14話
「いただきます!」
「朝ごはん。美味しそうだね、じゅるり……」
「リアは本当に食べるのが好きだね」
「御剣家のごはんは格別」
御剣家の寮にある食堂でリアと2人朝ごはんを食べる。食客であるリアは本来自身に与えられた客室で食べるはずなのだが、俺と模擬戦をする日は一緒に食堂で食べていた。
「それにしても俺、共鳴があるのにリアにはいつまでも勝てないなぁ……」
「私は天才、簡単には負けない」
「思考が読めないってこんなに大変なんだね、天才の考えを理解するにはどうすれば良いんだ……それにあの技能も」
「天凛?」
「それそれ共鳴中は俺も使えるはずなんだけど良く分からないんだよ」
「あれは自分でも分からないタイミングで発動する。私もカザミとの模擬戦以外では全然発動しない」
【天凛】
詳細不明
「発動した時は急に動きが良くなったり、良い閃きが降ってくるんでしょ?」
「そう。神の声が私にだけ発動を教えてくれて一瞬だけとても強くなれる、今日の魔断斬の時も発動してた」
「まあ、明日は勝つから待っててよ」
この一月一緒に過ごしていて俺はリアの事が好きだと気づいた。恋なんてした事が無かったから最初は訳が分からなかったけど今では確信できる。俺はこの天才勇者が好きなんだと。だから模擬戦で勝って気持ちを伝えるんだ。
朝ごはんを食べ終えた俺はリアと別れて今日の仕事内容を聞きに御剣家当主でありギルドのリーダーでもある御剣 鋼一さん。翼さんのお父さんの元を訪れた。
「マスター、おはようございます。今日の仕事内容を聞きに来ました」
「カザミか、ちょうど呼びに行かせるつもりだった」
「何かあったんですか?」
「お前が待ち侘びたアイツが現れたそうだ」
やっと来たか。俺がこの一月待ち続けた相手、機械仕掛けの天使。あの日俺に恐怖を与えたアイツを俺は許さない。
「どこのダンジョンですか?」
「3番ダンジョン。一桁台で唯一破壊されずに稼働しているダンジョンだ。何でも中層のボス部屋でSランクパーティが1人を除いて全滅。生き残った者の証言からお前の言う機械仕掛けの天使と断定した。何もないところを切り裂いて現れる敵なんてそうそういないだろ?」
「3番ダンジョン……俺でも入れますか?」
「無理だな。3番ダンジョンはAランク以下の入場を認めていない。お前は公式にはまだCランクだ。ギフターになって日が浅すぎたから俺たちも昇格試験を止めていた訳だが、実力的にはSSランクに匹敵する。だから今回はリアに着いていってもらえ」
「リ、リアですか?」
「ああ。アイツは食客として招いているから命令はできないが、お前の頼みなら聞いてくれるだろう。SSSランクギフターは特権として1名まで同行者を付ける事ができる。リアはまだ世間に公表はされていないが機関が認めたSSSランクのギフターに違いはない。それにだ、好きな女が側にいた方がここぞって時に踏ん張れるだろ?」
「そう…………ですね」
「決まりだな。車は手配してある。カザミ、お前に恐怖心を与えたクソ野郎を今度はやり過ぎなくらいに圧倒してこい。そうすれば少しは気も晴れるだろうさ」
「はい!行ってきます」
機械仕掛けの天使……俺の心に楽しさ以外の感情を与えたモンスター。モンスターなのかは若干怪しいけど、今度は今度こそはアイツとの戦闘を楽しんでやる。
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