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【完結】妻は知っていた

作者: イヴェン
掲載日:2021/12/03

「ばあさんや」

「なんだい じいさんや」


「ワシが腰痛で動けない時、いつもそばにいてくれてありがとうよ」

 

 じいさんはその時、ぎっくり腰。ここ数年、ぎっくり腰がクセになってしまったのか繰り返すようになってしまっていた。


 なにしろ腰を少しでも曲げると激痛が走るので、動くのも寝るのもとにかく生活全般をばあさんに頼りきりであった。


「おや 珍しいこともあるもんだ。あんたから感謝の言葉が聞けるとは」

「ワシ、そんなに『オレ様夫』だった?」


「…メシ、フロ、寝る、…昔、結婚したばかりのあんたからは短い言葉しか聞いたことがなかったねえ」


「うぐ……」


「あんたが少しはマシに変わったのは、確か…

 ああ、アレだよ冒険者ギルドの受付の女の子と浮気してその彼女が消えて居なくなってからのことだったかね」



 グホッッ じいさんが急にむせた。



「ギルド長になったばかりの頃、新人の可愛い子と”いい仲”になったことがあったろ?」


「な、なぜそれを…」


 ばあさんはクククッとおかしそうに笑う。


「妻の目を欺けたと思ってた?残念でしたー。


 あの頃あんたはあの受付の子に熱を上げてさ~

『妻とは別れる!この地を離れよう 2人で新たな人生を歩もう』…な~んて言ってたから さすがにこりゃダメだと思って


 あの子の両親に全部話して、娘を引き取りに来てもらったのさ」


「…ばあさん、なんであの時のワシと彼女の会話の内容を知っとるん…?そ、それに、彼女の両親に知らせたって」


「知ってるに決まってるじゃないか。妻たる者、夫に音声記録魔道具を装着してすべてを記録しておくことなんか常識だよ。

 あんたのピアスと靴は音声記録魔道具。────なんだい、そんなにびっくりして。あんたがギルド長になった時にきちんと説明したじゃないか。

 責任ある地位に就くんだから、なにかあった時のために音声を記録しておける魔道具を身につけておきましょうね、って」


「えええええ、あのピアス、ギルド長就任のお祝いじゃなかったのおおおおおお?どうりで石がやけに豪華だと思ってた…」


「単なる宝石じゃなくて魔石だから。はぁ…そういや説明した時のあんたはどっか上の空だったっけ。

 人の説明を聞いてなかったんだ…昔からバカだね…… おおかたあんな可愛い子と一緒に働けて嬉しいグヘへへ、…とか思ってたんだろ」


 図星である。

 冷や汗をタラタラ流すじいさん。


「いやぁ~ビックリしたよ 記録された音声を聞いてたら、あんたがあの子を必死で口説いてんだから。しばらくしたら今度はアレの声さ…いやはや、官能小説も真っ青の言葉責めには感服したよ!ヨッ!作家先生!あんたにあんなに語彙があろうとは!エロ言葉限定でね」


「ばあさん、ワシ、もう…KO負けってことにしてくんないかな…?」


 じいさんは真っ白な灰になりかけていた。


「いやホント「ギルド長、お盛んですね、今日もお楽しみでしたね」って言ってやろうかって毎日思ってたよ。息子の手前、そんな話をするわけにもいかなかったけど。

 でも、いくらシチュエーションに燃えるからって執務室の机の上で『致す』のは感心しないねえ。書庫で『致す』のもね。ホコリだらけで汚いし……あの子もあんたも声が大きかったから、残業してたギルド職員には丸聞こえだったの気付いてた?────あ!それで二人の興奮が倍増したとか」


