第18話 「敵手」
ここのパン屋はこじんまりとしていて建物自体も古く決して綺麗だと言えるようなものではないが、味の方はソコソコいける。
俺は焼そばパンとチーズコロッケパンを買うことにした。
いつもなら三角フレンチトーストも買うのだが、今の俺にはどう見ても自転車のサドルに見えてしまうため買うのを断念した。
勘定を済ませ、さて帰ろうかと店を出ようとした時、
なんと萌美ちゃんが店に入ってきた。
「も、萌美ちゃん!」
萌美ちゃんは俺に気付くや否やいきなり襲いかかってきて
俺の焼そばパンとチーズコロッケパンを剥奪した。
そして「ファイヤー!」と言ってチーズコロッケパンを店の外に放り投げた。
この事態に俺は怒り狂い、萌美ちゃんの右腕に空手チョップを食らわせ焼きそばパンを取り返そうと試みたのだが、うまくかわされてしまった。
「なにくそ!」
と俺は萌美ちゃんの腕に激しく噛み付いた。
俺のとがった犬歯が萌美ちゃんの柔らかい肌にズブリと突き刺さり縦一直線に引き裂いた。
一瞬ジューシーな肉の味が口いっぱいに広がったがすぐに錆びついた鉄のような血の味に変わった。
噴水のように飛び散る鮮血で萌美ちゃんの長い髪の一部が少々紅く染まった。
萌美ちゃんが落とした焼きそばパンを俺は宙返りをしながらすかさず拾い、着地と同時にVサインをしてみせた。
「ちぇっ」と萌美ちゃんは面白くなさそうな顔で舌打ちをし、
その場を立ち去った。
血だらけの焼きそばパンはとてもおいしかったです。




