第5話 「家族」
久保の漫談が終わったので、水島と体育館にむかった。
むかった先は言うまでもなく和菓子屋さんだ。と言うのは嘘で、体育館だ。
ここで一学期の締めくくりが行われる。学校というものは体育館に始まり、体育館に終わる。思い返してみれば今学期はとても体育館だった。
そうこうしているうちに、校長が出て来た。
校長と言えばハゲで教頭と言えば白髪というイメージが世の中には深く浸透しており、多くの人がそうに違いないと思われたことだろうが、俺の学校の校長はハゲで教頭は白髪だ。
1年の頃はよくこの二人にあだ名を付けた。週に2,3回ほど新しいあだ名が生まれては、また消えた。しかし、昨今の使い捨ての風潮は資源や産業の崩壊に拍車をかけるとし、世界各国でイエロー基準(警告)とレッド基準(禁止)を設けて将来への渡し舟を今から造っておこうという声が多く寄せられた。これをリサイクルカラーの合唱という。
このリサイクルカラーの合唱により、現時点では校長がナッシング君、教頭がホワイティ(ホワイトティーチャーの略称)に定着している。
教頭に関しては、「オセロの後手」「アタック漂白先生」「逆みのもんた」「シロ」など様々なヒット作が生まれた。
その中でも「アタック漂白先生」は同時にシングルカットされ、ビルボードで4週連続1位、メロディーメイカーで8週連続1位に輝いた。
そうこうしているうちに出てきた校長もそうこうしているうちにいなくなった。
俺はこの時の校長の話を一言も覚えていない。
朝、仕事に行こうと玄関で靴紐を結んでいた親父が「たまご焼きは半熟が一番うまい。人間も半熟なうちが一番うまいんでしょうね。」とボソリと言った一言の方が印象深かった。