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13粒目『abasement(品位を落とすこと。失墜。卑下)』爆パイ桜沢先生

『abasement』


―品位を落とすこと。失墜。卑下。


abaseに名詞のmentがついてabasement。品位は高みに。這いつくばるしかない者には落ちることすら許されない。中二病的ニヒリズムが香る言葉。―


「でも似ていると思いませんか? 僕は思います」

「あのね。そういうことじゃないの」

 授業で習った平行線が頭に浮かんだ。

 職員室の椅子に座って桜沢先生は僕を見上げていて、僕は先生の爆弾的な胸じゃなくて目をちゃんと見ようとしている。

 僕たちはその意味でちゃんと向かい合っている。つまり直角だ。

 視線は直角だけど意見は平行線だから、この場合の僕たちに線を引くとしたら何だろう?


「ポッ〇ーって有名なお菓子じゃないの。あれ。あたしも好きなのよ」

「王様ゲームでありますからね。今度みんなでしませんか。良かったら2人ででも」

「絶対にしません。君は何でこう、全部を台無しにしたがるの? テストで自分の名前じゃなくてSAKURAZAWA MY LOVEとか書くの?」

 僕は傷ついた。これ以上ないってくらい緊張して、でもとても丁寧に筆記体であの愛の言葉を書いたのに、心は通じなかった。世界は残酷だ。

「字が汚かったですか。心を込めたのですが」

「違う。字とかじゃないの。97点だったのよ。何でわざわざ0点にするの?」

 補習を受けたいからです。貴女の凶悪な胸を下から見上げたいからです。

 ……とはちょっと芸がなさ過ぎて言えなかった。


 だから僕はじっと桜沢先生の目を覗き込んだ。

 先生は我慢比べと受け取ったらしい。僕の瞳孔はハートの形の光線を放っているというのに。


「……で、何でわざわざあんなこと言ったの? 今日は、11月11日は何の日ってきいたでしょ。別に間違えても良かったのよ? あれ以外の答えなら、本当に何でも良かった」

「何でも、とは」

「チーズ鮭の日、下駄の日、西陣の日、日本鉄道設立、恋人たちの日、宝石の日、麺の日、鏡の日、ピーナッツの日、サッカーの日、靴下の日、乾電池の日」

「渋沢栄一の忌日が抜けてますね」

 桜沢先生は一度うっとなって、それから恨めし気に僕を睨みあげてきた。可愛い。


「それ答えればいいじゃない。何で……!!!」

「勃起の日は僕オリジナルの冗談です。正直ですね。今でもこらえてるんですよ。先生の凶悪なおっぱ……」

 桜沢先生が立ち上がり僕をびんたする前に、視界が横に吹っ飛んだ。体育教師が立ち上がり拳をフルスイングしてきたのだ。

 桜沢先生はそんな野蛮の極み教師を必死で止めていた。やっぱりそうだ。先生は僕が好きだ。愛がなければ体育教師と一緒になって僕を殴っているところだろう。さすが運命の人。

 僕のMY LOVEである。

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