第6節「破壊神と創造神」
俺の朝は眠い。そして、怠い。
だが、俺は意志が強い。ただし、寝る意志だ。
俺の意志に打ち勝つものがある。
腹が減った。
俺は喫茶「天」の扉をくぐった。
何か軽食をとメニューを見た。
パンケーキを注文しようとしたが、無いらしい。
このシステム何とかならないのか。
飲み物はメロンソーダを頼もう。
いや、止めだ。
俺はめろんの顔を思い出してしまった。
向かいの席でゴーさんがパンケーキのようなものを食べている。
あるのか?
ゴーさんに尋ねてみた。
これは、ホットケーキです。
ここで以前出していたパンケーキは山羊ミルクを使っていたらしく、今は山羊ミルクが無いのでホットケーキなのだそうだ。
ジブさんの拘りかもしれない。それより、ゴーさんが普通の物を食べてる方が新鮮。この人味覚がおかしいわけではないらしい。
ジンジャエールもジブさん生姜を絞りそうなのでなし。「普通のコーラ」とホットケーキを頼んだ。
新聞を手に取った。
今日の天気は…
雨、または曇りところにより雨 降水確率28%
微妙だ。傘が要るのかどうか分からん。
雲の隙間から陽光がさしている。
「テラス席に移動しましょう。」
ゴーさんの誘いに自然と同意してしまった。俺は流される意志も強いのだ。
俺がテラス席の柵に手を置くと嫌な予感がした。俺の危機管理能力は高い。
先を歩くゴーさんが策によりかかったとき、
柵が倒れてしまった。ゴーさんは破壊神となった。
「わざとではありませんよ。これは天然ボケです。」
涼しい口調とは裏腹にゴーさんの顔は少し引きつっていた。俺は体の中で笑った。
給仕さんが慌ててゴーさんに駆け寄り、怪我の心配をした。
「ごめんなさい柵、腐ってて。注意書き、書いてる途中でした。」
それよりメニュー直そうよ。
「安心なさい。命に別条はありません。ニュースにはなりませんよ。」
ゴーさんは穏やかに、策を蹴飛ばした。
奥から見ていたジブさんが、そそくさと外出したようだ。
ゴーさんと俺は食事を再開した
ホットケーキとコーラは引っ越しを終えた。今は俺の胃袋で引っ越しパーティー中だ。
1時間ほどでジブさんは知り合いの息子「クラ」さんを連れてきた。
クラさんは、この辺りではちょっとした有名人。「神鋸」の異名を持つ大工だ。
俺は初めて見る。
あんたが「神鋸」…
「イェス、イェス、ソーです。」
「神鋸」クラさんは明るい陽射しの様な人だ。猛暑日の。
「ル氏ではありませんか。」
神鋸の脇に意外な人物がいた。「鈴」だ。
学生ではなかったのか? 俺は「鈴」に問う。
「ありゃコスプレっす。キャラわかりませんでした?」
あれは、不良学生A、いやBのコスプレだな。俺は思った。
「鈴」はクラさんの手伝いで来てるらしい。本業は大工なのかもしれない。
「杭、改めな」
「神鋸」の指示に「鈴」は応え、テキパキと作業している。
「イェス、ソー!」と
瞬く間に柵は再建された。7日もあれば「天」の全面改築ができそうな勢いだった。
俺はここに創造神を見た。
第6節「破壊神と創造神」ここまで