表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大嫌いな世界の中で、愛してるのは君だけだ  作者: カラーコーン人間
16/16

15、※閲覧注意「大嫌いな世界の中で、愛してるのは君だけだ」(別ルート)

※閲覧注意


こちらは最終回の別ルート版となります。ハッピーエンドを見てくださり、そこで満足した方は見ないことをおすすめいたします。

「ハァ……、ハァ……、着いた……」


もうすっかり夜になった。遠いけどサイレンの音が聞こえる。もし本当に彼女がいるなら……、いや、絶対にここにいるはずだ。信じろ、彼女も、俺自身も。


明るくて輝かしい夢のワンダーランド、本当にそんなものが存在するなら連れてってほしい。今から逃げるところはぜひそうであってほしいものだ。


もう深夜だ、閉まっているし、普通はこんなところに人なんて来ないはずだ。


あぁ、さすがに遅かった。交通機関を使うわけにはいかなかったし、一応追われてるんだからできるだけ人気のないところを中心に走って、さすがに休憩も重ねてしまって……、普通ならもうどこかへ行ってるよな。あんまり同じ場所で長いこといるのも良くないし、せめてこの周辺を確かめてから……、


「……だ~れだ?」

「……!」

「どうしたの? 一声で私のことわかったんだよね?」

「もう……、会えないと思った……」

「うん……、私も。でも、会えて本当に良かった」

「……うん、ほんとうに……、良かったッ!」


視界を遮る手を一生懸命握り、そして後ろを向いて林檎と顔を合わせる。


そしてひたすら、彼女の体温を感じらせる愛情表現を示した。こんな熱い抱擁、生まれて初めてだ。


「ちょっと引き裂かれて、寂しかったよね。でも、こんな愛情表現で終わっていいの?」

「今は……、これがいい。後でさせてくれるなら……、とりあえず今はここから離れないと……、もう一度逃げよう」

「そうだね。え、どうして腕時計持ってきてるの? これあったら場所バレるんじゃ……」

「だ、大丈夫、別の腕時計と変えたから。でもデータ復帰したらバレる設定になるのかな? まあとりあえず、見てほしいものがあるんだ……」

「ねぇ……、あれ何?」


周りが暗い、街灯がポツポツと照らしてはくれるが全てを明るくしてくれるわけではない。だがそのある物が少しだけ照らされていて、また暗い空間へと逃げていく。


「だ、誰かいる……」


だんだんとわかっていく、物ではなく者、近づいていく度、俺たちの警戒は高まり、林檎を俺の背後へと隠すように守る。


近づく距離が一段と縮まった、突進してくる、その者の中心から謎の鈍い光が……、


「危ないっ!!」


後ろから突き飛ばされた。途端に視界は地面へと変わり、ついた手を見て倒れた時をようやく理解し、ふと横を見る。


「り、林檎ッ――!?」


フードを被った男だった、男が行ったことはとても信じられないものだった。


謎の鈍い光の正体は刃物……、今それは赤く染まっている。


そんな視界から急に何かが倒れてくる。林檎だ、何で林檎が倒れてきてる。


謎の液体に触れている感触……、手のひらを見ると、赤い……。


「そんな……、どうして……!? こんなはずじゃ、うわああぁぁぁ!!」


男は何を叫んだのか、刃物を地面に落として逃げていく。


今見ている光景が……、信じられない。林檎が刺された? しかも俺を庇って……?


「おい、おい! 返事をしてくれ! 目を開けてくれ!! あぁ……、だめだ、こんなはずじゃ……! どうして……、こんなことに……」


視界が滲む、よく確認できない。林檎は無事なのか、視界の情報が役に立たない、せめて……、声さえ聞こえれば……、


「にげ……て。だ……いす……き」


聞こえた、林檎の声が。何でそんな絞ったような声なんだ、もっとはっきり……、


すると、今度は味覚から情報を獲ることができた。


精一杯顔を近づけ、柔らかい唇を合わせてきた。


何でだ、何でこの味覚は嫌な情報を教えてくるんだ……。林檎の情熱が消える、俺が吸い取ってしまうように、大好きな味と、大好きだと伝わる味と、もう二度と味わえない真実まで、この口づけでは林檎を生き返らせるどころか命を落としてしまうというのか。何て残酷な答えなんだ。


握りしめられた感覚も失う、味覚の情報も終わってしまう。林檎はゆっくりと、重力の赴くまま地に身体を付けようと脱力していく。故意でそんなことをしているはずがないのに……、林檎はどんどん俺から離れていくんだ。


「どうして……。せっかく、教えてあげられたのに。こんな大嫌いな世界の中で……、愛してるのは君だけだって……、伝えたかったのにッ――」


もうこの腕時計で見せる意味がなくなった。ようやく自信を持って見せられる俺の好き嫌い……、第一に、君に見せたかった……。


「あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁッッッッッッッ!!」



芝崎林檎は死んだ、この事実を知る人はいるのだろうか。いやいるよな、少なくともあの林檎のファンであり犯人であるあの男なら。でもできればショックで忘れてほしいな、そうすればこの真実を知るのは俺一人ってことになるんだから。


林檎、ひどいことを言うけど、君がこの世界からいなくなったおかげでわかったことがあったんだ。それは、俺が君のために泣けたこと。君のために悲しむことができた、君だけ愛していることがわかった、君の後を追いたいと思った、それが嬉しいんだ。


今すぐ……、君がいる世界へ向かうね。こういう“逃げ”も、ありだよね。

読んでいただきありがとうございます。こちらはバッドエンド版になります。こんな展開になって、申し訳ないと思います。当時バッドエンドしか考えられなかった時期がありました。それでも気に入っているシーンではあります。しかし共感できるとは思えません。それで良いです、さすがに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