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2.愛す人との出会いと別れ

 三十三歳の時、ノースサンペルグ冒険家協会とサウスサンペルグ冒険家協会の第三回カルカティタ合同探索会にて、タタはパトリシア・カーターという少女と知り合う。


 アンドロメスィックロムス・カーターとリリーフィックス・カーターの娘。

 かつてサウスサンペルグ冒険家協会を設立したメンバーの一人、シャックーリートマラッナイ・カーターの子孫でもある。


 彼女は、サウスサンペルグのランキングでは二位。

 目鼻立ちの整いぶりは並であったが、とても純粋で、綺麗な心の持ち主。十五も年下の彼女に、タタは一瞬で惚れた。


 その後、数回の合同探索会を経て、二人は親しくなってゆく。そしてやがて、正式に恋人同士になる。



 七年後、タタとパトリシアは結婚するに至る。


 その時の二人の年齢は、タタ四十歳、パトリシア二十五歳。

 共に有名な冒険家であった二人。しかし、結婚後は静かな生活を望み、ビジネシスという辺境の村へ移った。


 タタもパトリシアも、子育てはゆったりと行いたいという思いを持っていたのだろう。恐らくは。


 そして二人は、三人の子どもに恵まれた。


 一人目は女の子、パト・パパパ・リシア。

 二人目は男の子、タートル・パパパ・ネック。

 三人目はまた女の子、ルーズ・パパパ・ソックトゥ。


 タタは、愛する妻と子ども三人と一緒に、穏やかで幸福な日々を謳歌した。


 時折近くの森に出掛けては、カトレアバードやマモンスンを狩る。そしてその羽根や牙を、村を出入りしている商人に売り、お金を得る。

 それがタタたち家族の生活費となっていた。


 暖炉の前で寛いだり、木の実やパンを食べたり、そんな穏やかな暮らしが、タタにとっては何よりの幸せだった。



 そんなタタに、転機が訪れる。


 彼が六十五歳になってまもなく、パトリシアが亡くなったのだ。


 彼女は病にかかってしまい、一ヶ月も経たぬうちに命を落としてしまった。あまりに早い別れだった。


 心優しきパトリシアの死は、子どもたちにも影響を与える。


 長女のパト・パパパ・リシアは、田舎暮らしを嫌い、都会に憧れていた。そういったこともあり、母親の死をきっかけに、都市サルマンへ出ていってしまった。


 宿で受付嬢として働く、と、書き残していったらしい。


 長男のタートル・パパパ・ネックは、両親と同じ冒険家を志し、ノースサンペルグ冒険家協会へ入会。二年三ヶ月でランキング一位に達するという、両親を遥かに越える記録を叩き出した。


 また、父親がかつて制覇したノーザライデン、タタパパ、チッチクショウッの三大会のうち、ノーザライデンとチッチクショウッで優勝。タタパパでも準優勝。他に、パパタッタ、パタタパタ、ハパタバタカなど、三大会より小さい規模の大会でも優勝を重ねた。


 次女のルーズ・パパパ・ソックトゥは、農業をしたいという夢を抱き、農業が盛んなユメミテル地区へ移住。そして、農業への熱意を認められ、領主の息子シターイ・ノウカと結婚した。


 ルーズは生涯、シターイの良き妻であったらしい。また、シターイの病弱な妹ナリターイ・ノウカを姉のように慕っていたと、記録が残っている。


 パトリシアの死をきっかけに、子どもたちはそれぞれの道を歩み出した。


 もしかしたら、死こそが、パトリシアの最後の仕事だったのかもしれない。


 パトリシアは最期まで母だった。

 その命を懸け、子どもたちを導いたのである。

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― 新着の感想 ―
[一言]  家族の存在が錨なこともあるのでしょう。  船が腰を据えることができるのも錨のおかげですが、錨をおろしたままでは、航海へと出ることはできません。  絆は、ときに呪縛ともなりますから。
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