定期テスト1
今日は6月だ。俺たちが通う高校では6月と12月、そして3月と、学年を通して3回しかテストがない。1回でも点数が低かったりすると、次のテストで学年トップを争わなければいけなくなったり、通知表が悲惨になったりする。ふゆのところには敵わないが、一応県内有数の進学校なのだ。
さて、ここで問題です。今俺は、なにをしてるでしょ〜か?
うん、わかるわけないよな。俺もな、うっかりしてたんだ。6月に入ったらみんな死ぬ気で勉強する。さっきも言った。大事なんだもん、1つ1つが。そんなのは俺もわかってる。でもさ、ホケモンが新作出したらやるだろ?!あの世界レベルで有名なホケモンだぞ?!案の定、勉強はせずにテスト1週間前。てことで正解は、小春に土下座して勉強を教えてもらおうとしてる、でした〜!
「小春!」ズザァァァァ
「な、なによ、春岐。そんなスライディング土下座なんか、クスっ、しちゃってさ〜。」
「笑ってもいい。なにされてもいい。でも勉強だけは教えてほしい。その偏差値80越えの頭脳を俺に貸してくれ!!」
そうなのだ。小春はめちゃくちゃ頭がいい。ふゆと小春は一緒の高校に行くと思い、絶望してたほどだ。定期テストは常に10番目をキープ。曰く、
「このくらいがちょうどいいのよ。授業1回受けただけで取れるし。」だってよ!なんだよ、鈍いくせに。その頭脳は俺と接する時だけスリープモードにでも入ってんのか?
「ちょっと春岐、聞いてる?」
「え、なにが?」
「だから、私が移動する時はお姫様抱っこするって条件ならいいわよって言ってるの。」
は?え?ちょ、ちょっと待って。え?俺が?小春を?お姫様抱っこ?!ずっと?!
「あぁ、ごめん。3日間だけでいいわよ。さすがにずっとはね〜(笑)」
「ああ、そうだよな。3日だよな、よかった。よくねぇよ!なにが、ずっとはね〜(笑)だよ!お前この前のタンバリン忘れたのか?!」
「え〜っと、春岐?立場を整理しようか?頼んでるのはだ〜れ?」
「…………俺です。」
「だよね?じゃあ勉強は教えなくてもいいのかな?」
「ぐっ、そ、それだけはマジで勘弁です。」
「だよね?なら決定でいいよね?」
「……………はい。」
「えぇ?聞こえな〜い。これじゃあ勉強教えられないなぁ。」
「小春を3日間お姫様抱っこで移動させるので、勉強教えてください!!」
「よろしい。じゃあさっそくよろしく〜(笑)」
どうしてこうなったんだ。俺は放課後、小春を抱っこしてテニスコートに向かっていた。何?これ。罰ゲームだよな?ものすごくいい匂いするんだけど。太ももめっちゃすべすべだし…小春の体はいわゆる巨乳ではない。が、スラリとしつつも出るところは出て、世の中の女子の理想的なボディーをしてると思う。しかも俺こいつのことが好きなんだぞ?あ、そっか。これ1周回って罰ゲームなんだな?そうかそうか。って、そろそろ腕が疲れてきた。
「小春、そろそろ…」
「え?テニスコートもっと向こうだよ?」
「腕が疲れたんだよ。頼む、小春〜!!」
「あたしが重いって言いたいわけ?!」
「ち、違う、そそそ、そうじゃなくてだな、えと、えっと、そう!小春はテニスやってるから筋肉がついてるんだよ。だから重くても、あ。」
「へ〜、そう。じゃあ今日はもういいや。」
「へ?お、おう?」
「また明日ね。」
「おう、またな…」
夜になって俺は、どうやら怒らせたようだということに気づいた。LIKEでいくつかメッセージ送ってみたけど、全部既読スルー。これ意外と怒ってるやつだなぁ。このままはまずい。勉強も教われないし、気まずくなるのはもっと嫌だ。電話するか。
プルルルル。プルルルル。プルルルル。
「もしもし?」
「もしもし、小春?」
「そうだけど、何?」
「あーっと、さっきのこと謝りたくてさ、デリカシーなかったよな。ごめん。」
「………………」
「もしもし?」
「明日、スタハ奢ってくれるなら許す。」
「スタハでいいのか?わかった、明日な。本当、悪かったな。」
「もういいよ♪ それより腕立てしなくていいの(笑)」
「え、なんで?」
「スタハまでどうやって行くと思ってるの?」
「え、ま、まさか……」
「じゃあね〜(笑)」
ガチャリ。あぁ、俺はなんてことを約束しちまったんだ。あいつの家から笑い声が聞こえ、俺は不貞寝した。
定期テスト編突入です。小春によく注目しといてください。