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第27話 「鼻糞」

これからは鼻糞のことを鼻神と呼ぶことにすると言ったが、やっぱり辞めておく。

俺は鼻をほじって鼻糞が全然なかった時はかなり寂しい思いをしている。

今からちょうど一年くらい前だったか、鼻をほじってもほじっても鼻糞の姿を見つけることができなかった時期が確かあった。その時は両親の絶えない喧嘩や明日のパンをも買えないぐらいの貧困など、いわゆる家庭的な事情もあり、俺の心は結構滅入っていたのかもしれない。そのような中で、鼻糞が採取できないという事実に巨大な絶望感を覚えたものだった。

いつしか、鼻をほじろうとした時に「どうせ、今日も鼻糞いないだろうな・・・。」という余計なことを考えてしまい、鼻の穴に指を入れることも怖くなってしまっていた。

それから数日間、鼻をほじることをやめてしまった。


ある時、白川君と細根君と遊んでいる時だった。

確か公園で野球をしていて、俺は外野の守備についていた。

白川君が打者で細根君が投手だ。

3人で打者→投手→守備の順番でポジションを交代交代していたが、これが何度目の交代か忘れるくらい野球に没頭していた。

投手である細根君が「いくぞー!」と元気な声で投球フォームを実施しているその時、俺は何気なく鼻の穴に指を入れていた。

「あ。しまった。」と俺は思いとどまろうとしたのだが、人差し指の先にガサっと何か固いものが当たるのを感じた。

こ、これは・・・!!


鼻糞だった。

頭が真っ白になっていた。

何を考えて何が見えていたのさえもわからない。

俺は早く久しぶりの鼻糞が見たいと思いつつも、もっともっと奥にもあるのではと指を回転させた。

早く、早く、早く、早く!

渾身の思いで引っこ抜いた指の先には、今まで見てきた歴代の鼻糞よりも強い骨格をしており、色も光もツヤも言うことなしの永世名人クラスがそこにいた。

涙が流れてきて止めることができなかった。

俺は指についた鼻糞に、

「生まれてきてくれてありがとう・・・。」と呟いた。


いきなり泣き出した俺を見て、細根君と白川君が慌てて走ってきた。

俺は二人の目の前で、その大きな鼻糞を食べた。

二人とも不思議そうな顔をしていたので、

「何しょげてんだ、二人とも。ほれ、行くぞ!!」

と二人の肩をたたいた。

そして3人は猛ダッシュで夕日にむかい走り出した。

それから俺らの姿を見た者は誰もいない。


数十年後、俺の残したと思われるノートが千早赤阪村から出土したらしい。そのノートの書き出しにはこう記されていた。


8月17日くもり

何でみんなは鼻糞食べないのかな?

ちゃんと原産地わかってるのに。

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