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第19節「最強の塩化ビニール」
俺は「ル」氏。
俗世の支配「ヘルシーマート」の制服を脱ぎ捨てた。いや、ロッカーにしまった。
湿り気を帯びた朝の空気が俺を街の外れへと誘う。眠いけど。
鳥居を潜ると、そこは澄んだ空気と静けさに支配される。
おのれ、最強の支配者め。
だが俺は見た。有難い塩化ビニール管。手と口を清める水の源栓。
冷たい。後ろ頭ちょっとキーン。
石段を若者たちが駆け上がる。支配者に媚びることなく己の力を高める為に。
支配者よ。彼らの心まで支配はできないのだ。
若さは良い。何処までも自分を高められる。
そんな幻想に正面から突っ込む。結果は人それぞれだ。
重い脚に鞭を討ち、長い道のりを上る。
この道は永遠に続くのではないか。そんな思いが俺を迷わせる。
諦めない。支配者に言わねばならぬことが在るのだ。
最上段を越え、支配者の居るといわれる建造物の前に立つ。
支配者にわが身を売ってしまった。
売ったのに、財布の中身は僅かに減っている。
「宝くじが当たりますように」
「最強の塩化ビニール」これまで。




