第3章 第2話:時間停止とレベル1の作戦
時の停止と絶対的な優位
カイトの指示に従い、ルークは即座にゼロスから得た**『論理の断片』を抽出し、アリアの剣に『時間の一方向性』**という論理コードを打ち込んだ。
キンッ――!
シンが振るった**『時の鎌』が、アリアの剣に触れた瞬間、激しい魔力の衝突が起こった。アリアの存在を過去に巻き戻そうとするシンの破壊的な力と、「時間は未来に進む」という絶対的な論理**が込められたルークのコードが激突する。
アリアは衝撃で後ろに吹き飛ばされたものの、存在の消去は免れた。
「ちっ……論理コードだと? ゼロスの奴め!」シンは苛立ちを隠せない。
しかし、シンの真の恐ろしさはここからだった。
「お前たちの小細工は終わりだ。この**『時の狭間』**で、俺の力に勝るものはない」
シンが**『時の鎌』を天にかざすと、空間全体が不規則なノイズを立てながら、一瞬で停止**した。
「時間停止!」
カイト、アリア、ルーク。三人の時間が、完全に凍結した。アリアの剣の残像も、ルークの解析デバイスが放つ光も、すべてが静止画となった。
カイトのレベル1の身体は、完全に無力化されていた。
シンは、停止したカイトの目の前に立ち、嘲笑した。「無駄だ、カイト。お前が持つ**『知識』は、時間という法則の前では、ただの古い記録だ。お前のレベル1の肉体は、時間停止に対抗する魔力を持っていない。お前は、俺に殺されるという『未来』**から逃れられない」
知識による未来の逆算
カイトの身体は動かない。しかし、彼の頭脳は、極限の速度で回転していた。彼の真実の知識、ゼロスの論理、そしてシンの能力に関する全てのデータを統合し、**この状況から脱出するための唯一の『論理的解』**を導き出す。
(時間停止は、空間全体のデータ処理を停止させているわけではない。生命体の時間軸を停止させている。つまり、この空間の**『時間軸を司る管理者』であるシン自身の「思考時間」**は動いている!)
カイトは、ゼロスから得た**『論理の断片』**を思い出した。
論理の断片:「論理的矛盾は、空間に存在するデータ処理の偏りによって生じる。処理を強制的に均一化**させれば、論理は一時的に正常に戻る。」
カイトは、時間停止が、シン自身の時間軸処理に極端な負荷をかけているという論理的欠陥を発見した。
(時間停止は、この不安定な空間では**『絶対的な力』ではない。シンが『時の鎌』を振るうという次の動作をする一瞬の隙が生まれるはずだ! その一瞬**を狙う!)
カイトは、ルークの魔力増幅デバイスを、停止した自身の左腕に装着していることを認識した。デバイスは、時間停止中でもレベル1の微弱な魔力をルークの**「知力A」のデータ処理**とリンクさせていた。
カイトは、シンが次の行動を起こす、未来の正確な時間座標を計算した。そして、停止したルークのデバイスに対し、その未来の座標に向けて**『論理コード』を起動予約**した。
未来への強制介入
シンは、カイトを破壊するために**『時の鎌』を構えた。その動作は、カイトが計算した「未来の座標」**と完全に一致していた。
シンが鎌を振り下ろそうとした、まさにその一瞬。
カイトが時間停止中に予約した論理コードが、停止したルークのデバイスから強制的に起動した。
ズンッ!
カイトのレベル1の魔力と、ルークの知力Aの処理能力が融合したコードは、時間停止というシンの強力な力に、**『論理的な均一化』**を強いた。
時間停止が、一瞬だけ揺らぐ。
**「なっ……!?」**シンは、自身の絶対的な力が乱れたことに驚愕し、動きが止まる。
カイトは、この0.1秒にも満たない**『時間の再起動』の瞬間を逃さなかった。彼は、時間停止から解放されたばかりのルークに対し、『論理の断片』**を駆使した新たな指示を叫んだ。
「ルーク! シン自身が放つ魔力を、この空間の不安定な時間軸に、**『拡散コード』**として叩き込め! シンの時間を、この空間の不規則な時間と同じにしろ!」
ルークは、時間停止から解放された直後の混乱の中、カイトの指示を絶対的な論理として受け入れ、シンが放つ膨大な魔力を強制的に**『時間軸のノイズ』**に変換した。
シンは、自らの魔力が制御不能な時間の断片となって空間に拡散していくのを感じた。
「馬鹿な……俺の時間が……俺の力で……!」
シンの力が無力化され、カイト、アリア、ルークの時間は、完全に正常化した。
知識の勝利と脱出
「アリア! 今だ!」カイトは叫ぶ。
アリアは、ルークのコードによって時間の一方向性を付与された剣を、時間の制御を失ったシンめがけて振るった。
「あなたの絶望も、この世界の修復を妨げることはできない!」
アリアの剣は、シンの肉体を斬りつけたわけではない。シンの**『時の鎌』に残留していた時間軸破壊コードのコアを、正確に切り離した**のだ。
シンは、激痛に耐えながら後退した。彼の**『時の鎌』から、力を失った時間の断片**が霧散していく。
「覚えておけ、カイト! お前がどれだけ知識を集めようと、俺たちは現実へ帰るという意志を捨てない!」
シンは、ゼオンの助けを借りるように空間を歪ませ、傷を負いながらも撤退した。
カイトは、論理と知識の連携によって、時間という絶対的な法則を操る最強のプレイヤーを退けた。しかし、彼のレベル1の身体は、限界を超えていた。
「ルーク……この**『時の狭間』には、シンの『時間軸破壊コード』の残滓**が残っている。急げ、ワープゲートを見つけ出すぞ!」
カイトたちは、ゼオンとシンが仕掛けた時間軸の試練を乗り越えるため、不安定な時の狭間の奥深くへと進むのだった。




