第一章04 「無事到着」
タイトルに捻りが欲しい。
Side快
ハク達を助けてから早くも四日が経とうとしていた。快は護衛として襲い掛かってくる魔物を倒し、馬車に戻ってはハク達との会話に花を咲かせるという日々を過ごしていた。食料については魔物達を食べれた事足りるし、調理についてはハクが率先して作ってくれた。女の子の美味しい手料理を食べられることがこんなにも幸福なのかと実感しながら、とうとう町までもうすぐという所まで彼らは来ていた。
「もうそろそろ町の外壁が見えてくるはずです」
セバスさんがそういう。ふと思い返してみると異世界に来てサバイバル生活を余儀なくされて、そして女の子を救ったりと、随分と濃い一週間だったがここに来てやっと一息つけそうだ。
馬車が進むにつれて獣道のような雰囲気のあった道だったが、少し舗装されている道に変わっていく。多分街道だろう。その道を進んでいくと、徐々にではあるが街の外壁がうっすらとだが見えてきた。
街をぐるっと一周するように建てられていて、石が隙間なく積まれて一目で頑丈だとわかる外壁が建てられている。高さは6~7メートルくらいだろうか、見えてはいないが厚さも相当なものだろう。ハク達の解説によると、ここら辺は俺が最初に飛ばされた森が近いこともあって、他の街よりも頑丈に作っているとのことだ。
「……通行証、もしくは身分証を見せてくれ」
いよいよ街に入ろうと、門の目の前まで来た時に、門番の兵士にそう声をかけられる。どうやら証明証みたいなものが必要みたいだ。……ちなみにショタ神がくれたアイテムの中にはそのようなものは入ってはいない。
「悪い、俺はそういう類のものをもっていない」
正直に状況を説明する。変に動揺などを見せれば不審がられるだろう。それを考慮してか……はたまた開き直りか、どっちにしても素直に返答する彼であった。
「……冒険者じゃないのか?」
「あぁ、村からでて来たばかりでな、これから冒険者になろうかと思ってこの街に来たんだ」
「そうか、そういうことなら了解した。銅貨を5枚払ってくれれば仮通行証を発行しよう。期限は一週間だからくれぐれもギルドへの登録を忘れるなよ? それを忘れたら不法滞在人として捕まえることになる」
「わかった。ありがとう」
……どうやら大丈夫みたいだ。
それにしてもと彼は思う。魔物の脅威がほかの街より多いこのナギルだ。案外簡単に街に入れるもんだなと不思議がるのもおかしくはないだろう。
簡単に街に入れる真相はいたってシンプルだ。
魔物の脅威を排除するために人の通行はあまり制限していないと……一見犯罪が跋扈するような事案だが、それこそこの町に来るのは上位の冒険者で、そのようなものたちが集まる街で犯罪を起こそうとするならば、たちまち屈強なお兄さんたちにドナドナされてしまうのが落ちだ。
それに屈強なお兄さんたちを取り締まるので、騎士たちもそれ以上に強者揃いだ。
この街はこの国のどの街より治安がいいのである。
それから無事に仮通行証を発行してもらって、彼はようやく異世界初の街”ナギルの街”へとたどりついた。
☆
「カイ様は冒険者ではなかったのですか?」
街に入り馬車を停留場のようなところに止め、馬車の外に出た時にハクにそう声をかけられた。
「うん? まぁね。さっきも言ったけど俺は冒険者になりにこの街に来たんだ」
「……てっきり冒険者の方だと思っていました」
ザ・驚いています。みたいにハクがリアクションをする。目を見開いて狐耳がピンと立って……よく見ると尻尾もピンと立っている。こう、美少女っていうのは何気ない仕草も可愛らしく映るから……いいよな。
よこしまな考えは一切顔に出さない所謂変態紳士な快なのであった。
「なんでそう思ったの?」
「いえ、そこまでお強いのですから、てっきり冒険者だと勝手に……」
「世界は広いんだ。冒険者じゃなくても強いやつはいっぱいいると思うよ。それこそ、俺より強いやつなんかもいるだろうね」
「え!? カイ様よりお強い方がいらっしゃるのですか?」
「そりゃあ、探せばいっぱいいるだろうね。まだ会ったことはないけどね」
「世界は広い……。そうですね、世界には私がまだ知らないことなんていっぱいありますよね」
少し危ないところだっただろう。実際彼の強さはショタ神のお陰もあって一般的な冒険者の強さの比ではないではない。
本人は『まあ、たぶんトップクラスの冒険者は俺より強いやなんていっぱいいるんだろうから、大丈夫だろう』と考えてはいるが……。
「ハク、ここまで連れてきてくれてありがとう。俺はそろそろギルドへ行こうと思う。ここでさようならだ」
「あっ……もう行かれるのですか?」
寂しがっているとリアクションをとるということは少しは俺に気があるのでは? と思う彼なのだが、日本男児の悲しい性かな……勘違いがあったらやだなと同時に思ってしまうのだ。
「あぁ、最初に言われたのも護衛としてこの街まで一緒に来ることだったしな。楽しかったよ、ありがとう」
「そう……ですね」
顔をうつ向かせ、いつもはピンッと立っている狐耳が悲しそうに垂れている。
誰もが心を打たれる場面である。
そこで馬車の点検が終わったのであろうセバスさんが話しかけてくる。
「カイ殿、もう行かれるのですかな?」
「えぇ、ギルドへ行って登録をした後に宿屋とかを探しに行きたいもので」
「そうですか……ハク様、ここはじいがやっておきますので、カイト殿と一緒へギルドへ行ってはいかがでしょうか?」
「……あぁ! それはいい考えです、じい!!」
「い、いいんですか?」
「えぇ、馬車のことは御者が一緒にいますからご心配なく。それにハク様はカイ殿と一緒にいたいご様子。それを引き裂く事、このじいにはできません」
「じ、じい!」
いや、個人的にはハクと一緒にいれることはうれしいのだが……。先程まで垂れていた狐耳は嬉しさが爆発してますといわんばかりにピンと立って、本人は顔を赤らめてセバスさんをにらんでいる。
……いいの?
