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第4章 第3話:希望のコードと現実への扉


最終コードの統合

**『感情の迷宮』での試練を終え、ゼオンを仲間に加えたカイトたちは、世界の崩壊の原因であった『憎悪のコア』を『希望のコア』**として安定させた中心地で、最後の作業に取り掛かっていた。


カイトの頭脳には、世界の全ての法則が統合されていた。


知識カイト: 世界の設計図と真実の歴史。


意志アリア: 世界を修復する信念と感情の力。


論理ルーク: 法則を解析し、コードを組む知恵。


時間シン: 時間軸の真の制御と連続性。


ゼオン: 絶望を超越した、現実への切実な希望。


「これで、世界の**『修復コード』は全て揃った。ゼオン、あなたの『破壊の裏コード』は、世界の『強制ログアウト』という偽りの法則に直接繋がっている。そのコードを、俺たちの『修復コード』に上書きし、『現実への扉』**へと書き換える」カイトは、ゼオンに向かって言った。


ゼオンは、かつて破壊のために使った**『裏コード』を、今度は創造**のために使うことに、静かな決意を固めた。


「わかった、カイト。俺の絶望を、お前の希望に昇華させてくれ。俺がこの世界に残した破壊の残滓も、全て現実への力に変えてやる」


偽りの法則の書き換え

カイトは、自身のレベル1の魔力を最大まで増幅し、知識、論理、時間のすべての法則を一つに束ねた**『希望の修復コード』**を生成した。


その膨大なコードが、ゼオンの**『破壊の裏コード』**と接触する。激しいデータの衝突が起こり、空間が揺らぐ。


「ルーク! 論理コードで、ゼオンのコードが**『現実への扉の座標』**を指すように、強制的に誘導しろ!」


「シン! 時間軸を未来の一方向に固定し続けろ! **『ログアウト』**の瞬間に、時間が巻き戻るのを防ぐ!」


ルークとシンは、極限の集中力で作業を続けた。カイトの知識が、ゼオンの裏コードの最も深層にある**「現実への帰還」という論理的欲求**を特定し、そこを起点にコードの書き換えを開始した。


**『世界の偽りの法則:強制ログアウト』が、『世界の真の法則:現実への扉』**へと、一文字ずつ、上書きされていく。


現実への扉の出現

書き換えが完了した瞬間、カイトたちの前に、強烈な純白の光が放たれた。それは、これまでの隔離世界で見てきた歪んだ光とは違い、現実世界の温かさを含んだ、確かな光だった。


光は、巨大な**「扉」の形を成していた。扉の表面には、これまでの旅で出会ったNPCたちの笑顔**や、カイトたちが修復した世界の風景が、走馬灯のように映し出されていた。


「成功した……! これが、現実への扉だ!」ルークが歓喜の声を上げた。

ゼオンは、その扉を見て、瞳に涙を滲ませた。「リズ……俺は、帰れるのか……」


しかし、カイトの表情は曇っていた。彼の知識は、この**「扉」に最後の論理的欠陥**が残っていることを示していた。


最後の犠牲と選択

「待て! この扉はまだ不安定だ!」カイトは叫んだ。


「扉をくぐれるのは、この世界で最も『存在データ』が軽く、世界の法則に縛られていない存在だけだ! すなわち、俺の『レベル1』の身体だ!」


カイトのレベル1の身体は、この世界で最もデータが薄い。つまり、世界の法則からの**離脱ログアウトを最もスムーズに行える「鍵」**そのものだった。


「残りの者は、扉をくぐる際に、『存在データ』の負荷により、記憶の上書きを受ける可能性がある! 現実に帰っても、この世界の全ての記憶を失い、**『ゲームを終えた後の現実』**として再定義されてしまう!」


カイトの言葉に、一同が凍り付いた。


「そんな……! 俺たちが戦った記憶も、カイトと出会ったことも、全て消えるのか!?」アリアは信じられないといった様子でカイトを見た。


ゼオンは、静かに**『時の鎌』の破片を握りしめた。彼は、自分の愛する娘の記憶**を再び失うことだけは耐えられなかった。


希望の継承

カイトは、静かに**「知識の継承者」**の称号を輝かせた。


「違う。俺は、希望の知識を**『継承』するだけだ。ルーク! 俺の『知識の継承者』の称号を、あなたに強制上書きする! 知力Aを持つあなたこそ、世界の法則を記憶し、現実世界で『真実の知識』**を保持できる!」


カイトは、自分の知識と論理を、ルークの魔力コアに、**『未来への希望』**として全て流し込んだ。


《知識の継承者(Lv.1):知識の強制継承完了》


ルークの瞳が、真実の知識の光で輝き、彼の頭脳は、世界の全データを掌握した。


「カイトさん……! 私は、全てを記憶しました……!」ルークは涙を流しながら、カイトの前に立った。


「ありがとう、ルーク。アリア、ゼオン、シン。俺が**「現実への扉」をくぐり、世界の法則を「現実」として再構築する。お前たちは、『現実世界で再会する』という意志**だけを信じて、扉をくぐれ!」


カイトは、レベル1の身体という最後の鍵を使い、希望の知識と仲間への信頼を胸に、現実への扉へと一歩踏み出した。


彼の身体が、白い光に包まれ、扉の向こう側へと消えていく。

そして、世界は再構築を始めた。


  エピローグ:現実、そして再会

世界の再起動

扉をくぐり抜けたカイトは、眩い光の中で意識を失った。

彼が次に目を覚ましたのは、見慣れた現実世界の病室のベッドの上だった。彼の身体は、「ゲームをクリアした後の現実」として再定義され、この世界での全ての記憶は失われていた。


「……クロノス・オンライン……夢を見ていたのか?」カイトは、頭の中に残る微かな**『知識』**の残響を感じながら、首を振った。

しかし、その数日後。


「知識の継承者」の記憶を完全に受け継いだルークが、「家族を救う」という意志を失わなかったゼオンと共に、カイトの病室に現れた。


「カイトさん。あなたがこの世界に残した**『希望の知識』と、私たちが現実への扉をくぐり抜けた『意志』**は、確かに繋がりました」ルークは涙を拭い、カイトに手を差し伸べた。


カイトは、目の前のルークの知識の光を見て、失われたはずの記憶が、**『知識』**という形で彼の脳裏にフラッシュバックするのを感じた。


「ルーク……アリアは? シンは?」


ルークは微笑んだ。「彼らは、あなたの**『希望のコード』に守られ、今、この現実**で、それぞれの人生を再構築しています」


そして、カイトはルークに連れられ、病室の外へ。そこで彼を待っていたのは、アリア、ゼオン、そしてシンの、世界の修復という試練を共に乗り越えた仲間たちの笑顔だった。


ゼオンは、病気が治癒した娘のリズを抱きしめ、カイトに深く頭を下げた。


「カイト……ありがとう。お前の希望は、俺たちの愛と絶望を救った」

カイトは、失われた記憶を取り戻し、知識の継承者としての真の使命を終えたことを悟った。世界は、ゲームでもバグでもない、**『意志を持つ人々の住む、真の現実』**として再構築されたのだ。

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