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1話


ダンジョンというものが世界中に現れて40年。いつ、どこに現れるかわからないそれは人々を恐怖させた。

 

 中から這い出る異形の怪物たち、モンスターと呼ばれるそれらは好んで人を襲う。銃などの現代兵器では傷一つつかないモンスターになす術もなく蹂躙される人間たちだったがある時モンスターを倒せる人々が現れだした。

 

 ギフターと呼ばれる彼らは人でありながら超常の力を扱いモンスターを討伐しその発生源であるダンジョンを破壊する事ができた。

 

 また、ダンジョンやモンスターから得られる資源には様々な恩恵がある事が分かり研究が進められた。

 

 その結果40年経った今では生活の中にダンジョンから得られる魔石というものが必要不可欠となりダンジョン攻略は世界の一大産業と化した。

 

 そんなダンジョン産業を支えているのがギフターを管理し、ダンジョン攻略を斡旋するギフター統括機関であり今日もその窓口は人で賑わっていた。


「すみません、ギフター登録をお願いしたいのですが」


「はい、身分証はございますか?」


「学生証で大丈夫ですか?」


「問題ありません。矢白 風見(やしろ かざみ)さんですね。ご年齢も今日で16歳。おめでとうございます」


「ありがとうございます。昔から早くダンジョンに潜りたくてウズウズしてたんですよ!」


 ギフターの登録には16歳以上と言う年齢制限がある。これは数の少ないギフターの死傷率を下げるために国が30年ほど前に制定した法であり、これを破ったものは一部の例外を除き二度とギフターとしての活動ができなくなる。


「もう少し待ってくださいね。登録さえ終われば研修用ダンジョンに入れますから」


「はい!」


「ではこちらの測定器で矢白さんのギフターとしての能力を測りますので」


 促されるままに魔石を動力とした装置の中心に立つ。

 少しすると装置が激しい光を放ち、モニターには数値が映し出された。


 矢白 風見

 年齢 16

 性別 男性

 職業 無し

 称号 無し

 レベル 0


 体力 E

 腕力 D

 防御力 E

 速さ D

 魔力 E

 運 G

 《職業技能》

 無し

 《特殊技能》

 【共鳴】

 【経験値10倍】

 【成長値10倍】


「特殊技能を三つ?!」


「そんな事より早くダンジョンに入らせてください!もう測定終わったんですよね??」


「は、はあ……そんな事などではないのですが。そうですね。私も職務を全うします!」


 ギフター統括機関は各都市に支部を配置しており、支部ごとに一つ研修用ダンジョンという難易度が極限まで低いダンジョンを支部内に所持している。

 これは主に新規に登録したギフターへ職業を取得させるためのものである。

 ギフターは初めてモンスターを倒すとレベルが1に上がりそれと同時に職業を手にすることができる。

 得られる職業はその人物の適正に合わせたものであり、職業を得た瞬間からギフターは超人となる。

 例外として特殊技能と呼ばれる生まれつきの異能を持ったギフターもいるが数が少なく機関は研究を進めている最中である。


「こちらのダンジョンゲートに入ってください。中にはレベル1のスライムかアジリティラビットしかいません。そのどちらかを倒して職業を取得していただきます。間違えても最奥のボス部屋には行かないようにお願いします。万が一ボスが討伐されれば研修用ダンジョンの利用ができなくなりますので。」


「分かりました!じゃあ行ってきます!!」


「はい。良い職業に就ける事をお祈りしてます」


 ダンジョンゲートを潜ると生暖かい膜を通るような感覚と共に景色が移り変わる。

 先ほどまではギフター統括機関の建物内にいたにも関わらず今は見渡す限りの青空にどこまでも続くような草原の上に立っている。


「ここがダンジョン!すごい!すごいぞ!やっと来たんだここに………あ!スライムだ!確かギフターなら軽く殴るだけで倒せるはず」


 後ろからそっと近づいて全力の右ストレートを放つ。


「キュピッ……」


「ハハ、少しだけ罪悪感」


『ギフター、ヤシロ カザミのモンスター初討伐を確認。適正職業の検索…………該当無し、新規職業の作成を申請、承認……ヤシロ カザミに付与される職業は《エゴイスト》。職業の取得と同時にレベルアップを確認。過去に存在しない事例のため称号を付与。貴方の活躍に期待します、ヤシロ カザミ』


