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第11話 「近所」

もう昼だというのに誰も飯を作ろうとしない。何てロクデナシな家族なんだろうか。親父は屁をこきながらテレビを見ている。たまに屁を壁に反射させては自分の鼻に屁を誘導させてにおっている。

母親は近所にある居酒屋に昨夜行ったきり帰ってこない。ババアは台所から一番遠い部屋で飯を待っている。

このような状況を目のあたりにすると、自分はろくな家庭に生まれてこなかったとつくづく思う。


しかし腹が減った。

こうなればこんなアホどもはほっておいて一人で昼飯を調達してこよう。

そう思い立った俺は、まるでスペインの闘牛であるかのように窓ガラスを蹴破って家を飛び出した。

それを見ていた近所の人々は、はだしのゲン(アニメ版)のオープニングでゲンの裸足がアップになる時みたいのようだったと後に語っている。


とりあえず手作り弁当屋に行くことにしたスペインの闘牛みたいな俺は徒歩で行くかチャリで行くかを考えた。ここから弁当屋まで徒歩で行けば15分、チャリで行けば5分。往復だと徒歩で30分、チャリで10分。たかが弁当を買うごときに30分も費やしてられない。それに徒歩で帰ると弁当が冷めてしまう。冷めた手作り弁当は飯が固くなってひどくまずい。それに加え、チャリだと少し離れたレンタルビデオ屋に寄ることも可能になる。借りた映画なんかを見ながら弁当を食う絵を想像していたら、いつしかチャリで行くことしか考えられなくなっていた。


しかし、ひとつ問題がある。

家を飛び出した俺はまるでスペインの闘牛のようであったのに、チャリに乗っていたらみんなの笑い者にならないだろうか?

牛なら牛らしく徒歩で行くのが筋ではないのか?

ふと、自転車のサドルに目をやると吐き気がしてきた。

なんだか不安でたまらない。


そんな俺を小林さんが励ましてくれた。

小林さんはもう80歳を越えたおじいさんで、

俺の家の向かいに住んでいる。


「生きろ」


小林さんの心強い後押しのおかげで俺は決断することができた。

俺は自転車で行く。


自転車を持っていない俺は、自転車置き場から唯一カギのかかっていないこのブルーのバイスクールをチョイスした。

青い空の下で青い自転車に乗るなんて何だか照れくさいが、青春ってこういうものなんだな。


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