 楽しげにパチン、と手を叩くばあさん。


「居なくなる前に、手紙ぐらい書いていけってアドバイスしたんだけどあの子は黙っていなくなったのかい ───薄情だねえ…あんたと将来を誓い合った仲だったってのに」


 じいさんはもう蒼白である。


「あの子が急に姿を消してから必死で探し回ってたことも知ってる」

「……」


「それこそ、血眼になって、毎日毎日彼女の知り合いや一緒に行った店を探し回ったりしてたよね」

「…」


「あんたもつらかっただろうけど、あたしもつらかったよ ────想像してみたことがある?」


 妻の言葉を聞いて、うなだれるじいさん。


「すま、ない…本当に」


「そして彼女に捨てられたあんたは、しばらくしおれてたけど ある日急に家族サービスを始めた」


(バ、バレてたのか、アレ…)


「ミエミエだったけどそれはそれでいいと思って。あたしゃあんたと離縁する気は無かった。息子たちがまだ小さかったから…それにそのあとあたしには『生きがい』『生きる甲斐』が出来たから…フフフ…フフッ」


 思い出し笑いをしながら、ばあさんが顔を赤らめる。


(な、なんだ?まさか妻にも愛人がいた、とか?そういえばワシに息子たちを預けて時々妙に帰りが遅い日があったような…)


 にやけた顔を少しだけ元に戻しながら、ばあさんが椅子に座り直す。

「 ────ああ、そうそう、迷惑料って言って彼女のご両親はまとまった額の金貨を置いていったんだけど『ギルド長ではなく奥様がお使い下さい』って言って」


「め、迷惑料…」

「あんたが女遊びに浪費したし、あのあとアンタはヒラのギルド職員に降格されただろう?給料はガタッと減ったけど その迷惑料のおかげで随分家計は助かってたのさ あの時、なんで急にヒラにされたんだろうね?やっぱりあれしかないよねえ」


 不倫騒動のしばらく後に、管理本部の統括ギルド長から呼び出されて職務怠慢を理由にヒラに落とされたのである。


 ばあさんの喋りは続く。

「時間貸しの宿屋には行かなかったのかい?そういう処がいっぱいあったよね?」

「…」


 じいさんはぎっくり腰で動けないのである。よってばあさんのこの「昔語り」から逃げることも出来ない。



「薬の時間だよ」


 息子が部屋に入ってくる。

 話し込んでいたら、だいぶ時間が経っていたようだ。


「お、おお…すまんな」


 じいさんは明らかにホッとし、ばあさんはチッと舌打ちした。

「なんだい。いいところで邪魔して…ノッてきたところだってのに」


「明日は俺の恋人が初めてこの家に挨拶にやってくる日だよ。父さんも母さんも今日はゆっくり休んで明日は万全の体調にしといてくれよ───父さんがぎっくり腰だってのは言ってあるから。それは仕方ないし」


「そうだったね。明日お客様に出す焼き菓子でも焼こうか……は~、よっこいしょっと…ああ、ずっと座ってたから腰が痛いったらないね」


 ばあさんが台所へと行ってから、じいさんは大きなため息をついた。


「母さんとのおしゃべり、ずいぶん盛り上がってみたいだけど、何の話をしてたの?」

「いや たいした話じゃない …ゴホゴホ」


 この末息子は、女運が悪く 捨てられたり騙されたりしてやっとこの度、素晴らしいお相手に巡り合ったのだ。じいさんもばあさんも、もう未婚でいくものと思っていたのだ。だが本人が見つけてきたのならそれは大歓迎。



