第一章05 「ようこそ! ギルド〈ナギル支店〉へ!」
迷走マインド。
Side快
来る途中にいろいろはしゃぎ過ぎたが、無事に俺たちはギルドへとたどり着いた。
外見を見る限り、雰囲気は日本でいう所の旅館みたいなかんじだ。木造三階建てで、随分と長い間使われていたのか味がある。良い意味で汚れている。
「ここがギルドか……」
「そのようですね。私初めて来ました」
「そうなの?」
「はい、と言いますかこの街に来るのも初めてなんです」
てっきり前に来たことがあるのかと思っていた。セバスさんは慣れていた様子だから、連れられてきたっていうのが正しいのかな。
……あんまり込み入った話を聞くのは失礼だと思うから、あえて何も聞いてこなかったけど、これは何かありそうな予感。まぁ、ここまで知り合ってしまったのも何かの縁だろうから、困ったことがあったらなるべく助けていくことにしよう。
「さっそく行きましょう!!」
「あ、ちょっと」
ハクが俺の手を引っ張てギルドの中へと進んでいく。あれ、さっきこの逆をやった記憶がある……。
ギルドの中に入ってまず最初に目につくのは受付だ。よくよく見ると受付の横に階段があり、その隣には飲食スペースだと思うが、数人のグループがテーブルを囲み、酒を飲んで盛り上がっている。ギルドは仕事外旋のほかに居酒屋としても運営されているようだ。
「まずは登録でしたよね?」
「あ、あぁ」
「それでしたらあっちみたいですよ!」
「だからちょっと待ってって」
快の手を引いてハクがどんどんギルドの中へと突き進んでいく。……当然男衆にはいい顔で迎え入れてくれるわけもなく、少し居心地が悪いと感じる。
「いらっしゃいませ。ようこそ、ギルド〈ナギル支店〉へ」
受付の女性が俺たちに声をかける。……金髪の美人でモデル体型とだけ言っておく。
「えぇと……こっちの受付は登録でいいんですよね」
「はい、ギルドへのご登録ですか?」
「はい、お願いします」
快がギルドの受付で登録をしている間ハクはちゃっかりテーブルに座り何か食べていた。……あの娘の胃袋どうなっているんだろうか。ブラックホールでもついているんじゃないかと思えてきた。
そんなことよりギルドへの登録だ。登録には書類に必要事項を記入しなければいけなく、その内容は、名前・年齢・出身地・使用武器・使用できる魔法等があった。文字は何となく読み書きできた。……これぞ神様マジック。
「これで大丈夫ですか?」
「えぇと……はい、大丈夫です。あとはこの小皿に血を一滴お願いします」
「あ、はい」
どうやら血が必要らしい。本人確認用の”ギルドカード”を作成するために必要とのこと……異世界スゴイ。俺は一緒に出されたナイフで指を傷つけて小皿に血を一滴垂らす。受付嬢はそれをもって裏へと行ってしまう。数分後に戻って来た受付嬢の手には赤色のカードが握られていた。
「こちらがギルドカードになります。またこのギルドカードを紛失された場合は金貨5枚で再発行可能ですが、あまりにも紛失が多い場合は除名処分となることがありますから気を付けてください」
「わかりました」
肝に銘じておこう。お金は一番大事って程じゃないけど、あって困るようなことはあまりないからな。
「それでは次にギルドの施設、および義務についてお話させていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
「はい、よろしくお願いします」
それではと、受付嬢がギルドについて説明してくれた。大まかに要約すると
1、ギルドに所属する冒険者にはランクがつけられ、基本はそのランクの依頼以下のもののみ受注可能だが、自分のランク以上の依頼を受ける場合はギルドマスターの許可が有れば可能。
2、ギルドに所属する冒険者には魔物の大反乱、および戦争時に緊急招集をかける場合がある。またその招集に応じなかった場合相応のペナルティーを負うことになる。
3、ギルドに所属する冒険者にはギルドが運営している施設【宿屋・道具屋・酒屋・他】を利用する際に1割引きがつく
などがあった。ギルドのランクについては。
赤:新米冒険者
青:一人前冒険者
黄:中堅冒険者
緑:ベテラン冒険者
紫:一流冒険者
白:英雄
黒:神話の勇者
のようになっている。ちなみに新米~とかは実際にそう呼ばれているらしい。黒になると神様のように崇める人すら出てくるとのこと。実際のところ、現在は白の冒険者は王都にあるグランドギルドのギルドマスターのみで、黒の冒険者がでてきたことはここ数百年ほどはない。それに黒の冒険者は歴史上世界を救った勇者や、それに準ずるほどの功績を遺したもののみがなれるとのことなので、数えるほどしかいない。
「以上でギルドの説明を終わらせていただきますが、何か質問などはありますか?」
「いえ、丁寧な説明でしたので、大丈夫です」
「あ、ありがとうございます……えへへ」
あ、ちょっと受付嬢さん照れた。……美人の可愛らしい笑顔はいいねぇ。
「えぇと、ここに来るまでに魔物をいくつか狩ってきたのですが、買い取りとかをしてもらえますかね?」
「え? あ、はい。わかました。ではここで査定を行いますので魔石を見せてもらえますか?」
「毛皮とかもあるんですけど……」
「魔物の素材もご一緒ですね。それでは倉庫で査定を行いますのでついてきてもらってもよろしいでしょうか」
「わかりました」
そういうと、受付嬢さんはいったん外へと出て、隣にある脇道を通って、場所的にはギルドの裏て側にあった大きな倉庫へと案内された。
「それではこちらに素材と魔石をお願いします」
「わかりました」
俺は指定された場所でインベントリからあの白軍団の素材とか魔石とかを取り出した。
インベントリによると、ホワイトウルフ80匹・ホワイトバジリスク20匹・ホワイトベアー60匹ぐらいらしい。それぞれ魔石・爪・牙、バジリスクに至っては肝も素材になるらしい。……マジ?
