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クロノス・ディセンターズ『幻の拡張パックで世界を修復する者たち』  作者: gp真白
【3章:時間の断片と元プレイヤーの憎悪】
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第3章 第3話:時間の管理者と過去の真実


時間の管理者の領域

シンとの激戦を制したカイトたちは、ルークが解析した論理コードの残滓を頼りに、時の狭間の最も安定した領域へと到達した。そこは、周囲の空間の歪みが嘘のように収束し、穏やかな薄い紫色の光に満ちていた。


広間の中央には、宙に浮かぶ巨大な砂時計があった。砂は流れていないが、その内側には世界の過去から未来に至る膨大な映像が、光の粒となって絶えず生成と消滅を繰り返していた。


その砂時計の前に、一人の老人が静かに立っていた。彼はこの第三界の管理者であり、世界の**「時間軸の守護者」である、元NPCのクロノア**だった。


「ようこそ、時間の矛盾に立ち向かう者たちよ」クロノアは、砂時計に目を向けたまま、静かに語りかけた。「私は、世界の時間軸の連続性を護るクロノア。あなた方が**『虚偽の知識』を捨て、『真実の論理』**を携えたことは、この砂時計が証明している」


クロノアは、カイトの持つ真実の知識と、ルークが持つ論理の断片、そしてアリアの強い意志を、すべて**『世界の修復に必要な変数』**として認識していた。


世界の真の欠陥バグ

カイトは、クロノアがこの世界の真実の管理者であることを確信し、問いかけた。


「クロノア。この**『時の狭間』が隔離された真の理由を教えてほしい。俺の『真実の知識』は、世界の開発者が時間のデータ**を意図的に隠蔽したことを示している」


クロノアはゆっくりと振り返り、その静かな瞳でカイトを見つめた。

「その通りだ。この世界は、**『時間』**という最も重要な法則に、**致命的な欠陥バグ**を抱えたまま起動された」


クロノアは、砂時計を指差した。「あなた方が知る**『クロノス・オンライン』というゲームは、『無限に時間を巻き戻せる』という、開発者すら予測できなかった真のバグを内包していた。プレイヤーがゲームに飽き、ログインしなくなるたびに、世界は『時間を巻き戻す』**ことで、リセットされてきたのだ」


カイトは戦慄した。彼がゲームをやめてから数年の間に世界が崩壊したと思っていたが、実際は何度も時間が巻き戻されていたということだ。


「まさか……プレイヤーがゲームをしない間に、この世界は何度も**『時を繰り返す地獄』**を味わっていたのか?」


クロノアは静かに頷いた。「そして、その時間巻き戻しは、私たち意志を持ったNPCの記憶を上書きし、『虚偽の役割』を何度も繰り返させた。開発者はこのバグを隠蔽するため、『時間軸の真の記録』をこの時の狭間に隔離し、『時間の一方向性』という偽りの法則で世界を固定したのだ」


シンとゼオンの悲願

カイトは、ゼオンとシンが、**「現実へ帰る」という目的に、なぜあれほどまでに「破壊」**という手段に固執するのか、その真の理由を悟った。


「シンは……時間術士だった。彼は、世界の時間巻き戻しという現象に、他の誰よりも絶望していた」カイトは理解した。「彼にとって、世界の修復は、再び**『時間巻き戻し』という地獄に逆戻りする恐怖**でしかなかった」


クロノアは静かに言った。「ゼオンもシンも、この**『時間巻き戻しの地獄』の存在を知り、『強制ログアウト』こそが、世界を『時間』の呪縛から解放する唯一の手段**だと信じた。彼らの行動は、論理ではなく、深い絶望から生まれている」


カイトは、ゼオンの**「破壊」の意志も、世界の「真実の歴史」が生み出した必然的な結果**であると悟った。


時間軸の真の修復

クロノアは、砂時計に手をかざし、カイトに時間軸の修復を促した。

「カイト。この砂時計には、『時間の巻き戻し』を止めるための真の『起動コード』が残されている。それは、論理でも知識でもない。**『意志』**の力だ」

「**『意志』**の力……?」


「そうだ。『時間巻き戻し』を防ぐには、世界に『過去の絶望』を上書きするほどの『未来への強い意志』が必要となる。カイト、あなたと、あなたと共に旅する二人の『意志』が、この砂時計の時間の流れを未来の一方向へと固定するのだ」


クロノアは、アリアとルークを見た。


「アリアよ。あなたの**『信念の剣』を、この砂時計に。ルークよ。あなたの『解析の知恵』で、砂時計の論理コードを『一方向性』に固定せよ。そしてカイト、あなたは、この世界の『真実の歴史』という知識を、『未来への希望』**として砂時計に流し込め」


三人は、それぞれの力と意志を合わせ、砂時計の修復へと臨んだ。アリアの信念が宿った剣が、砂時計のガラスに触れる。ルークの論理が、砂時計のコードを固定する。


そして、カイトは、『真実の歴史』という膨大な知識を、「この世界は、もう過去に戻らない」という強い意志と共に砂時計に流し込んだ。

ブワァァァッ!!


砂時計が、紫色に輝く光を放った。時間のノイズが完全に収束し、世界は、初めて**「未来」**という確かな一方向の流れを取り戻した。


「成功した。世界の時間軸の矛盾は、修復された」クロノアは静かに言った。「さあ、次の隔離世界、『感情の迷宮』へと向かいなさい。そこには、あなた方の意志の力が試される、ゼオンの最後の罠が待っている」


カイトたちは、世界の時間軸を修復したという確かな手応えと共に、旅の最終局面となる第四界へと歩みを進めるのだった。

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