 次の日。


 息子と交際しているというその女性は実に感じのいい人物だった。


 ひとつだけ、難があるといえば

 その女性の母親の妹が、じいさんの昔の浮気相手だったことだろうか。


 えっ?ばあさんはそれにどう反応したかって?ばあさんはカラッと笑っていた。

「世の中狭いねえ!」と言って。


 むしろじいさんのほうが、オロオロしていたとさ。




◆◆◆◆◆




【浮気相手のその後】〜数十年前〜 ※じいさんの浮気相手がその後どうなったか、の話です。[ざまぁ]成分、ちょっとあります。



 この若い受付の娘だが、

 突然両親がやって来て、半強制的に故郷の実家へ連れ戻されることとなった。


 ギルド長の妻が、娘の両親に知らせたからである。


「娘さんがうちの夫と不貞行為を働いています。今現在、娘さんに慰謝料請求させていただいております。詳細については添付した別紙をご覧下さい。

 娘さんは成人で働いていて生計も住居も別のようですのでこちらと致しましてはご両親様に慰謝料請求をするつもりはございません。

 今回ご連絡を差し上げたのは、娘さん宛てに書簡を送っても返答が無いからです。

 どうかご両親様が娘さんの様子を見に行っていただけないでしょうか」


 …という知らせを受けて、娘の両親が王都へすっ飛んできたのだった。


 ふたつ隣の街に住む、娘の両親は、王都という都会に出ていった娘がまさかそんなことをしでかしているとは知らなかった。


 娘は娘で、まさか親に連絡が行くとは思っていなかった。


「この…バカ娘がッッ!!」「アンタは何してるの!本当にもう…」


 娘の両親が王都にやってきて叱責され張り倒され、娘は自分が慰謝料請求の書簡すら見ずに放置していたことに気付いたのだった。


◆〜浮気相手視点〜


 両親から往復ビンタ。父親、母親から何度もそんなふうに頬を張られたものだから、痛くて痛くてほっぺたがものすごく腫れた。


 そしてギルド長の奥さんの所に私を引きずるように連れていき、三人で平謝りした。

 私はその時、初めてギルド長の奥さんの顔を間近に見た。

 

 美しい人だった。どこか冷たい感じの。私はこの人の夫と…。ギルド長と関係を持ってから、関係に溺れていて夢中で気付かなくて ──、いいや、考えないようにしていたのだ。


「申し訳ございませんでした…」

「うちの娘が、本当に申し訳ありません…なんと言っていいか……」


 奥さんは冷気のような殺気を静かに放っていた。

 私が謝罪した後の目付きが特に怖かった……。


「バカなうちの夫との恋愛ごっこは楽しかったかしら?お嬢さん」


 ぐっと言葉に詰まった。まさか「私たちは純愛のつもりでした」などと返せるはずもなく深々と頭を下げるしかなかった。


 両親から慰謝料支払いの話が出て、なんとか裁判に発展することは避けられた。


 最後にギルド長の奥さんは「夫に、置き手紙でも書いてやって」というようなことを言っていたが


 両親と共に部屋の外に出てきてから両親が怖い形相で

「ギルド長宛ての手紙は書かんでいい お前はこのまま黙って消えるんだ」と言ったのでそれに従った。


 


 そうして退職届だけ奥さんに託して、私は親に引きずられるようにして実家に帰った。ギルド長に、ひと言の別れも言わずに。言えずに。





 実家に帰ってから一年が経ったころ親戚に紹介されて、レストランの厨房の裏方の仕事に就いた。

 大変だったけど忙しくてそれなりに楽しかった。


 私は、そこである人から告白された。


 副料理長だ。30代前半だという彼は、不慣れな私にもいつも優しかった。


「好きだ 結婚を前提に付き合ってほしい」


 そのストレートな物言いに、久々に胸がトクン…とした。 副料理長を、憎からず思っていた私は久々にときめいた。


 でも、そんな私のときめきはあっけなく崩れ去った。



「君、王都で妻子持ちの男と付き合ってたんだって?悪いけど、俺はそんな女とは真剣に付き合えない」

 

ああ、知られてしまったのね…

 彼は噂を聞き、噂の「裏どり」もしたようだった。そのことはいずれ打ち明けるつもりだったのに。


「厨房でも、もう俺に話しかけないでくれ」


 冷たく言い放った副料理長の目には、嫌悪と蔑みの色が浮かんでいた。


 私はそのレストランを辞めた。


 〜女視点〜



  一年以上前のこと────

 ギルド長は、それまで私の周りでは見たことのない見目の良い美しい男だった。


 がっしりとした体躯、朗々と響く良い声、ちょっと長めの栗色の髪に、キリッとした眉。目元は涼やかで切れ長。


 採用された次の日から口説かれた。面接の時から、なんか視線が絡まるなぁ〜とは思ってた。

 既婚者のギルド長に口説かれてあっさり不倫関係になった。もちろん罪悪感はあった。でもギルド長と『愛し合う』うちに、愚かな私たちはそれを「純愛」だと思うようになった。