ちなみにこの世界には”アイテムボックス”と言われる魔法があるそうで、インベントリをハクにうっかり見られた時には、「うぁ~、アイテムボックスの魔法が使えるのですね!」ということになった。なのでインベントリを見られても問題はない。
「……え?」
しかし、どうやらその他のことでびっくりされたようだ。
「これで全部です」
「えぇと、一応確認しておきたいのですが、この魔物たちはカイさん以外にも討伐に加わったのですか?」
「いえ、俺一人ですよ?」
「……嘘!」
「嘘じゃないですよ」
「……これって白魔の森の魔物ですよね? もしかしてあそこを通って来たんですか?」
「えぇ、丁度この街に来るときの通り道だったので」
「……通り道だからって、この数は頭おかしいよ」
美女に頭おかしい人宣言を受けた! この魔物そこまで強くはなかったんだけどな。……ショタ神の改造のおかげで、俺は常人の域を出てしまったようだ。
「どっからか奪ってきたとかそういうのを疑ってます?」
「まぁ、そういう風に普通は思いますよ」
「どうしたものか……」
いかんせんショタ神がくれたお金があるとはいえ、この世界で稼ぎ口を作らなければいけないのだが……このまま疑われ続けたらいずれギルド側から除名処分とかきそうだな。
登録直後にこうなるとは思わなかった。ノルダム一危険とかショタ神のいたずらだと思って、いざ戦ってみたら弱かったから調子づいて”悪・即・斬”みたいに狩り続けた結果がこれか。
もっと後先考えて行動すればよかったな。
「――そいつの言っていることは嘘じゃねぇぜ」
俺が頭を悩ませているときに、倉庫の入り口のほうから野太い声がした。スキンヘッドで頬の部分に傷があり、筋肉粒々でいかにも強面な男だ。
「ギルドマスター!」
「……ギルドマスター?」
どうやらこの筋肉達摩がこのナギルの街のギルドマスターのようだ。
「さっきも言ったが、そいつの言っていることは嘘じゃねぇ。素材の査定は俺が許可を出すという形で手続きしてくれ」
「え? いいんですか?」
「あぁ、俺が良いって言ってんだ。いいんだよ」
「……はぁ、分かりました。そうですね、これだけの数ですから……明日の夕刻までには終わらせておきますので、受け取りに来てください」
「あ、はい。わかりました」
「それでは、私はこれで」
少し疲れたような雰囲気になった受付嬢が倉庫を後にする。たぶん応援を呼びに行ったのだろう。
「さて、邪魔者もいなくなったし、軽く話し合いでもしようや」
ギルドマスターがこちらを見てニヤリと笑う。どうやらまだ俺はギルドから出られそうにないみたいだ。
「ついてこい」
そういうとギルドマスターは倉庫を出ていく。
「このまま帰るっていう選択肢は……ないよな。しょうがない、ついていきますか」
この後はどうなるのだろうという不安と、このまま帰っても面倒なことは変わりないというあきらめが混じった感情を抱きながら、俺は筋肉達摩のギルドマスターの後ろをとぼとぼと付いていくのだった。
要約
ギルドへと到着した主人公たち。無事ギルドへと登録できたのだが、そこで素材を売るところでハプニングが発生。受付嬢から素材の一人占めを疑われるのだが……そこに大柄なスキンヘッドの男性が! どうやら彼はギルドマスターのようで……。またまたハプニングの予感。