第二章 第十六話:神の家の夜
運営よりR18認定を受けたので修正しました。
これで大丈夫なはず。
夜。
テオラル神父は自分の地下室で日課に勤しんでいた。
買い集めた奴隷の子供達。
研究素材用に買い集めて洗脳を施した子供達の中から、気に入った幼女を縛り付けて拷問するのがテオラルの楽しみだった。
ギシッ、ギシッとベッドが不規則に音を立てる。
猿ぐつわを噛まされて鞭で叩かれた幼女が、痛みにうめき声のような悲鳴を上げた。
その声でテオラルは更に興奮を高めてさらに鞭を振る。
連絡用の伝声管は閉じてある。
今夜も邪魔が入ることなく存分にこの時間を楽しめるだろう。
テオラルはそう思っていた。
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雲の隙間から覗く月明りの下、トールは松明を片手に教会の外を見回っていた。
本来であれば今日はトールの番ではない。
が、見張りを2人から4人に増やすことになったのでトールにも仕事が回ってきた。
とは言っても何かが変わるわけでもない。
いつも通りのルートを定期的に見て回るだけだ。
(異常・・・あるわけないか)
ドシュ!
そう感じたとき、唐突にトールの視界が空に舞った。
(????・・・!!!!)
首に激痛!
視界が縦に一回転する。
松明に照らされた人影が地面に2つ見えた。
松明を持った首なしの男と大剣を持った鎧の男。
自分が首をはねられたことを理解した直後、トールの意識は闇に落ちた。
ドサッ
「・・・なんだ?」
修道士の首が落ちた音に他の見張りが気付いて声を上げる。
トムはその声で他の見張りの現在位置を把握した。
トールの頭部が確認しにくいように松明の火の位置を動かしておく。
そして、近づいてくるであろう見張りの後ろを取れる位置まで即座に移動を開始した。
ザッザッザッ
残りの3人がトールが持っていた松明の明かりを頼りに集まってくる。
「トールが倒れてるぞ!」
「おいっ!大丈夫か?!」
まだトールが死んだことには気が付いていない。
3人の内2人がトールの様子を確認しに近づいていく。
残りの1人は周囲を警戒し始めた。
トムは闇に身を潜めつつ、この3人の練度不足を即座に見抜いた。
異常があった場合は即座に襲撃を想定するのが鉄則だ。
ザッ
トムは体勢を低くし、月明りの隙間を縫って警戒している1人に一気に詰め寄る。
相手は松明の光に頼っていることでトムに気づかない。
静かに腰の短剣を抜く。
カシュ
「・・・?」
すれ違いざまに首の動脈を切り裂く。
ゴポッ、と音を立てて血が噴き出す。
声をだそうにも首から空気が漏れるだけだった。
男は数秒後に訪れるであろう死の瞬間を待つだけとなったことを理解して絶望した。
トムは足を止めることなく残りの2人を仕留めにいく。
「首がない!」
「おい、死んでるぞっ!」
2人の背後に死が迫る。
トムは短剣を手放して肩の大剣を握る。
ザッ!
首なし死体を覗き込む2人の間に足を踏み込み大剣を横に繰り出す。
「え?」
ドドシュ!
「・・・?」
一振りで2人の上半身だけが宙を舞った。
トールと違い、2人は状況を認識できないまま死を受け取った。
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時間になっても見張りが誰も戻って来ない。
修道士のボルドーは異変の可能性を考えていた。
昼間に来た男が戻ってくるかもしれないから警戒しろと連絡が回っていたためだ。
少し見ただけだが、かなりやれそう印象を受けた。
あの男が戻って来たとすると・・・。
(今夜は久々に楽しめそうだ)
ボルドーは鎧を身に着け、剣と大盾を持って見張り達を探しに外へ出た。
「・・・」
すぐに異変に気が付いた。
見張り達の気配がない。
見張りをしている4人の実力はよく知っている。
この周辺にいるのに自分が気配を感じ取れないということなどありえない。
ますます高まる襲撃の可能性に、ボルドーは歓喜した。
警戒して教会の周辺を捜索する。
松明の明かりは見当たらない。
(消されたか・・・?)
だとしたら闇夜に紛れて殺る気だろう。
ボルドーは自分の背後にも警戒しつつ移動していく。
(・・・なんだ?)
月明りに照らされて何かが地面に転がっている。
暗くて何かまではわからない。
(罠か?)
その可能性も頭に入れて恐る恐る確認しに近づいていく。
ザッ
ザッ
ゆっくりと一歩近づいていく。
(これは・・・)
ボルドーが見つけたのは首なしの死体だった。
見張りの内の誰かであるのは明らかだった。
即座に首から下げた警戒笛をくわえる。
ピィイイイイイイイイ!
襲撃を知らせるための笛、ボルドーは全力でそれを鳴らした。
(・・・!)
その時、背後から迫る気配に気が付いた。
もちろん想定済みだ。
笛を吹くために動作が制約を受けるこの瞬間。
ボルドー自身が襲撃者であったとしてもこのタイミングで襲うだろう。
不意を突けないのであれば自分に有利な状況で襲う、当たり前の話だ。
ボルドーはすぐさま背後を向いて盾を構える。
並みの盾ではない。ボルドーはこの縦の堅牢さに絶対の信頼を置いていた。
そう、『判断を誤った』
相手の突進を受け止める準備をしてから相手の様子を伺う。
大剣の刃を横にしてまっすぐ突き出した相手が突っ込んでくる。
(弾き飛ばしてやる!)
大剣が盾に当たる瞬間、ボルドーは全身に力を込めた。
集中力が最高潮に高まる。
そして見た。
盾の裏側から大剣の切っ先が生えてくるのを。
メキッ
ドッ!
シュラン
「グッ!」
大剣が盾ごとボルドーの体を貫く。
(下半身に力が入らない!)
自分の体が腹部で切断されたことを理解する。
そして見た。
視界の目の前に別の剣の刃が迫ってくるのを。
下半身が使えず、踏ん張りの効かなくなったボルドーに抗う術は無かった。
カシュ!
眼球から上の頭部を切り飛ばされ、ボルドーの人生はあっけなく終わった。