 「出会う順番が違っただけ」なのだと。そして駆け落ちの相談までするようになっていった。ギルド長が私に溺れているのは分かった。

 私も、あまり深く考えていなかった。


 不倫相手のギルド長は言った。

「君と新たな人生を築きたい 王都を出よう」

「…奥さんとお子さん達はいいんですか?」

「いいんだ。妻とは冷え切ってる」

 

 私たちは、私は、本当にバカだった。




 


 副料理長が話を漏らしたのか、それとも噂はとっくに出回っていたのかそれは分からないが

 レストランを辞めてからも私が「不倫女」だということで周囲から白眼視され続けた。


 仕事を探そうとしても「ウチの職場でもまた既婚者を狙うのか」と言われたり。

 男たちからは、タチの悪い誘いをされることも増えた。


 いつしか心を病み、私は家に引きこもった。


 両親はそんな私を心配して、山奥の親戚のもとに行かせた。もうどこに住んでも同じよ…と思っていたので大人しく従った。


 会ったこともなかった「山奥の親戚」は、母方の遠い親戚の老婆。

 街道からも遠く離れた山奥の住まいまで送ってくれた父親は

「身体に気を付けるんだぞ」と半泣きだった。


 老婆は、無口だったが悪い人ではなかった。山奥で、その土地でしか育たない薬草を栽培して生計を立てていた。

 その薬草はその土地の土でしか育てることが出来ず、土だけ持ち出してもよその土地では育たない。どうやら土地そのものと深く結びついた薬草であるらしかった。専門家もいまだ解明出来ない謎であった。


 王都の専門家が幾度か栽培のために移り住んできたこともあるがあまりに不便な生活なのと、山奥の夜の不気味さに恐れをなし逃げ帰ることが重なり…

 今は誰も住みたがらないんだそうだ。

 遠縁の老婆が委託を受けて栽培し、王都の薬商に卸している。

 

 私は、その薬草栽培の仕事を手伝った。夜は怖かったが、人間がいないということは、誰も何も噂をしないということだ。

 実家のある街も、人口はそこそこ多かった。

 だが山奥のここには、遠縁の老婆と自分の二人きり。(女ふたりというのは不用心のように思えたが、不審者除けと動物除けに小屋の周囲に結界が張られている。)


 過去の自分は賑やかな街が好きだったが、(自業自得とはいえ)白い目に晒された後では山奥の人の少なさがこの静けさがありがたかった。


 


 当時のギルド長妻の内心(彼女が黙って居なくなっただけじゃ、たいしたお仕置きにならないかもしれないけど。もしも「次」があって、あたしの気持ちが冷めていたら、キツいお灸を据えてあげましょうね?あなた。)





 ギルド長を束ねる立場の『統括ギルド長』という存在がいた。


 各ギルド長にとっては頭が上がらない存在だ。

 ギルド管理本部に、その人はいた。


 いかつい顔つきながらなかなか整った美男。身長2メートルのこの地域の統括ギルド長は、実はものすごい愛妻家だった。


 幼なじみ時代から妻を好きで好きでたまらなくて、幼少期から数え切れない求婚を経て10代後半に結婚。

 

 若い頃から整った顔以上に、気は優しくて力持ちでしかも有能とくれば女達が放っておくわけがない。

 だが彼は、どんな美女に誘われようとも妻一筋。


 筆おろしにと叔父に誘われた娼館にすら行かなかった。

 この先妻になる予定の女性しか考えられないから、というのが彼の言い分だった。


 そんな統括ギルド長にとってもちろん浮気する男など論外。


 周囲には、女遊びをする男も多く 堅物である統括ギルド長は変わり者扱いされていた。だが、統括ギルド長にとっては妻だけがいればそれでよく浮気する男の心理など理解出来ないのだった。


