第一章16 「ハクとグィネラの修羅場」
Sideカイ
無事戻ってきたことをハクに報告するために、ハク達が宿泊している宿へと向かったのだが……。
「あなた! 誰なんですか!」
「む? お主こそ誰だ!」
今ハクとグィネラがにらみ合っている。
ハクは俺が何も言わずにグィネラを連れてきたことに怒っており、グィネラは俺がハクに合わせたいと連れてこられたことに怒り……。
もしかして修羅場ってやつですか!?
「お、お二人ともどうかそこらへんで……カイ殿がお困りの様子ですし」
「「セバスは(お主は)黙ってください(おれ)!!」」
これは逃げるわけにもいかないかな……。
そこから暫くキャットファイトが続き、二人とも息が上がっているところに……ドラゴン相手にキャットファイト出来るハクは意外に強かったりするのか?
「何をそこまで怒るんだ二人は?」
「それは……」
「のう?」
直前まで争っていたとは思えぬほど、息の合っている二人。
少し仲が良くなったのだろうか。
「2人とも落ち着いて俺に話してくれないか?」
「えぇと……こちらはどなたですか?」
「我はグィネラ。レッドドラゴンじゃ」
小さな胸を張って答えるグィネラ。
そこ威張るようなとこじゃないよ。
「グィネラさんですか……。というかドラゴン?」
ここでやっとグィネラの詳しい説明と依頼の内容を話すことになった。
☆
「そういうことになっていたとは……」
「随分と厄介なことに巻き込まれましたなカイ殿」
2人とも神妙な顔をして話を聞いていた。
実際問題今回の事件は今後もこの街、もしくはここから近い村落が被害にあう可能性があるため、早めに事態を収拾するのが理想的なのだが。領主がどのように対処するかが今後を左右するだろう。
俺は何もする気はない。
というかどうすればいいのかもわからないからな。
多少の情報があれば先手を打つことや、どのように今後行動すればいいかの予測は出来るのだが……。
「とりあえずは返事待ちかな」
「国王からのじゃな」
そう話を締めくくり、目先のことを解決しよう。
「グィネラをここに連れてきたはいいが……、俺が借りてる宿に連れて行くのもなぁ」
「良いではないか。配下の私が主殿のところで寝食を共にするのは当然であろう」
俺としては幼女と一つ屋根の下というのは周りの目線が痛いというかなんというか……まぁ美幼女と言って差し支えないグィネラと一緒に暮らすのは素直にうれしいのだが。
「そうですね、婚約もしていない男女が一緒に暮らすというのはいただけないですね」
「うむ……」
そこでしばらく考え込むセバスさん。
何かいい案でも出ますかね?
「こういうのはどうでしょう? いっそのことハク様もカイ殿と一緒に暮らすというのは?」
「え!?」
いっそのことってどういうことですか!?
さっき婚約もしていない男女が暮らすのは云々言ってませんでしたかハクが!?
「それは良い考えですセバス!!」
ハクがそれ肯定するの?
いや、うれしいはうれしいんですがね!
「ぬぅ……。ここは一時休戦ということになるかの?」
「そういうことになりそうですね」
そう言って二人は俺の泊まっている宿に来ることを承諾したのだった。
俺の意思って関係なし?