復讐が面倒だからキャンセルしたけど結局面倒なことになった
俺はアレン
剣と魔法の世界、此処アルカディアでSSS級冒険者として活動している。
俺には日本で高校生だった前世の記憶がある。まあいわゆる転生者ってやつだな
「アレン、あーん」
「お、おい//」
隣に座った銀髪美女がソーセージをあーんしてくる。周りがヒューヒュー冷やかす。今はギルドに併設された酒場で厄災級の魔物を無事討伐した祝いに一杯やってるところだ
銀髪美女の名前はソフィーティア・フォン・ヘレスティア
ヘレスティア辺境伯家第三子にして長女。公爵家相当の地位を持つ貴族のお嬢様にして7属性の魔法を自在に操る天才…というか鬼才?だ。貴族ではあるのだが、辺境伯家令嬢という立場のため箱入り娘とは真逆のお転婆だ。
気さくで身分は余程のことがない限り持ち出さない聖女様…なんて領民やギルドのみんなには言われてるけど……実は本人が自分が貴族だということをすぐ忘れるだけである。そんなソフィーが大好きです!あ、正規の婚約者ですよ。来年結婚します。俺はお義父様がいくつか持ってる爵位のうちのザネッティ子爵を賜り辺境伯軍団の一翼をソフィーと担う予定だ
「まったく、若いっていいわねぇ」
「師匠も呑みましょうよ〜!」
「ささ、お注ぎします」
「うふふ、ありがとうアレン…ソフィーもすっかり乙女になっちゃって…出会った頃のツンとした感じがまるでないわねぇ」
「もー!それは言わない約束ですよぉ!」
同じテーブルで微笑んでいるのは、アキレア・ヴィソトニキ・カサブランカ
白髪に黄金の瞳。女神の生まれ変わりとされるハイエルフ。齢3500にして二十歳前後の美貌。今は彼女以外使える者が居ない古代魔法の使い手であり、俺とソフィーの師匠でもちろんSSS級冒険者でもある
俺たちは3人で女神の吐息というパーティーを組んで活動しているが、ハーレムでは断じてないのはお分かり頂けると思う
俺はソフィー一筋だし、師匠からしたら俺もソフィーもお義父様も国王もみんな子供みたいなもんだしな。ちなみに転生者であることも2人は知っている
そして、チート転生かと聞かれるとこれも違う。実際、子供の頃はそこら辺にいるただのガキんちょだったしな。今のSSS級冒険者の地位はレオンの身体が持ってる才能や素質、そしてなりより地道な努力によって得たものだ
まあ、ぶっちゃけると俺は前世のラノベのパーティー追放からのざまぁ小説の主人公と名前やら産まれた村やら色々被りまくってるんだよな
5歳の時に前世の記憶を取り戻した俺は未来のパーティーメンバーからやんわりと距離を置いてフェードアウトすることに成功。
違う街のギルドでソロでスタートして暫くはソロで頑張っていたら師匠に才能を見出されたり姉弟子であるソフィーとアレコレほんのり青春イベントが起きたりして今に至るわけだ
これについてもソフィーと師匠には話してある。まあ前世にそういう物語があって妙に一致してるとしか言ってないけど。今生きてるこの世界は明らかに現実だしな
ついでに言えば、ソフィーや師匠は小説には出てこない。この世界はちゃんと人々が個々の人格を持って生きてる現実なんだとそのことからも実感できる
「おい!アレン!聞いたか?!…あっ姉御と大姉様もお疲れ様っす!!」
「何を?…つか血相変えてどうした?!」
「姉御はやめてって言ってるでしょ!」
「大姉様もやめてね」
スキンヘッドの大男が俺たちのテーブルに駆け寄ってくる。このおっちゃんは名前はアドルフ。俺が初めてギルドに来た時定番値踏み絡みイベントをやってきたおっちゃんで、当時は俺はそこまで強くなかったけどギリギリ勝って、そこから仲良くなったのだ
「ほら…ええと…お前と故郷の同じA級パーティー……くそっ名前が出てこねぇ!!」
