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Scene3

「ねぇ、ところで会議って何? 私呼ばれてないけど」

 葵の問いに、恭一は明快に答える。

「あー、そりゃ呼ばれるわけない。君みたいな下っ端は」

「はぁ?」

 別に組織内の序列に興味はなかったが、それでも葵はしっかりムカついた。

「何よ下っ端って!! アンタはそんなに偉いわけ!?」

「うーん……」

 恭一は頭をかきながら妙に口ごもった。

「な、何よ」

「これ言って大丈夫かなぁ……君、俺の部下として登録されてるんだよね」

「キーーーー!」

 葵は怒りのままに、恭一に襲いかかった。恭一は爪を立てようとした葵の右手首を掴んで引き寄せ、そっと後ろから抱き寄せる。

「落ち着いて……」

 耳元でささやいた。

「はうっ……!」

 葵は顔を真っ赤にして、その場に崩れ落ちた……かと思いきや何とか踏みとどまった。

「その手は喰わんぞ……!」

「うおっ! 怖ぇ……」


「しょうがないだろう。あの組織は完全年功序列なんだから。赤ん坊の時から所属してるんだぞ、俺は」

 正と負のエネルギーを自在に操る能力の適性を持つ子どもは、見つかり次第組織による訓練を受けるのだ。

 その事情はもちろん知っているが、葵はまだ怒っていた。

「とりあえず! エイプリルフール・ウォリアーズがその日何をしてようが、七月七日は私に付き合ってもらうからね!」

「いやだからその日は正と負のエネルギーのバランスを安定させようと皆神経ピリつかせてるわけよ。下手なことしてわずらわせちゃあさすがにブン殴られる」

「ブン殴られたらいいじゃない」

「ひどっ! あとブン殴られるはたとえだよ? 実際大問題になるからね?」

「どうせ私は会議にも呼ばれない下っ端だし、エイプリルフール・ウォリアーズの都合なんて関係ないもん!」

「うん、ところでエイプリルフール・ウォリアーズて何!?」

 恭一は、さっきから聞こえてくる初めて耳にする単語に、ようやくツッコんだ。

「だってエイプリルフールが主戦場でしょ? エイプリルフール・ソルジャーズにする? エイプリルフール・コマンドーズでもいいよ?」

「いや、どんどんB級映画のタイトルみたいになってってるから……」

「じゃあ組織では何て呼んでるのよ。私達みたいな能力者のことを」

 恭一は再び口ごもった。

「エ、エデ○の戦士たち……」

「え、うそ、パクり? 信じらんない」

「しょうがないだろ! 社長がドラクエガチ勢なんだから!」

「そういうことなら、絶対エイプリルフール・ウォリアーズが良いよね! ね!」

「わ、わかったよ……」

 この呼び名は後に恭一により会議で発案され、正式名称となった。


      ***


 あれから三日、恭一と葵の間では押し問答が繰り返されていた。有効な方策は、見つからないまま。

 どの授業もろくに聞かず、葵の頭はそのことばかりを考えていた。

 特に退屈な、プリントの穴埋めをするだけの世界史の授業中、突如葵は、「あ!」と叫んだ。

 恭一をはじめとした多くのクラスメイトが、驚いて葵を見る(南波は平然としていた)。

 葵は慌てて下を向くが、その顔には笑みが浮かんでいた。


 アイデアが、降りてきた。



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