、パパが作ったこの保護コードがある限り、お前は世界のどんなバグからも護られる。信じてくれ」


ゼオンは、娘の存在データを世界の法則から隔離し、時間巻き戻しの影響を受けない**『隔離座標セーフ・ゾーン』に置いた。これは、彼のシステム警備担当としての知識**と、父としての愛を融合させた、究極の防御論理だった。


シンは、ゼオンのその行動を冷酷に観察していた。「ゼオン、愛は法則ではない。それは感情のバグだ。お前の保護コードは、いずれ世界の絶望的な法則によって破られる」


第八節:リズの崩壊と自己矛盾

ゼオンの保護コードは、一見完璧だった。リズは安全な隔離座標で、世界の破壊や時間巻き戻しから完全に護られていた。


しかし、世界の**『絶望の法則』は、最も愛する者の喪失という結果を絶対的な真実**として求め続けた。


ある日、ゼオンが隔離座標でリズのデータを確認すると、リズの**「笑顔」のデータが崩壊していることに気づいた。そして、「声」のデータ**がノイズに変わる。


「なぜだ! 隔離座標は完璧なはずだ!」


シンは冷たく答えた。「お前の保護コードは、外的な脅威からは護れる。だが、お前自身から護ることはできない」


世界の法則は、リズの存在データではなく、『ゼオンの記憶の中のリズ』を崩壊させ始めたのだ。リズは安全だが、ゼオンはリズとの楽しかった記憶を、時間巻き戻しのたびに欠損し始めた。


「リズを愛するゼオン」と「リズの記憶を欠損していくゼオン」の間に論理的な矛盾が生じた。愛という目的が、記憶という手段によって自己破壊を始めたのだ。


第九節:破壊の裏コード誕生

ゼオンは、記憶の崩壊という内的なバグに、ついに屈した。彼は、リズを護るという愛の法則を達成するためには、自分自身をも含めた全ての法則を破壊するという究極の論理に到達した。


彼の瞳から、愛の光が完全に消え、破壊の意志だけが宿った。


「シン……俺の論理は導き出した。リズを永久に護るためには、この世界だけでなく、俺自身の存在も、破壊の絶対法則に組み込まねばならない」

ゼオンは、自身のシステムに、愛と絶望を凝縮した**『裏コード』**を打ち込んだ。


裏コード:存在の破壊ディストラクション・オブ・エグジスタンス

これは、世界の法則だけでなく、自己の論理的連続性までもを破壊の力に変えるコードだった。彼は、愛という絶対的な法則を成就するために、自己破壊という究極の論理を選んだ。


ここに、ドミニオン最強の破壊者、ゼオンが完成した。彼の行動原理は、**「愛」**という最も純粋な感情から生まれた、最も絶望的な論理となったのだった。

これで、ドミニオンの二大幹部、**シン(時間術の支配者)とゼオン(愛の破壊者)**の誕生が描かれました。

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