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第25話 「指摘」

俺はけつたたき未遂の余韻で両手を横に広げながら住宅街を走り抜けた。

その光景を見た周りの人達は「零式艦上戦闘機の再来だ」と我れも我もと家の外へ踊り出た。日の丸の国旗を片手に応援に来る者まで現れ、たちまち狭い路地は混乱した。

やがて警察まで殺到する騒ぎとなり、中には火炎瓶を車や家屋に投げ込む者まで現れた。

外はかなり暗くなっていたが、燃える炎と住民の活気で日が出ている時よりも明るく感じた。

俺はそんな事態もかえりみず、両手を更に強く伸ばして一生懸命に走った。


そうこうしているうちに人っ子一人もいない交差点に出た。

俺はそこを一目散に駆け抜けようとしたが、ちょうど俺の正面向こう側からこちらへ走ってくる者がいたため、ハッと立ち止まった。

暗い夜道は薄明るい街灯だけが頼りなのだが、やはりその明るさだけではこちらへ向って来る者の正体がわからない。

とりあえず俺は嫌な予感がしたので、その場から少し離れた住宅の庭に身を隠すことにした。間もなく正体不明の者が近くまで来た。

よく見ると萌美ちゃんだ。


「くそったれが。奴め、どこに行った・・・」

双眼鏡を片手に萌美ちゃんが呟く。

萌美ちゃんの奴、俺が寄合に行くのを遠くからずっと監視していやがったな。しかもあの双眼鏡、どこかで見覚えが・・・。

そうだ、あれは俺のだ!

萌美ちゃん、いつの間に俺の双眼鏡を?


俺は何がどうなっているのかさっぱりわからなかったが、今萌美ちゃんに見つかるのは少々厄介だと思い、庭に立て篭もり続けた。


「うおおおおおおおお!!!!」

萌美ちゃんが両腕で胸を左右交互に叩きながら叫び出した。

まるでケロッグコンボの様だ。


そういえば、中学のとき同じクラスにゴリさんというあだ名の奴がいた。

こういうと愚かな日本国民供には「どうせ風貌がゴリラに似ているからゴリさんというあだ名になったのだろう」と思われるかもしれないが、

こいつは風貌がゴリラに似ていたのでゴリさんというあだ名になった。

俺とゴリさんは特に仲が良かったわけでなく、他人に俺らの関係を説明する時には「知らない人以上、知り会い未満」と言っていた。

そんなある日、俺はゴリさんに話しかける機会があったのだが、俺はゴリさんの本名を知らないことに気付いた。

みんながゴリさんゴリさんと言うもんだから本名が何なのか考えたこともなかったのだ。

仕方がないので俺はゴリさんと仲が良いわけでもないのに「ゴリさん、口にごはん粒が付いてるよ」とあだ名で話しかけてみた。

すると、ゴリさんは「お前がなれなれしくゴリさんて呼ぶんじゃねえ!」と言ってきたから「おい、ゴリラ、口に歯糞がついてるぞ」と言ってやった。

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