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48粒目『aberrance:常軌逸脱。異常』ちゃたすま④

『aberrance』


―常軌逸脱。異常。


aberrancyと同じ意味。aberrantの名詞形。―


 繊維大手『門松』の令嬢として生まれた門松須磨子は、しかし令嬢のそれとは程遠い育ち方をした。

物心がついた場所がそもそも日本ではなかった。そこは南大西洋の銀に近い青に浮かぶ孤島で、島での大部分の時間を、須磨子は古城の地下牢で過ごした。

だから須磨子の一番古い記憶は、膝に当たる床の硬く冷たい感覚。その小さな体が組み敷くのは、仮面の女性だ。須磨子の左の手は、彼女の耳の上を流れる黒髪をつかみ、右手はフォークを逆手に握り、振り上げ、そして垂直に振り下ろす。

鈍い銀色の先端は、しかし仮面に弾かれる。

フォークが突き刺さるには、仮面はつるりとしすぎているし、須磨子の力は弱すぎる。何より、そもそも突き刺すのが目的ではない。

須磨子が反応していたのは、仮面の白を覆う不可視の皮膜だ。

水泡のような無数の球体がぎっしりと表面を埋めながら浮かんでは、ひたすら弾け、一部は弾けきらずに硬い尖端となり、須磨子に向かって伸びてくる。

だから幼児の肉体は反応する。仮面の女の黒髪をつかむ力は強くなるし、フォークは激しく振り下ろされる。

『不思議だなあ』

須磨子の視界の端にたたずんで、いつも同じことしか言わないのは、銀髪の老人。

白い衣服に長い身をつつみ、あらゆる方向にうねり跳ねた髪が、石造りの天井をこする。

『不思議だなあ』

老人は茶色の板に何かを書き続ける。

いつも同じ事しか言わない。

ただ、話す言語が違う。

日本語だったり、英語だったり、韓国語や北京語だったりする。


物心がつく前の、大半の『落ち着いた時間』を須磨子はこの老人と過ごした。

人間の姿形をした物体の表面には、必ずと言っていいほど、透明な被膜が存在し、その由来が写真でも絵画でも液晶の動画でも、確実に被膜の泡は尖端となって伸びて来て須磨子をあやつるが、老人の顔面には被膜は存在しなかった。

だから、須磨子は老人とだけは、須磨子として交流することができた。


『僕は精神科医なんだよ。犯罪心理学と発達心理学が専門でね。元をたどればフロイトだな。フロイトは行動原理に性欲を規定していてね、子供にもあるって言ってるんだな。植物は光に誘導されて枝を伸ばす。子供は食欲と性欲に導かれて学習する。犯罪者は言わずもがな。でも、君は違う気がする』

『何が違うの』

『君が僕に任された時は、本当に、こんなちっちゃな赤ちゃんでさ。爪が剥がれていた。引っ掻くんだな。猫は爪を保護するために爪を研ぐ。伸び過ぎたら大変だからね。でも君は違う。攻撃のために爪を使う。異常な負荷がかかるから、爪も剥げるんだけど、赤ちゃんの君は構わなかったなあ。筋肉のリミッターが機能してないのか、全力だったよね。覚えてなくても不思議ではないけど。

でも、ほっとくと爪どころか指が駄目になるから、フォークを持たせたんだよ。君はとても賢くて、実際この年齢で4カ国語を話せるわけだし。まあ、ある種類の犯罪者ってのはとても知能が高いんだけどね。彼らは大体、怒りや哀しみを原動力にしてるんだ。不幸な幼児期を過ごして、それに整理をつけたい。でも君の場合は違う。幼児期から攻撃行動を取る。しかも、攻撃はするけど悪意はない。好意や執着もない。何があるのかなあ。不思議だなあ。

君の行動は、異常者としても常軌を逸脱してるんだ。じゃあ、人間の形をした物体に反応する機械みたいなものかというと、そうでもない。君は僕は攻撃しないだろう。これもまた不思議なんだな。僕はさ。ほら。ただの老いぼれで、精神科医なんだよね。カウンセリングは結構してきたよ。でもそれだけなんだよね。うーん。不思議だなあ。でも正直、焦っている。来年君は就学年齢に達する。そして僕の血液は、ガンのマーカーに陽性を示した。僕は遅かれ早かれ死ぬし、そうしたら君は1人になる。人間を襲うその挙動を何とかしないと、君はこの孤島に閉じ込められたままだ。本当に島流しだよ。もちろんそれがご両親の意向かもしれないけどね。でも君を預かった名目は治療なんだ。僕は金額に値する労働を行う責務がある』

以下、個人的なメッセージです。


遥さんへ。

こんにちは。

色々と良かったです。


まず、療養解除。本当に良かった。でもご無理なさらず。

次に、更新について、良かったです。

というのも、俺の目標がですね、遥さんが、何となくなろうを見たら、ことばの砂が更新されている、と気づく。

そんな状態の維持が理想なのです。

あー,勅使河原作者書いてるんだなあ、じゃあ読んで見るかー。うん。勅使河原作者って感じの書き方だなあ。

と、思ってもらえるのが、理想なのです。

というのもですね。何回も言いますがね、俺は遥さんの抱える喪失を埋めれないんです。ネットの関わりですからね。でもほら、家に帰って、くたくたに疲れてテレビでもラジオでも、何かつけていつもと同じ、内容は違うけど代わり映えのしない番組見たり聴いたりすると落ち着くでしょう。

俺の脳細胞は今後もどんどん壊滅していくし、内容も酷くなっていくでしょう。実際、文字の認識力も駄目になってきて、業務に支障も出てますからね。それは既定路線なんですが、でも続ける事はできるし、続ける事が遥さんというかけがえのない読者さんの、一種の安心になるなら、それは書く人としての俺の幸福なのですよ。

ということで、とにかく更新をし続けたいのですが、頭が駄目になってて。哀しみ。

でも頑張ります。

風邪はまあ、大丈夫です。頭痛がね……。

台風が南にあると辛いっす。


エリザベス女王、それ、思いました。

まじかあ。スコットランドの城かあ。

アンガス牛食べてらしたろうなあ。

ちなみにソックスはイギリスの女王が履き始めたとかなんとか。あやふやだけどそんなエピソードあったはずです。英国は昔から新進気鋭っすね。

今回は須磨子の話ですが、次回も須磨子です。

脳機能が落ちても、変な話は書きたいという。喜んで頂けて恐悦至極。

大丈夫、俺も支離滅裂。頭も五里霧中っす。

でも遥さんの感想に元気をもらえます。

やる気出てきた。

遥さんもご無理なさらず、健康にお過ごしくださいね。ではでは。

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