第22節「俺の知らない世界(1)」
今回の語り手はミクちゃん。「ル」氏はお休みです。
俺は「ル」氏と呼ばれるが、今回はお休みだ。というわけで、寝る。
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わたしはミクラ、ミクラさん、ミクちゃんと呼ばれています。
わたしの話はあまり面白くありませんよ。
今日は、45000歩を超えました。目標を決めて達成できるのは、気持ちの良いものです。
ボランティアの帰り、わたしは、ちょっとした、悪戯をしてしまいました。
それが「「ル」氏さんを傷つけてしまうきっかけになってしまったようで、大変申し訳なく思っていました。あの時、安心した様な寝顔が愛らしく、つい、「ル」氏さんを「女の子」にしてみました。
尊敬するゴーさんを真似してみたくなったのです。
慣れないことをすると、リスクが伴いますね。大変勉強になりました。
まさかわたしが演劇をすることになるとは。
「ル」氏さんは、とても素直ないい子です。子どもみたいで、守りたくなりますね。
わたしは、心配性ですから、いつも大きな鞄を持ち歩きます。
わたしを、「ひみつどうぐの人」等と評する人がいるとも聞きます。恐縮です。
必要な時、必要なものを持っていないと、困りますので、簡単なものをいくつか持ち歩いているだけつもりなのですが、何故か量か多くなりますね。
わたしが、4人家族というゴーさんの設定にはわたしも驚きました。わたしは一貫しているつもりですが、わたしの多面性を指摘されたようで心に響きました。ゴーさんの深い洞察、見習いたいものです。
随分と暑くなってきました。
洗濯物が早く乾きますので、助かります。でも汚れ物も増えるのでお相子ですね。
喫茶「天」の中は空調がよく効いて居るので、まさに「極楽」ですね。
さて、折角の夏です。「冷やシチュー」を食べてみましょう。
野菜が取れるのも助かります。煮込んであるので胃にも優しい。素晴らしいです。
僅かな酸味が爽やかさを際立てます。やや強めの甘みはアイスクリームを隠し味に使って要るのかもしれませんね。この少し硬いお肉は豚?違いますね。ジブさんならきっと猪を入れるでしょう。
わたしが「極楽」を堪能していると、心の師匠が店入ってきました。
「ミクラさん、ごきげんよう。冷やシチューか。良いですね。では私も」
ゴーさんは給仕さんを呼び止めて言いました。
「冷やシチュー、プレーンで」
なんと、具なし。わたしは驚きを隠せません。ゴーさんの聡明さにはいつも感服します。
何も入ってないそれは、質素なようで、一番贅沢なのかもしれません流石師匠。
運ばれてきた冷やしプレーン。ゴーさんは自分の皿と私の皿と見比べ、軽い笑みを見せ
「ひとづだけ戴きますね。」
と、わたしの皿から人参を一欠片すくってご自身の口に入れました。
地獄から人を救い出す慈愛に満ちた救世主のようです。
さて、わたしも残りのシチューを食べ会計を済ませましょう。
もうすぐお昼です。他のお客さんが多く来るはずです。長居してはお店にご迷惑をかけてしまいます。何よりわたしの帰りを待つ仲間が居ますので。
外は照りつける陽光がアスファルトを焼いている。
第22節「俺の知らない世界(1)」ここまで。




