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Scene9

 太陽は完全に隠れるも、真っ暗になりきる直前の時間帯。恭一は再び葵に抱きついた。今度は前からだ。

「え、ちょ、え、え、え?」

「良いだろ……こっちのほうが力が出る……」

 その言葉通り、昨日よりもはるかに速いスピードでレンズが造られ、上空に展開されていった。

 二人のスマホから警報が鳴り響く。この大きな負のエネルギーをもう探知されたのか。

「うるさいな」

 恭一はテロリスト役の傀儡と、恭一と葵二人の分身も生み出した。散っていく人影。

 こいつらを適当に戦わせて、レンズ生成で使う負のエネルギーをカモフラージュさせる。

「大体なんで今日に限って南波がいないんだ」

「いるよ」

「どわぁっ!」

 公園の横の繁みの中で抱き合う二人を、なんとも言えない目つきで見てくる南波。

「どうやら本物のテロリストも動き出したみたいだね」

「さっきの警報はそっちか……じゃあ傀儡は消そう。昨日よりは楽になるな。奴らはどこで暴れてる?」

「すぐそこ」

「え?」

「だからすぐそこ。公園からでも、僕らなら見えるよ」

「マジ!?」

 そう言うか言わないかの間に、血まみれの恭一の分身が、三人の横に落ちてきた。

「キャーーー!」

「ギャーーー!」

「公園には僕がバリアを張っておいた。あそこは安全だよ」

「ちょ、俺らんとこにも張って、それ!」

「そうよ! 危険危険!」

「君達は自分の身くらい自分で護れるだろ?」

「何よアンタ! 冷たいわね!」

「俺の分身を殺れるくらいの奴を防ぐバリアは、さすがに今は無理だ!」

「あ! ちょっとレンズ傾いてきてる!」

「あー! ちょっと待て調整する」

「よしよし、大丈夫。これならオッケー」

 二人がわちゃわちゃやっている間に、南波は再び姿を消していた。

「あ! あいついねぇ!」

「ちょっとどうすんのよ! 戦場になってるじゃないここ!」

 銃声がいくつも聞こえてきた。


      ***


「あれ? お兄さんとお姉さんは?」

 たいせいの母親が、戻ってきたたいせいに声をかけた。

「んー、なんかそこでいちゃいちゃしてる」

「何!?」

 別れた後、結局こっそり引き返していたたいせいに、二人はしっかりと見られていた。


「綺麗……」

「わぁーー!」

 たいせいの言葉に発狂しかけていた葵の父親は、たいせい親子の声に我に返り、心なしかいつもより明るい夜空を見上げた。

「ほお……」

 星の一粒一粒が際立ち、それが洪水のように溢れている。

「この町でも……こんな光景が見れたんだなぁ」

 ちらっとたいせいの母親の方を見ると、わずかに涙を流していた。

 それを見ると、自然に笑みが浮かんできた。

「ん?」

 一瞬目の前の全てがぼやけたような気がした。目をこすってもう一度見ると元に戻っていた。

「いつの間にか俺も泣いてたのかなぁ」

  

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