「もう……。えぇと、カイ様……ご一緒してもよろしいでしょうか?」
この上目遣いはずるい。もし断られてしまったらどうしようと瞳が揺れるのもずるい。それと両手で服をぎゅっと握るのもずるい。
よって俺は。
「喜んで!」
満面の笑みでOKを出す快なのであった。
☆
ハクを連れて、今はセバスさんから教えてもらったギルドへと続く道を歩いている快。人通りも多く、どちらかというと活気にあふれているといえる方だろう。現代の日本と比べれば劣っているだろうが、それでも異国情緒というものだろうか少なくとも快は心躍っているようだ。
……どうも落ち着かないそう思ってしまう快。実は女性と一緒に歩くというのは初めてである。日本にいた頃は女性と付き合ったこともないし、一緒に遊びに行くほどの仲の女友達もいなかった。……つまり、快は今どうすればいいのかわからない状態なのだ。
「カ、カイ様?」
「……どうした?」
危ない。もう少しのところで素っ頓狂な声を上げるところだった。
「ご迷惑……だったでしょうか?」
「いやいや、そんなことないよ! こっちこそごめんね付き合ってもらって」
なんだ、この付き合い始めのカップルみたいな会話は。それにハクが居心地悪そうにしているじゃないか。ここは男の俺がしっかりしなければ!
「あ! あっちに屋台があるよ、行ってみよう」
「え? あ、ちょっと待ってください」
ちょっと変だったかもしれないけど、俺はハクの手を引いて、屋台が並んでいるところへ走る。それから俺たちは屋台にある食べ物という食べ物を食い尽くした。
「こっちはクレープか? こっちはタコス……いろいろごちゃまぜって感じだな」
「どうかしましたか?」
「あぁ、いや。ここにある食べ物が故郷で見たことあるやつに似ていてね」
「そうなんですか! 私は初めて見ました!」
と言いながらハクはクレープとタコスを両手に持って変わり替わり食べている……意外と大食いなんですねハクさん。
「おいしい?」
食べ合わせなんてあったもんじゃない組み合わせだが、ハクはそれを笑顔で美味しそうに頬張っている。
「はいっ! とってもおいしいです」
そのあとも焼き鳥もどきや、たい焼きもどきなどが出てきたりと、異世界であるのに日本にいるかのような食べ物たちに違和感を覚えながら、黙々と食べているハクの笑顔を見ていた快。
……そして空がうっすらと茜色になったころに彼らは本来の目的を思い出した。
「ギルドに行くの忘れてた!」
「……あ、そういえばそうでした!」
どうやらハクも忘れていたようだ。
「ま、まぁ、セバスさんに聞いたけど、ギルドは夜中でも空いているらしいし大丈夫だよ」
「そ、そうですよね。大丈夫ですよね」
初めての街、初めてのデート? で二人とも浮かれていたみたいだ。時が経つのを忘れて屋台を回っていた。彼らにとってはとても良い思い出になったであろうことは間違いない。
「それじゃあ、気を取り直してギルドへ行こうか」
「はい! 行きましょう!」
オー! っと右手を突き出し気合いを入れるハクと快。久々に楽しい時間を過ごせたと思う。日本にいた時にこんな楽しい時間はあったであろうかとふと物思いに耽る。
……そんな些細な疑問を頭の片隅に追いやって、彼らたちはギルドへと向かったのだ。
要約
ナギルの街の中に無事入れた主人公とハクはセバスさんの計らいで、二人一緒にギルドへと向かうことに、申し訳そうにしているハクを気遣い屋台を周ろうと手を引き進む主人公。そしてギルドのことなどすっかり忘れて二人デートを楽しんだ。
毎回要約を後書きに乗せてみようかと思います。
解説などは本編中になるべくしてみるつもりですが、どうしてもというときはここに書くかもしれません。
ご意見ご感想お待ちしております。