「これが俺のステータス……」


 矢白 風見

 年齢 16

 性別 男性

 職業 エゴイスト

 称号 イレギュラー

 レベル 3


 体力 D

 腕力 D

 防御力 D

 速さ D

 魔力 D

 運 SSS

 《職業技能》

 【技能略奪】 LV1

 【利己主義】 LV1

 【絶対服従】 LV1

 《特殊技能》

 【共鳴】

 【経験値10倍】

 【成長値10倍】


「ステータスってこんな風に映るんだ。ゲームのウィンドウみたい。まあ運以外は平均的っぽいかな。なんか称号も手に入れちゃったけどそれは俺の特殊技能のおかげだよね」


 経験値10倍に成長値10倍。

 モンスターを倒した時に得られる経験値という概念、モンスターを倒せば倒すほど得られ一定の数値に達するとレベルが上がる。

 成長値とはレベルが上がった際に上昇するステータスの値である。


「いやぁ俺に特殊技能があるって分かった時の父さんと母さんの驚き具合は凄かったな」


「キュピキュピ!」


「お、スライムだ。ボスさえ倒さなきゃ大丈夫だろうしもう少し倒していこうかな」


 せっかくだし、職業技能を使ってみるか。


 一部のギフターは生まれた時から能動的な技能を使用するための第六感を持っておりその形はさまざまである。

 カザミの場合は時間の流れが極めて遅い精神世界へ意識を飛ばす様なもので今もそこへアクセスして技能の能力を把握し使用する。


「【利己主義】」


 【利己主義】

 職業エゴイスト専用技能。自らが望む状態へ世界を歪める事ができる。改変の度合いは技能のレベルに応じる。


 技能が発動するとスライムは青く弱々しい姿から禍々しい黒色になりそれと同時にカザミの手にはありふれた鉄のナイフが握られていた。


「これは便利だ。スライムという弱い存在を強いものに変えるのは簡単なようだけど、このナイフを生み出すのには相当な魔力がかかるな。俺への利益の度合いでできる事が変わるのか」


 まあ良いや、今はただ戦いたい。


 禍々しいスライムは身体から液体を吐き出してカザミを襲う。


「おっと!溶解液か、当たったら危ないや」


「ギュビュア!!」


「これが戦闘……お互いが命を賭して戦ってる!たまらなく楽しい!!」


 溶解液を避けながら何度か攻撃をしかけるがスライムは思ったより俊敏であり中々決定打にならない。


「ちょっと強くしすぎたかな、でも……掴めてきた!」


 何度かの攻防のうちカザミの攻撃が早くなっていく。

 するとスライムの面積はどんどん小さくなっていき、最終的には核になる20センチほどの魔石を残して消滅した。


「お、レベルが上がってる!けど、能力値に変化は無しか…なんか強そうな職業だし成長しずらいのかな。っとそろそろ戻らないと受付の人に怒られそうだ」


 入って来た時と同じゲートを潜ると先程と同じく生暖かい膜を通る様な感覚と同時に視界が移り変わる。

 支部のゲートを保持する部屋に出た。


「矢白さん、無事職業にはつけましたか?」


「あ、待っててくれたんですね。バッチリです!良い感じの職業につけました!」


「それはおめでとうございます、あちらの測定器で再度能力値を測ったあと初期のギフターランクを決めますのでどうぞこちらに」


 言われるがままに測定器へ向かい先ほどと同じ様に中心に立つ。


「はい、測定完了です。能力値は…………運がSSS?!しかも新規職業で間違いないなんて、レベルも何故か上がっている……スライムかアジリティラビットではいくら矢白さんの特殊技能でもここまでの上昇は……」


「どうしたんだね、新町くん?」


「支部長!これを見てください!!」


 音もなく受付の女性、新町さんの近くに現れたのは物腰の柔らかなそれでいて強者のオーラを隠しきれない男性、ギフター統括機関六本木支部、支部長。識神 樹(しきがみ いつき)だった。


「これは凄いねぇ。能力値が全てDを超え、低レベルにも関わらず職業技能が三つ、極め付けは完全な新種の職業だ」


 油断ならない瞳でカザミを見つめる樹だが、当のカザミと言えば先程の戦闘の余韻に浸っており、全く気づいていない。


「矢白 風見君。君はその力で何を成したい?」


「え?」


「正直なところ君の職業は異端だ。私の眼でも能力の底が測れない…君が私たちに害をなす存在になるなら私は責任を持って処理をしないといけない。だから問おう、君は何を成したい?」


「ただ、戦いたい。強くなって強いモンスターと戦いたいです!一生!」


「そうか……なら今は君を応援する立場でいさせてもらうとするよ、またね。ああ、それと新町くん、彼にはCランクを与えてくれ。弱いモンスターとばかり戦わせて不況を買いたくない。」


 そう言って手を振りながら部屋を出ていく樹。カザミは受け応えこそしたものの特に考えておらず、いまだ戦闘の余韻に浸っていた。


「初期値がCランク……現役のSSSランクギフター達と同じスタート…矢白さん!おめでとうございます!」


「ありがとうございます!それより早くモンスターと戦いたいので諸々の手続きをお願いしても良いですか!」


 日本のギフター統括機関でも歴史的な瞬間であったがカザミはブレなかった。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 

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