あとがき
あらすじにも書きましたが、このお話は、十年前に私がここに登録するきっかけになったものです。
そして、十年目をきっかけにすべて書き直しました。
なぜ書き直そうと思ったのかは、ここに出てくる『ラルー』を主人公として「あの薔薇が咲き乱れる頃には」を書いたからだと言えると思います。
ラルーが主人公ならもっと謎が解けるんじゃないかとずっと思っていた登場人物でした。
だけど、彼女は以前の物語の中で息をしてくれなかったのです。ワカバやキラは、息をして動き出すのに、ラルーはどうしても肝心なことを濁してしまう存在だったのです。
彼女が世界を滅ぼそうとしたきっかけは、ワカバがトーラを持ったこと。
そして、そこに嫉妬したこと。
大きな理由はたったそれだけのことです。
たったそれだけのことで、彼女は世界を滅ぼそうとしてしまう。とても脆い存在。
彼女の立ち位置はその役目でした。
反面、ワカバはとても弱くて泣き虫。だけど、世界を滅ぼそうとしてもどこか立ち止まることが出来る、とても強い存在として描いたつもりです。
違いは何か。
ラルーはずっと孤独でした。
母の愛情はもちろん、父の愛情も知りません。
かつて母であるトーラが支配した世界では、お姫様的な立場だったかもしれませんが、彼らを怒らせてはならないというどこか母と父の影の中で生きています。
差し伸べられる手があったかもしれませんが、彼女は怖くてその手を掴めなかったのでしょう。
そして、絶対的な母に釣り合うようになれば何かが変わるのだろうと思って過ごしていたのです。
ワカバももちろん孤独な中で過ごしています。魔女の村にいた頃もリディアスの独房にいた頃も、いつもひとりぼっちで過ごしていました。
だけど、確かに差し伸べられる手に対しては、掴むことが出来る強さを持っていました。ラルーよりもずっと悪い環境を過ごすワカバですが、ラシンに出会い、ラルーに出会い、ランドに出会い。
そして、ワカバが幼いころに出会ったことのあるキラに出会った。
同じトーラを持つ魔女のふたり。
違いは『掴んだ』か『離した』か。
十年経って、私がラルーに近づいたのかもしれません。
ラルーのためにも書き直さなくてはならないと思いました。
そして、描いた世界、魔女が簡単に変えてしまうことのできる、人の儚い記憶が繋ぐそんな未来へ、彼女を繋げなければならないと思ったのです。
Ephemeralの世界はワカバの世界とラルーの世界がせめぎ合うお話です。これは初めから決まっています。
いつか全編を書き終えたいと思っています。
このお話のテーマは、正義とは何かです。(以前お伝えしたように9・11がきっかけで書き始めました)
だけど、人間が振りかざす正義など、実は大したものではないと思っています。
だから、これから紡がれる彼女たちの長いお話の序章としての役目を持つこのお話を、どうしても書き直したかったのです。この後は『夢を見る世界』へと。そしてルタの章としての『あの薔薇が咲き乱れる頃には』へと。
最後のイメージも出来ています。
だけど、いつ終わるのかも分からない物語。
私が生きている間に、すべてを書き終えられるように。
そんなことを夢見て。
筆をいったんおきたいと思います。
お付き合いくださったすべての皆様に感謝をこめて。
ありがとうございました。
瑞月風花














