第3章 第1話:第三界・時の狭間と時間の矛盾
時の狭間への突入
**『静寂の雪原』**での論理の試練を乗り越えたカイト、アリア、ルークの三人は、ゼロスが起動させたワープゲートを抜けて、**第三界『時の狭間』**へと突入した。
周囲の景色は、極寒の雪原から一変し、光が歪み、空間が不安定に脈打つ異質な空間となっていた。ここでは、時間軸そのものが矛盾しており、過去と未来の事象が同時に、あるいは不規則に現れては消えていく。
「これが『時の狭間』……」アリアは剣を構えながら、目の前で数秒前の自分たちの残像が消えていくのを見て戦慄した。
「論理的な予測が不可能よ。この空間では、一瞬前の行動が、次の瞬間の結果を保証しない!」
ルークは解析デバイスを起動したが、すぐに**「解析不能」の警告が鳴り響いた。「カイトさん! ここは『ゼロス』の論理世界とは真逆です! 時間が乱数のように不規則に飛び交っており、私の知恵**も、空間の不安定さに追いつきません!」
知識の集積と時間の法則
カイトは、ゼロスから受け取った**『論理の断片』と、『真実の歴史』**の知識をフル活用し、この空間の法則を解読しようとした。
「この空間は、世界の**『時間データ』が隔離され、保護されている場所だ。時間軸が不安定なのは、ゼオンの破壊コード**の影響が、この世界でも強まっている証拠だ」
カイトの頭の中では、真実の知識から、この世界の真の管理者の情報が浮かび上がっていた。それは、この世界を護る、最後の試練の管理者だ。
カイトは、ルークのブレスレットの魔力増幅機能を利用し、自身の知力Aの処理能力を**『時間軸の再構築』**に集中させた。
「ルーク。俺の知識を、この空間の不安定な時間軸に、**『論理的な連続性』として打ち込む! ゼロスから得た『論理の断片』**を使え! **『時間は常に未来へ一方向である』**という最も単純な論理を、コードとして流し込め!」
ルークは、カイトの指示に従い、極めて**単純だが強力な『論理コード』**を空間に打ち込んだ。
キュオオオ……
不規則に乱れていた時間軸のノイズが、一瞬だけ収まり、カイトたちの周囲だけが**『正常な時間』**を取り戻した。
「持続時間はわずかだ。この空間では、**『過去の知識』よりも『現在の論理』が重要だ」カイトは立ち上がった。「この法則が安定している間に、次の塔へ向かう『真のワープゲート』**を見つけ出すぞ!」
ゼオンの罠:元プレイヤーの転移者
カイトたちが安定した空間を数歩進んだ直後、空間が再び激しく歪んだ。それは、ゼオンによる、時間軸への直接的な干渉だった。
「お前の『知識』は、もう見飽きたぞ、カイト」
ゼオンの声と共に、カイトたちの目の前に、もう一人の転移者が現れた。彼は黒いコートを纏い、片手に不気味な**『時の鎌』を携えている。その瞳には、ゼオンと同じく、この世界への憎悪**と、現実への帰還という目的が強く宿っていた。
カイトは、その転移者の姿を見て、頭の中のプレイヤーデータベースと照合した。
シン(Shin):元プレイヤー。職種:時間術士。プレイヤーネーム:クロノス。ゼオンと並ぶ古参プレイヤーであり、『時の狭間』のデータを熟知している。現実世界のnnoo#####????QQQQ
(おかしい、今までのようなプレイヤーデータベースでは明らかにこんなバグは起きなかった。まるで意図的に隠してるような…)
「シン……まさか、お前までドミニオンに……!」カイトは驚愕した。シンは、カイトの**「知識の継承者」**の資格に、最も近く、最も優秀なプレイヤーだったはずだ。
シンは、冷酷な笑みを浮かべた。「カイト。お前はまだ、この世界が**『ゲームのシナリオ』の通りに進むと信じているのか? 俺たちはプレイヤー**だ。俺たちの目的は、この世界を救うことではない。現実へ帰ることだ!」
シンは、ゼオンから与えられた**『時間軸破壊コード』を『時の鎌』に凝縮させた。「ゼオン様は、俺に命じた。『時の狭間』で、お前の『未来の可能性』を完全に消去**しろ、と!」
時間の鎌とレベル1の窮地
シンは、その**『時の鎌』を振るった。鎌が空間を切り裂くと、カイトの『過去の姿』と『未来の可能性』が、一瞬にしてデータとして消去されるノイズ**を立てた。
「躱せ、カイト!」アリアは、カイトを突き飛ばし、**『時の鎌』**の軌道を剣で受け止めた。
グワァン!
アリアの身体に、時間の矛盾による凄まじい衝撃が走る。「時間が……私の存在時間を巻き戻そうとしている!」
ルークは、解析デバイスでシンが操る**『時の鎌』のコードを分析した。「カイトさん! シンの鎌は、『この空間の不安定な時間軸』**を利用しています! 『時間』を武器として実体化させているんです!」
カイトは、プレイヤーネーム:クロノスの恐ろしさを知っていた。彼は、この世界で**「時間」という最も強力なデータを操る、ゼオンすら凌駕する戦術的な知恵**を持つプレイヤーだった。
カイトのレベル1の身体では、シンの**『時の鎌』による「存在の消去」**から逃れることは不可能だった。
カイトは、最後の力を振り絞り、ルークに指示を出した。
「ルーク! 『論理の断片』を、アリアの剣に打ち込め! 論理コードで、『時間の一方向性』を剣に付与しろ! 過去への巻き戻しを拒否させろ!」
「シン! お前が操る時間は、世界の法則ではない! 破壊のためだけに作られた、虚偽の力だ!」
カイトは、**「知識」と「論理」**を武器に、時間を操る最強の元プレイヤーとの、絶望的な戦いに挑むのだった。