「……青龍の咆哮か?」
「そうそれ!!」
青龍の咆哮は自分勝手勇者とクソビッチ聖女候補とクソビッチ賢者候補と脳筋戦士の四人パーティーだ
まあ要するに本来なら俺を召使いのようにこき使ってから罵詈雑言を浴びせて追放して最終的に酷い目にあうパーティーだな
「依頼の途中で仲間割れして、男2人が殺し合い…女2人は依頼放棄して逃走だ…パーティー内の殺傷事件は普通の冒険者同士の殺傷案件より重罪だってえのによ…しかも放棄した依頼は商隊の護衛だったからな…ギルドの信用問題にもなってくるぜ…」
…何やってんだあのバカ共…
「「それで!!商隊は無事なのか?!なの?!」」
「ああそれは大丈夫だ…です
たまたま依頼帰りだった俺らが慌てて引き継いで、目的地が此処だったんで一緒に来て今依頼完了したところだ…です」
ソフィーと問いかけが被ったからアドルフのおっさんの語尾が変な風になっとるw
まあ護衛対象に被害が無かったのは良かった。そして脳筋肉盾戦士が瀕死の重傷、自分勝手クソ勇者は負傷したまま逃亡ときたもんだ
それでもこの時点では他人事だったのだが
〜3日後〜
「教会の推薦状もあります!お願いします!…えっとあの、私アッチもいけます!…そ、その…私も好きな方なので!」
「夜は私のことも好きにしていいからさ!!あ、昼でも朝でもいいよ!お願い!!私も仲間にして!!幼馴染じゃない!!」
眉間に皺を寄せる師匠、侮蔑の眼差しで2人を見据えるソフィー、汚物を見るような目で2人を睨みつける受付嬢の皆さんと冒険者の皆さん
俺?
なんかね、こうね、一周回って表情筋がさっきから仕事しませんww
今俺の顔マネキンみたいになってるわ絶対
はい。
殺し合いには関わってないので問題行動は依頼放棄のみなのと、教会とか魔術協会とかの後ろ盾との兼ね合いとかで大した処分を受けなかったビッチ2人が同郷のよしみで拾って!!と朝からわめいています。
「…アレン君はどうするかね?」
「パパ?!」
「お義父様?!」
みんなが立ち上がり敬礼をする。そこには威風堂々とした美丈夫が執事を一人だけ従えて悠然と立っている
「因みに貴族…それも辺境伯の観点から言えば彼女達を第二第三夫人とし、子供を産ませて戦力拡大を図るのが正解だ」
「いやいや(こいつらを側室にするとか)ないです」
あ…本音がポロっと
「……くくっ
ふははははは!!それでこそ最愛の娘を託せるというものだよアレン君!!」
「もう…大好き」
「あ、じゃあメイドでいいです!メイドで!教会が一目置いてる聖女を召使いにして、気まぐれで抱けるなんて世界でアレン様だけですよ!!」
「私も!!縛ったり、蠟を垂らしたりしても良いわよ!…その、アレンならだけど!」
お前ら…よく魔王様降臨(お義父様)してる前でそんなわかりやすい演技でクネクネしながら俺に媚び売るよなぁ…ある意味スゴイぞ
呆れと、幾らかの驚きをもってそんな二人を見ていたら横でソフィーが笑った
「…本当に、彼女達には何も感じないのね…殿方は頭と下半身は別物だとお母様に習ったけど」
「いや、それはそれで間違いじゃない部分もあるけど…流石にこれは気持ち悪いという感想しかないよ…それだけだな」
「ふふっさすが私の旦那様!」
ソフィー可愛いよおおおおぉ!!!
…そもそもまだ俺が小説で追放される歳にすらなってないんだが?!
クソパーティーの人格小説よりひどくなってね?!
というかこのビッチ達の噂も色々聞こえてきてるから娶る以前に近寄るのも嫌なんだが?!なんか美人局みたいなことして小遣い稼ぎしたり色々酷いらしいからなぁ…
というわけで。
見下されることは無かったけど、どのみち面倒なことになりました
誰かこのビッチ達を引き取ってくれ!!