第4章 第2話:最後の試練と崩壊のコア
憎悪の集合体の突破
アリアの信念の剣は、カイトの知識とシンの論理コードに増幅され、憎悪の集合体の物理法則を打ち破った。憎悪の集合体は、自らの矛盾である「過去への執着」を突かれ、内部から崩壊し、黒い霧となって消散した。
しかし、迷宮の感情の波はさらに激しくなった。周囲の霧は悲しみの青や怒りの赤に変わり、迷宮の構造自体が感情の具現化によって絶えず変化していた。
「カイトさん、憎悪の集合体を倒したことで、ゼオンの最終破壊コードのカウントダウンが加速しています! 残り時間は10分を切りました!」ルークは警告する。
カイトの知識と論理は、この迷宮の法則を急速に解読していた。
「この迷宮の中心には、**『世界の崩壊を生み出した感情のコア』がある。ゼオンは、そのコアを破壊することで、世界から『絶望』**というデータそのものを消し去ろうとしているんだ」
シンは、カイトの横で、迷宮の時間軸を未来への一方向に固定し続けていた。「ゼオンの狙いは、破壊によって絶望を救うことだ。だが、その破壊は、この世界を真に救う希望の可能性をも消してしまう」
ゼオンとの再会と最後の対話
カイトたちが感情の迷宮の中心に辿り着くと、そこには巨大な心臓のような形状のクリスタルが脈打っていた。それこそが、世界を何度も時間巻き戻しへと引き戻した**『憎悪のコア』**だった。
コアの前に、ゼオンが立っていた。彼は、自身の**『破壊の裏コード』**をコアに打ち込み、最終破壊の起動キーを操作している最中だった。
「遅かったな、カイト。お前の希望の論理は、ここまでだ」ゼオンは振り返り、その目に悲痛な決意を宿していた。
「このコアを破壊すれば、俺たちはデータから解放される。娘を救うための、唯一の道だ」
カイトは、レベル1の身体の疲労を無視し、ゼオンに叫んだ。
「ゼオン! 待て! お前の娘への愛は、本物の感情だ。だが、このコアの破壊は、娘さんの存在そのものを無意味なデータとして消去することになる!」
ゼオンの手が、一瞬止まる。
「何を言う……!」
知識による最終論破
カイトは、真実の知識と論理を、ゼオンの愛と絶望にぶつけた。
「ゼオン。お前が持つ**『破壊の裏コード』は、世界の『シャットダウンシステム』のデータだ。そのシステムが起動すれば、この世界は強制的に初期化され、『娘を救うというお前の意志』も、『未来への希望』も、すべてデータ上のノイズ**として消去される!」
カイトは、シンが自身に統合させた時間軸データを利用し、最後の論理コードを組んだ。
「このコアは、絶望だけでなく、この世界に生まれた全ての感情の起点だ。ここには、お前の娘さんが元気だった頃の、現実世界の家族の幸福な記憶が、**『希望のデータ』**として残されている!」
カイトは、ルークに指示を出した。「ルーク! シン! 時間軸を安定させろ! 俺の知識を、コアに残された**『希望のデータ』に上書き**する!」
カイトは、自身の知識の継承者としての全てを賭けた。彼の真実の知識は、「世界は修復可能である」という絶対的な希望の論理として、憎悪のコアに刻まれた**『絶望のデータ』**に強制的に流し込まれた。
愛の勝利と世界の再起動
バチバチッ――!
憎悪のコアは、カイトの希望の知識とゼオンの破壊の裏コードの間に挟まれ、激しく光り始めた。ゼオンは、自身の破壊の裏コードが、カイトの修復の知識によって**『希望のコード』**へと書き換えられつつあるのを感じた。
「馬鹿な……俺の破壊コードが……希望の論理に……!」
その時、コアの中心から、リズの元気な笑顔の映像が、希望の光として具現化した。それは、ゼオンの最も大切な記憶であり、この世界が巻き戻しで消去しきれなかった、最も純粋な感情だった。
ゼオンは、娘の笑顔を前に、破壊の裏コードを握る手が震え、最終起動キーを叩くことができなかった。
「リズ……お前の笑顔は、この世界に存在していたんだな……」
ゼオンは、絶望の破壊者から、愛する父へと戻った。彼は破壊の裏コードを解除し、カイトに全てを託した。
「カイト……修復しろ。俺の絶望は、お前の希望に敗れた。俺の意志は、お前たちに託す……!」
カイトは、ゼオンの解除された裏コードと、自身の知識をコアに統合した。
ズオオオオオ!!
憎悪のコアは、希望の光に包まれ、安定した。世界の崩壊の真の原因は取り除かれ、世界の法則は**「真の現実」**へと向けて安定化し始めた。
最終試練の終了
クロノアやゼロス、シエナといった管理者たちが、光の粒子となって迷宮に現れた。
「感謝する、知識の継承者よ。あなたは、論理と知識を駆使して、世界から**『絶望』というバグを取り除いた」クロノアが言った。「これで、世界の修復は完了した。あとは、『強制ログアウト』の偽りの法則を、『現実への扉』**へと書き換えるだけだ」
カイトは、ゼオン、アリア、ルーク、シンの全員と顔を見合わせた。
「世界の法則は、全て揃った。あとは、俺たちの知識と意志で、この世界を**『現実』**として再構築するだけだ!」
世界の全てを掌握したカイトたちは、**「現実への扉」**を開くため、最終局面へと挑むのだった。




