8話
「勇者?」
「うん……勇者。現時点で最強の職業、、やったね」
「君が勇者?」
「そう、SSSランクのギフター。最強のギフター。今は御剣家のお世話になってる、翼とは仲良し。嬉しいね」
「そうなんです、今は我が家の食客としてお招きしています」
カザミの脳内を埋め尽くすのは困惑。ギフターに憧れていたカザミはギフター関連のニュースには詳しくSSSランクのギフターの名前などは全て暗記している。だが、その中にリア・ホワイトドールという名前はなく。その上目の前の少女は自身を最強のギフターと言った。
「君の事は知らない。そして一つ訂正がある。最強のギフターはアイシャ・フランチェスタ・黒凪だろ?」
「私まだ公表されてない。でもアイシャには勝った。いろんな事教えてくれるアイシャ好き。ラブだね」
「師匠に勝った…………?」
「師匠?カザミもアイシャの弟子?」
(嘘をついている様子はない。本当に師匠の弟子であの師匠に勝ったのか?)
「疑ってるなら、試してみる??」
「いや、俺はもう人とは……」
「カザミに嘘つきと思われるのは嫌だ。無理矢理にでも……」
「ちょっとリアさん!急に来たと思ったら」
その瞬間目にも止まらぬ速さで腰の剣を抜くとカザミの首筋に突きつけた。
「リアさん!!やめてください!」
『ヤシロ カザミの対人戦闘を確認。特殊技能、【利己的な共鳴】強制発動。ヤシロ カザミが人に負ける事は何があっても許されない』
「なんだ……これ?」
今まで【共鳴】が発動した場合には相手の思考、能力の使い方が頭に流れ込んできた。身体の動かし方から技能の使い方までわかりやすく脳内にインプットされていた。だが今回、リア・ホワイトドールに発動した【共鳴】では相手の思考がまったく理解できなかった。
「全て擬音?」
リア・ホワイトドールの思考を複写してカザミの脳内に流れてくるそれは全てがギザギザ、フニャフニャなどの擬音だった。
「て……不味いっ!」
「あ、惜しかった。もう少しで当たりそうだったのに」
混乱するカザミをよそにリアは神々しい剣をカザミに向けて振るう突きに袈裟斬りから様々な斬撃がカザミを襲うがその全てを【共鳴】で複写強化したリア以上の身体能力でギリギリ避けていく。
「思考が分からないと対人戦はこんなにも大変なのか。ステータスは」
リア・ホワイトドール
年齢 19
性別 女性
職業 勇者
称号 初代勇者
レベル 1
体力 A
腕力 SS
防御力 S
速さ SS
魔力 A
運 B
《職業技能》
【勇者の剣技】 LV1
【勇者の魔法】 LV1
【勇者の智慧】 LV1
《特殊技能》
【天凛】
【勇者の素質】
【世界の書庫】
「なんだよ、これ……」
「私のステータスを見た?カザミは積極的。男らしいね」
「普通に会話しながら剣を振るわないでくれるかな!」
「カザミだって武器も出さずにいなせてるよ?」
「それは技能で君のステータスや技能をコピーして強化してるからね!」
「なにそれ、すごくずるい……」
「なんだか調子が狂うな、だけど僕も師匠の弟子として負けるわけには行かないんだ!」
カザミは自らの師の言い付けすら破り、【利己主義】によって世界を歪め右手にそれなりの剣を創り出した。
「剣?どこから?しかもそれは、魔剣?」
「普段はこんな事できないんだけどね、今は君以上の魔力があるからね」
カザミが剣を使い始めると攻防は激しさを増していく。当然周りの物や人にも影響が出始める。
「リア!カザミさん!まだやるのですか!」
「翼、危ないから離れていて。楽しくなってきたところ」
「もう!後でお説教ですからね!」
「影転移!魔法剣、黒炎魔法!」
カザミはシャドウウルフから奪った技能で一瞬のうちにリアの後ろを取ると魔剣に黒炎を纏わせて斬りかかる。
「危ない……」
「その割には余裕そうに避けるじゃないか。だけどこれはどうかな」
リアから【共鳴】でコピーした技能【勇者の魔法】を発動する。この技能の効果は火、水、風、土、光、雷、氷、またはそれらの複合魔法を全て使える上にモンスターに対しての威力を高めるというとんでもない技能だった。
「ライトニング・イーター!」
再度影転移を使い距離を取りカザミが左手をかざすと大きな光のアギトがリアに襲いかかる。
「プロテクション!!」
リアも光の防護壁を展開してそれを防ぐがカザミの魔力が高いため、少しずつひびが入る。
「戦技、魔断斬!」
プロテクションを突破して来た光のアギトを【勇者の剣技】の戦技で切り伏せる。
「魔法を切れるのか!凄い!!」
「これがSSSランクギフター、凄い?」
「リアとの模擬戦、とても楽しいよ!」
「私も楽しい、こんなに楽しいのはアイシャ以来……」
「だけど本当に師匠の弟子なんだね、動きの所々が俺や師匠と同じものだ」
「やっと信じてくれた……」
「ごめん、師匠より強い人なんていないって思い込んでたから師匠に勝ったって言われて頭に血が上っちゃって」
「分かってくれたなら良い。誤解は解けたけどまだ続ける?続けたいね」
「もちろん、俺対人戦でこんなに楽しいの初めてなんだ!」
互いに剣を構える2人。カザミから動き出そうとするが。
「お待ちを!これ以上の戦闘は認められません!良い加減にしてください!」
「あ、翼さん。ごめんなさい、つい」
「翼、ごめん。調子に乗った、反省だね」
「2人ともこれから屋敷に戻ってお説教です!」
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