「おい聞いたか?冒険者ギルド長、受付の若い子を愛人にしてるらしいぜ」

「なにっ…そ、それはうらやま ───いやいやいや……たしかあのギルド長はものすごい美形だったよな 顔かよ結局」

「ん?あのギルド長ってさ こないだ二人目の息子が産まれたばかりじゃなかったっけ?」

「おお、そうだ。たしか奥さんがどえらい美人で……美男美女夫婦で、出産祝いの菓子がここ管理本部にも回ってきたっけ」


 統括ギルド長の部下の職員たちが雑談に興じる中、見逃せないワードが聴こえてきて統括ギルド長は思わず話に割って入ってしまった。


「 ──── ────…その男は、不貞をしているということか?我が子が産まれたばかりだというのに?……妻と共に子育てもせずに?若い女と乳繰り合ってるのか?」


「ヒッ!!!…え、ええ…最近聞いた噂では、ギルドの事務所の中でも2人はイチャついてるんだとか…」

 身長2メートル筋骨隆々の統括ギルド長から、怒りの炎のような空気が漂う。


 統括ギルド長は許せなかった。


 管理本部には、プライベートには基本的に干渉せずという決まりもあった。だが無関係の部署でもなし、当人は冒険者ギルドのギルド長なのである。

 愛妻家である彼にはその男がどうにも許せず、統括という立場で出来る範囲で調査を開始した。

 2人はギルド事務所の執務室や書庫でも不貞行為に及んでいた。


 その滅法顔が良い浮気男ギルド長のほうが、若い女に溺れていて駆け落ちを企図している……?むむっ……妻と幼子が2人がいながらなんという下衆な男なんだ!と憤りを隠せない統括ギルド長。



 そこまで調査した段階で事態が動いた。

 

 不倫相手の女が、突然実家に連れ戻されたのである。どうやら妻が、女の親に連絡を入れたようだった。

 何も言わず消えた女を必死に探す不倫男。男は日に日にやつれていった。ギルド長としての仕事はかろうじてこなしてはいたが、仕事おわりに女を探していた。


 だがやがてそれも諦めたのか、彼の妻や息子たちと連れ立って歩く姿もよく見かけるようになった。

 そんな4人の笑い合う姿は、事情を知っていなければ「素晴らしい家族」に見えただろう。


 正直、不倫男の業務態度にイチャモンを付けてクビにするか…と少々乱暴なことも目論んでいたのだが

 どうやら彼の妻は、彼の不倫を不問に付すことにしたらしかった。


 統括ギルド長は、勝手な正義感で職権濫用して彼を罰しようとしていた。しかしそれをやめた。


 おそらくあの不倫男の妻は、再構築を望んだのだ。それがあの家族の出した結論ならそれでいい。


 ただし、あの不倫男は一生出世は望めまい。この俺がそうさせないからだ。

 それなりに有能だったから職員からギルド長にもなれた男だが、そのギルド長の地位も今月限りだ。

 ヒラのギルド職員に戻ってもらおうか。クビにはしない。妻子もいるからな。


 …理由は、職務怠慢と管理不足とでもしておこう。


 そして統括ギルド長の顔色を伺う者たちは、不倫男には近づかなくなった。

 統括が、あのゲス男をどんなに嫌っているかを知り空気を読んだのもあるが

 既婚者は彼を疎み、独身者もまた彼を軽蔑した。

 

 ヒラに落とされ、統括からも嫌われたその男は、職員達から白い目で見られ続けた。

 



 





※浮気相手が自分に黙って姿を消した後

当時のギルマスは当然彼女の行方を探そうとしましたが、妻が浮気相手関係の書類を破棄した為、ギルマス(=じいさん)には住所等が分からずに彼女の故郷までは探しに行けませんでした。


※ギルマス妻(=ばあさん)が当時の夫に経緯を話さなかったのは、真実が分からずに苦しむほうが罰になると考えたからです。


※ちなみにばあさんの『生きがい』『生きる甲斐』は、歌劇団の舞台観賞です。浮気ではありません。


お読みいただきありがとうございます。



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